mieki256's diary



2007/05/14(月) [n年前の日記]

#1 [zatta] 「月をなめるな」に出てきた問いの正解が未だにわからない

/.J を巡回してたら、何かの記事のコメント欄で _「月をなめるな」 のリンクを見かけて、懐かしい話題だなと。で、元記事を読み返してみたのだけど。悩んでしまった。本来は、どんな回答、いや、どんな過程が正解だったのだろうと。未だにわからない。

もやもやと考える。 :

各個人の科学的知識の有無を測定するテストであれば、話は簡単で。「月をなめるな」と発言した学生さんだけが合格。他の学生さんは不合格になる。

だが。これはそういうテストではない。個人ではなく集団に対して出されてる。集団に対して各個人が、どのような働きかけをしていくかが観察されるテストなんだろう。よって、ケンカごしになったり、キレてしまったりするのは論外。と、そこまでは判る。しかし、そこまで判ったとしても、どの方向に集団を誘導していけばいいのか…。そこが判らない。

その場で、各個人に求められてるのは、たぶんこういうことだろう…。
  • 正確な現状把握・問題点の把握ができるか。そして、それを、集団の共通認識とするまでの作業ができるか。
  • 集団から、対策についてのアイデアを引き出すことができるか。
  • それら対策案をまとめ、集団の方針を決定し、なおかつ、その対策案によって得られる効果を集団の共通認識にできるか。
「月をなめるな」と発言した学生さんは、正確な現状把握はできてる。が、それを集団の共通認識にする作業ができなかった。

しかし。集団で正確な現状把握ができるか否かが、本当に求められてるかどうかも怪しい。

例えばの話。クライアントがこちらの業務内容について知識がなく、無理難題を要求してきたとする。要求を受けた側が、現状を正確に把握してるからと言って、それで事態は解決しない。いかにして、クライアントに、波風立てず、こちらの集団が把握済みの現状を伝えることができるか。…話を聞いて「あ、そうなの?」と言ってくれるクライアントなら話は早い。お互い、いい仕事、実のある仕事ができるだろう。だが、中には、「恥をかかされた…!」「こんな会社とはもう取引せん!」となってしまうクライアントも居るだろうし。また、実は既に知識はあるのだが、それを隠して無理難題を言ってきてる場合もあったりする。

件のテストは、そういう場面の比喩であると考えることもできる。そうなってくると、そもそも正確に現状把握できるかどうかなど、このテストでは実は重要ではない可能性も。「月には空気もないし、地球の1/6の重力ですから…」などと言った瞬間、不合格になるかもしれぬ。「そういうどうでもいいところを気にするなんて、コイツ無能だな」みたいな。

また、このテストが、単に各個人が集団のなかで浮かないように行動できるかどうかを観察してる可能性もある。集団の現状把握・方針が仮に間違っていようと、それは重要ではない。周囲の発言に「そうですねえ」「なるほどなるほど」とテキトーに相槌を打って、いいムードを作れるかどうか。リーダー格の人間が間違った現状把握や方針を出していても、それに異を唱えない人物をその会社は求めてるのかもしれない。…間違った現状把握に基づく、間違った方針に、誰も異を唱えず、そちらにまっしぐらな集団なんて、会社を傾かせかねない危険な集団でしかないのだが。世の中にはそういう「イエスマン」ばかりを求めるところがあったりもしそう。

ということで、そもそも何を求められてるのかが、未だによくわからない。正しい知識に基づいて発言したら、不合格になりそうな感じがする。…当の学生さんにとっての最重要課題は「就職すること」であって、無知な人達に正しい知識を与えることでもないわけで…。どういう言動をすべきなんだろうな。

また面倒なのは、そもそも、その問題を出した人間が、単に月について無知なだけ、という可能性もあることで。いや、それとも知っていて、わざとこういう問題を作ったのだろうか。

そう考えると。一番最初に「パラシュートは〜」と発言した学生は、実は集団のレベルをテストしていたのではないか、という可能性も。集団が、その後に頓珍漢な発言を出してきて、それが主流になったら、「ああ、ここに居る連中はバカばかりだ。それに合わせた議論をすることにしよう」と。が、もし、「そもそも月に空気はないから空気抵抗を利用するパラシュートなんてものは」と言い出す人が居たら、「どうやら俺と同レベルのまともな人達ばかりらしい。じゃあ俺もまともな発言をしないと」みたいな。

