mieki256's diary



2018/08/05() [n年前の日記]

#1 [moho][anime] アニメにおける列車の車窓の風景

先日、「千銃士」というアニメを見ていたら、列車が走ってるシーンがあったのだけど。見た瞬間、「?」と思ってしまったカットがあって。

列車内の部屋のレイアウト+車窓から見える風景が、以下のような処理になっていて…。



進行方向に消失点があるのであろう、一点透視で車内を描いておきながら、しかし遠景の背景画を横にスライドさせてるだけって、ソレどうなの…。しかも、こういうカットが2〜3回出てきた記憶も。

これがもし、セルとフィルムでTVアニメを作っていた時代なら、そんなに複雑なことはできないからこういう処理も仕方ないのだろうけど。世界名作劇場あたりでこういう処理を見たような記憶もあるし…。

だけど、今はもう、どのスタジオもデジタル制作に移行済みで、撮影に相当する合成作業はAE(After Effects)を使ってるのが当たり前とも聞くわけで。そんな状況で、この処理はあんまりだ…。せめてレイアウトをもうちょっと工夫するとかさあ…。コンテで指示してあったのか、演出家が指示したのか分からんけど、不勉強にもほどがある…。でもまあ、スケジュールが無くて、こういうことをするしかなかったのかもしれんけど。

などと呆れてしまったのだけど、考えてみたらこの手のシーンで ―― 列車が走るシーンで車窓から見える風景をどう処理しているのかほとんど気にしたことがなかったなと。フツーはどうやって処理するんだろう。

横からの構図。 :

この手のソレは、横からの構図をメインで見せるのが一般的、のような気がする。Moho Pro 12 を使って試してみたり。



昔の2DのTVゲームの世界で「多重スクロール」と呼ばれてた、こういった背景の見せ方をすれば、右か左に進んでると伝わるよなと。

ちなみに、「千銃士」の該当回が放送された数日後に、「天狼 Sirius the Jaeger」というアニメを見ていたら、そちらでも列車のシーンがあって。「天狼」は、真面目な映像制作に定評のあるP.A. Works作品なだけあって、不自然さを感じるカットが一切無くて唸ったのだけど。どうやら車内をかすかにローリングさせることで、動いてる感が増すようだなと気付かされたり。



ただ、ローリングのさせ方が分からない…。自分がやってみたコレは、どうも不自然というか…。どうやら「ガタン、ガタン」という規則的な揺れ方だけでは何かが足りなくて。ランダムにノイズが入る動きと言うか…。録画データを消しちゃったから確認もできない…。

奥行きを感じる構図。 :

一点透視っぽい構図なら、やはり背景も奥行きを伴う動きになってないといかんのではないか。ていうか、「天狼」がそういう処理をしていたわけで。たぶん、こうかな…。



要は、以下のように、 _ビルボード を動かしてやればいいのだろう…。



ソースネクストが時々2,980円で売ってたりする Moho 12 pro ですらこういうことができるのだから、プロが使ってるAEなら、もっとソレらしい見せ方ができるんだろうなと…。AE触ったことないから分からんけど。

昔は背景動画だったなと。 :

作業をしているうちに思い出したけど。「魔女の宅急便」では ―― 「魔女宅」は車窓の風景ではなく列車の屋根の上からの風景だったけど ―― 背景動画で処理していたなと…。あの頃はセルとフィルムしか使えなかったから、背景を奥行きを伴う見た目で動かしたい=背景動画しかないでしょ、だったのだろうなと。

デジタル制作が当たり前になったことで、セルや _BOOK を、Z値に基づいて何枚でも動かせるようになったわけで…。 _マルチプレーン・カメラ では重ねる枚数にもカメラを動かせる距離にも制限があっただろうけど、当時と比べたら随分とやれることが増えたはずだよなと…。

なのに、「千銃士」のアレは無いよなあ…。まあ、時間が無かったんだろうけど…。

他にも気づいたこと。 :

「天狼」を見ていて気付いたけれど、構図を工夫していた気がするなと。

例えば、カメラ位置を低くして、椅子に座ってるキャラを下から捉えていたりして。たしかこんな感じ。



この構図だと、車窓には空しか入らない。なんだかコストパフォーマンス(?)が良さそうだなと…。

更に、時々鉄塔が窓の外を流れていくようにしていたあたりも上手いなと。「天狼」で走ってた列車はSLだからアレだけど、今時の列車ならまず電車だろうから、電気を送るための電線、を設置するための鉄塔、っぽいものが必ず一定間隔で視界に入るはずで。時々鉄塔が流れていくだけでも、進行方向が分かるし、結構な速度で列車が走ってることも伝わるよなと。しかも、常時画面に出しておかなければいけないわけでもないから、なんとなく精神的に楽なところもありそうな。

上記の構図はカメラが低い位置にあったけど、逆に、カメラ位置を高くして、キャラを上から捉えているカットもあった。まあ、以下のソレは、真横から見た構図に近いのだけど…。



この構図なら、車窓には地面しか入らない。地面だけなら、砂利が描かれたテクスチャでも置いて動かしとけば…。 *1

また、これは「天狼」じゃなくて、「プリンセス・プリンシパル」の列車回のキャプ画像を眺めていて気付いたことだけど。車内の窓が、斜めになって見えている構図のカットは、窓を白く光らせてそこだけ白飛びさせちゃう手もあるなと。それなら、背景の動かし方なんて考えなくて済む…。

考えてみたら、実写ドラマで、列車の客室シーンをスタジオ内のセットで撮影する時は、えてしてこの手を使うよなと…。車窓から見える風景を、一々再現してられないし。まずは電車が走ってるカットを映して状況説明してから、その後はずっと、車内から見える車外の風景は白飛び状態で通す。とか。

きっと他にも色々な小技があるのだろう…。
  • 新海作品は高い確率で電車が出てくる印象があるけど、どんな処理をしていただろう?
  • 「鋼鉄城のカバネリ」は列車が出ないと話にならないけど、どんな見せ方をしていたか?
  • 「千と千尋の神隠し」「風立ちぬ」の列車シーンは、どういう処理をしていたか?
これからは、そういうシーンが出てきたら、ちょっと意識して見てみようかな…と。

実験に使った画像。 :

一応置いておきます。CC0 / Public Domain ってことで。使い道なさそうだけど。

_train_room03_render03_edit4.png
_train_room04_render01_edit2.png
_train_room05_render01_edit3.png
_train_room05b_render01_edit2.png
_01sky.png
_02mountain.png
_03forest.png
_bg_moutain_h720.jpg
_grass1.png
_grass2.png
_grass3.png
_grass4.png
_grass5.png
_grass6.png
_grass7.png
_rocks_tex_c02.jpg

室内っぽい画像は Sweet Home 3D で作成。草っぽい画像は Krita で作成。どっちも無料で利用できるソフトです。

_Sweet Home 3D
_Krita | デジタルでのお絵描きと創造の自由を

*1: こういう、「地面しか見えない」感じの見せ方は、「千銃士」でもやってたのだけど。ただ、「千銃士」のソレは、キャラのアップの顔と、流れていく地面だけで構成して、窓枠が画面内に描かれてなかったせいか、一見すると奇妙な画になっていて。しかも、前後のカットで背景画の動く方向が逆になってて、列車が進んでる方向がカットによってあべこべ、という奇妙さもあったような…。いや、列車の進む方向については、自分の見間違いだろうか…。

以上です。

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