mieki256's diary



2006/12/05(火) [n年前の日記]

#10 [zatta] _「すさまじく安っぽい絵ですね。」

コメント欄にあったこの一文を見て、何かが引っ掛かった。自分などは「すっきりしていてイイ感じの絵柄だな」と思ったのだけど。人によっては「安っぽい」という印象を持つ絵柄でもあるらしい。それも「すさまじく」感じてしまったらしい。

「安っぽい」という印象はどこから導かれるのだろうか。それが判れば、その要素を排除することで、人目を引く・好印象を持たれる・売れる絵が描けるかもしれぬ。

塗りに起因するのだろうか。 :

セルアニメのような絵柄だと安っぽく感じるのだろうか。

例えば、スタジオジブリ最新作の「ゲド戦記」。監督の意向によって、昔の宮崎アニメの画面を再現 ―― 影はせいぜい1段にする等を意識して画面を作ったらしいが。どうも観客の反応はよくなかったらしい。つまり一般人は、目が肥えてしまって、数段階の影がついてないアニメ絵には拒否反応を示す、ということだろうか。

さりとて、影の段階をどんどん増やしてグラデーションにまでなってしまうと、今度は「エロゲ塗り」と揶揄して拒否する人も出てくるような気がする。…グラデーションになると、色情報を認知する段階で飽和して、単一の塗りと同様に見えてくるのだろうか。

塗りの面積が関係していたりはしないか。狭い面積で複数のグラデーション塗りがあるのと、広い面積で数えるほどのグラデーション塗りがあるのでは、印象が変わってくるのだろうか。

グラデーションであっても、例えば永田萌の画に見られるようなものだと、評価が変わってきそうな予感もある。計算による均一な変化のグラデーションではなく、紙に対する絵具のにじみ、ノイズ、不均一性を見てとれるグラデーションには、違う感想を持つ人が多い。…そんな予感も。

…件のコメントを書いた人は、例えば、浮世絵に対してはどういう感想を持つのだろう。浮世絵も、広い面積を単一色で塗ってあるものが多いと思うが、同様に「安っぽい」と感じるのだろうか。感じるのであれば、アニメ絵どうこうではなく、浮世絵の特徴を挙げていく・意識的に避けていくことで、「安っぽい」とは思われなくなるのかもしれない。

線に起因するのだろうか。 :

件の表紙絵のサムネイル画像は、画像サイズとしてはかなり小さい。よって、線の強弱までは判断できない。つまり、線の強弱が「安っぽさ」という感想を導いてるわけではないと判断できる。

線の本数が関係してるのだろうか。いや、件の画像サイズでは、本数についてもやはり判断できないだろう。

つまり、「安っぽい」という感想は、1本1本の「線」の属性からきているわけではない。

デフォルメデザインによるのだろうか。 :

例えばコレが、人物写真をそのままトレスしたようなデザインだったらどうか。そういうデザインなら「高級」という感想が出るのだろうか。

もし、劇画タッチだったらどうだろう。あるいは、昔風の少女漫画タッチだったらどうだろう。サザエさん的絵柄だったら…。いや、サザエさん的と言えばそんな感じもあるか。>件の絵柄。ちびまる子ちゃん的絵柄だったら…。その場合は「安っぽい」というより「ヘタクソ」という感想が上がってくるのかもしれないか。

江川達也、江口寿史などが描く女性の絵が表紙になっていたら、感想も変わってくるのだろうか。…わたせせいぞうの絵だったらどうか。いや、件の絵はそこらへんに近い感じもするんだけど。

時代性が関係してるのだろうか。 :

昔流行った絵柄の片鱗がどこかに見て取れるものは「安っぽい」という印象を持ってしまいがち、だったりはしないか。劇画全盛の頃は、手塚治虫の絵柄は古臭いものとして拒否されがちだった、という話もどこかで聞いたけど。それに近いものがあったりはしないか。

でも、その場合、「安っぽい」という感想はおかしいよな。「古臭い」なら判るが。「古臭い」≒「安い」という固定観念が当人の中で無意識にできてしまっているから、そういう言葉が出てくる、ということなんだろうか。つまりは語彙の少なさがそこにあると。

手間隙がかかっているように見えるかどうかが関係してるのだろうか。 :

「安っぽい」=「手抜きをしてる」という前提が存在してる可能性もありそうな。例えば、動物を表紙にした例の本。パッと見ただけで「これは俺には描けねえ」と思ってしまう。…そういう絵柄は「高級」であるように思うのだろうか。

となると、カケアミトーンや点描トーンを使ったペン画などに対しても、「高級」という印象を持ってもらえるのだろうか。印刷されたソレを見て、「これは手で描いてる」「これはトーン」なんて判別できる人は、漫画を描いてる人ぐらいだろう。であれば、トーンを使っていても「これは描けない」=「高級」と思うかもしれない。…しかしそれはそれで、グラデーションに対するソレと同じ感想をもたれそうな予感もあるけれど。

そもそも本当に「安っぽい」という感想なのか。 :

「好みじゃない」と書いただけではなんだか自分が馬鹿っぽいと思われそうだから、もうちょっとそれっぽいことを書いてるように振舞いたくて、「安っぽい」という言葉を脈絡なく持ち出しただけに過ぎないのではないかという疑念も。…となると。各人の好みの話であれば、分析・想像してみても実はナサゲ。

つーか、本の表紙ってのは「なんだコレ?」と思ってもらえないといかんというのもありそうだから、そういう意味ではネガティブな印象を持ってもらえるだけでも表紙絵としては正解なのかもしれんか。そもそも動物を表紙にしたシリーズだって、「なんだコレ?」を重要視して生まれたところがありそうな気もするし。

と書いたところで気がついた。

絵のネタ自体が安っぽい、ということなのだろうか。 :

人間がそこに描かれているのではあまりにもフツーすぎる。目を引かない。「なんだコレ?」が少ない。工夫が足りない。と、そういうことなのか。

まあ、逆に、当たり障りの無いところを狙っていったとも考えられるけど。マニアの人たちに売るわけではない。初心者の人たちに売りたい。だから極力、拒否反応が出にくい無難なネタを選んだ、という考えが販売元にありそうな。でも、Pythonの本を買う時点で、既にフツーの人・初心者じゃないような気がしないでもない。販売側の想定する層と、実際に買っていく層に、なんだか乖離がありそうな。

実のところ、こういう本をどういう人が手に取るのか、いや、どういうところに置かれるのかが、今一つ判らないところも。陳列されてる場所によって、どういう絵柄・ネタのほうが目を引くか、というのは違ってくるだろうし。そこを想像・予想できなければ、適切な表紙絵の方向性は見出せない。

表紙デザインってのは難しいなぁ。

「〜は難しいなぁ」と書くのが癖になってる。>自分。

以上です。

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