しかし、2番目に発言した人物は、最初の発言を聞いて「あ、この集団はバカしか居ないのか。なら、それに合わせておくか」と判断してしまった可能性もありそうだなと。

誰もにこりともしなかったのは、「どう考えても、自分の発言はおかしいんだけど、誰も異を唱えない…。参ったな…」と困惑してた・探りあいをしてたが故、なのかもしれぬ。…いや、でも、もしそうであったなら、「月をなめるな」の発言に「だよね! さっきからおかしいと思ってたんだよ」と乗ってくる人が居てもいいんじゃないかとも。…やはり、その集団は、本当にバカしか居なかったんだろうか。いや、判ってて演じてる人も居そうな気もするし。いや、しかし、判ってる人が居たら、「ちょっとゴメン。君、このテストはそういうことじゃないんだよね」と諭したりもしそうだ。

働くってのは面倒だな。働く場に入れるかどうかですら、この面倒臭さ。テスト問題の内容そのものについて議論する前の段階でコレだもの。

消えると怖いので引用。 :

▼大学四年生の清水勇希さんからむちゃくちゃに面白いメールを頂戴した。これはここで紹介せずばなるまい。ハードSFファン必読。
清水さんが就職活動中の出来事である。某社の採用試験で“グループ・ディスカッション"をやらされ、その題材が“アレ"であったのだそうだ――

> 『その日の試験は“グループディスカッション"でした。
> 採用希望者が何人か集まって、与えられたテーマについて議論する。
> 審査官は黙ってその様子をチェックする、という試験です。
> 私が部屋に入ると、そこには一人の審査官と、7人の大学生がいました。
> 最初に全員の自己紹介。いわゆる“名門大学"の学生も何人か混じっていたのを覚えています。
> 自己紹介が終わると、審査官は一枚の紙を全員に配りました。そこに記されていたの は以下のリストです。
>
> ・酸素ボンベ(40kg×8)
> ・飲料水(30L×8)
> ・パラシュート
> ・4平方メートルの白い布
> ・ビスケット
> ・粉ミルク
> ・非常用信号弾
> ・宇宙食
> ・ライター
> ・45口径の拳銃
> ・方位磁石
> ・無線機(受信のみ)
> ・救急用医療セット
>
> なんだこりゃ、と私が顔をあげると、審査官は宣言しました。
> 「あなた方8人が乗っていた宇宙船が故障し、月面に不時着することになりました。
> 着陸の際の衝撃で宇宙船は大破。あなた方にお渡ししたのは、中から持ち出すことができた品物のリストです。
> 救助隊とのランデブー地点まで180km、あなた方はその距離を自らの足で進まなければなりません。
> 現在の状況下でリストの品物に優先順位をつけてください。質問は一切受け付けません」』

はいはいはいはい、アレでありますな。おれは就職試験ではなく、会社に入ってからの新人研修でやらされた。詳しくは知らないが、NASAが考案したとかしなかったとかいうやつだ。最初にひとりで考えさせられ、次にそれを持ち寄って数人のグループでディスカッションしてさらにグループ回答を出す。たいていの場合、個人回答よりはグループ回答のほうが想定されている正解に近づくので、ディスカッションは大切ですねと体験させることができる。まあ、おれが思うに、日本の場合は、ディスカッションそのものの訓練が学校生活に於いてろくろくなされていないため、このテストをやらせているほうの理想とやらされているほうの実態とは、『十二人の怒れる男』と『12人の浮かれる男』くらいちがう。
続きを聴こう――

> 『まさか就職活動中に月面で遭難することになろうとは。
> 予想外の展開に、私はわくわくする心を抑えられませんでした。
> まず、これらの品物は宇宙空間仕様になっているのかを考えねばなるまい。
> そうでなかったら、ライター、拳銃は使い物にならない。おそらく信号弾もだめだろう。
> そしてさらに重要な点として、装着している宇宙服は、外部から食料を供給することが可能なのかという問題がある。
> 月面で顔をむきだしにしたらどうなるかなんて考えたくもない。
>
> といったことを私が一人で考えていると、他のメンバーが手をあげて自分の主張を始めました。
> ……その内容は、驚くべきものでした。
> 「パラシュートはあったほうがいいでしょう。崖があったら降りられない」
> 「この白い布ですけど、ライターで燃やせば救助隊への目印になりますよね」
> 「酸素ボンベは重すぎて持ち運べない。海にもぐる必要はないだろうし、おいていきましょう」
> 「水も最小限でいいんじゃないですか? 足りなくなったら途中でくめばいい」
>
> 途中まではジョークに違いないと思いながら聞いていましたが、誰もにこりともしません。
> どうやら彼等は本気のようです。
> やがて私の番がまわってきたとき、すでに私は冷静さを失っていたのでしょう。
> 「月をなめるな」
> それが私の第一声でした。
> その後、えんえんと月面について語り、そのままタイムアップ。
> 当然のように不合格でしたとも。ええ』

[間歇日記] 2000年10月下旬 より

_月をなめるな - PukiWiki:魂の叫び :


以上です。

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