mieki256's diary



2005/04/15(金) [n年前の日記]

#5 [zatta] フルネームに「氏」をつける・つけない

どこかで、「フルネームに『氏』はつけないのが正しい」という話を聞いた記憶があるのだけど、これといったソースに辿りつかず。

む。 _これかしら。
私が今回、提案したいのは、「小泉純一郎氏」のようなフルネームに氏をつける表現はなるべく減らすようにしたらどうだろうか、ということです。私はこの表現についてどうも違和感をぬぐい切れません。

実はこの提案、私が大ファンであるエッセイストの高島俊男さんが「お言葉ですが」という本の中でしていることです。高島さんは戦後三好達治がした提案の尻馬にのっているのですが、私はその高島さんの提案のさらに尻馬に乗ろうというわけです。高島氏いわく、歴史上の人物で考えてみればすぐわかる。徳川氏とは言いますが、徳川家康氏とは言いません。北条氏とは言いますが、北条時宗氏とは言いません。氏をフルネームに付けるのは明治以降に現れた新しい表現です。明治以降使われているのだからすでに定着したという主張も可能ですが、森鴎外は決してこの表現を使わなかった。私(高島)も使わない。「三好氏のように明確に異をとなえた人は多くないが、氏名の下の「氏」は誤用だからと、使わないようにしている人はたくさんあるだろうと思う」と高島氏は書いています。
 
高島氏の言うように、確かにフルネーム+氏の表現を使わない人は今でもいるようです。例えば坪内祐三さんが決して使わないのが、私は前から気になっていました。お会いした際に聞いてみたところ、「僕の日本語はかなり不正確だと思うんだけど、フルネームで氏をつけるとどうもおかしいと感じてね」と話しておられました。同感です。坪内さんの文章は例えば福田恆存のことを書くときは最初は福田恆存とフルネームで呼び捨て。二回目から「福田氏」と姓+氏の形になるケースが多いようです。

ただこの問題はここで終わりません。このフルネーム+氏の使用の背景には、「日本語には一般的に誰にでもつけられる敬称が存在しない」という問題が横たわっているからです。私自身、以前の書き込みで結構使っています。監督や社長といった肩書きがあればいいけれど、「さん」付けも呼び捨てもふさわしくない人が結構いるんですよね。そういう人については坪内さんはどうしているんだろう。

新聞記事でもよく使われていますね。例えば出光のような同族会社だと出光という姓を省略して昭氏、佐三氏などと書いてしまう。変だとは思いますが、そうとでも表現するほかはない、ということは十分に理解できます。だから私の提案も「濫用はしない」「2回目以降はなるべく姓だけに」ということにとどまります。

そういえばオウム真理教の上祐が出所したとき、マスコミは上祐幹部などという表現を使っていましたね。これは上祐氏という表現の「敬意」を嫌ったからでしょう。ただ「幹部」という言葉は人の名前のあとにはつかないと思うんだけどなあ。小谷野敦は、新聞の死亡記事が「氏」か「さん」か注意して見るのが趣味だとかどこかで書いてました。いろいろと面白いですね。
これを読む限りでは、正しいとか間違ってるとか、そういう話じゃなさそうではあるな…。

以上です。

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