mieki256's diary



2003/04/18(金) [n年前の日記]

#5 [hns] hnsが抱えていたであろう問題点

著者側のTCO削減を念頭において開発されたツールであるが故に仕方ないのかもしれないが、閲覧側のユーザビリティを実現する事に関してはおざなりになっている印象がある。例えばそれは、(開発の歴史的経緯故に仕方ない面があるとは言え)動的・静的生成を明確に分け続ける仕様実装状況にも見て取れる。 *1 また、公式マニュアルの充実度はかなりのものだとは思いつつも、トラブルに遭遇したユーザが最も頼りにするはずのFAQページ *2 において、問題解決の為の技術的情報を何一つ掲載せず *3 、ひたすらジョークの羅列 *4 *5 に終わっている点にも首をひねる。

内在していたであろう問題点 :

これら問題点を意識してみると、どちらにも共通して内在してたであろう問題点がおぼろげながら見えてくる。つまりそれは、「ユーザの視点で物事を考える事のできなかった開発者・ドキュメント記述者」の姿。FAQページに技術的事項を記述しなかったのは、ユーザがどのような状態に陥った時にFAQページを覗くのかシミュレーションが出来ていないからだし、動的・静的生成の無意味な分類に拘らざるを得なかったのも閲覧側が主にどのような形でhnsというシステムを利用するのかがほとんど推測できていなかったからだろう。それら「想像力の欠如」「シミュレーション能力の不足」が当時のhns開発コミュニティにはあったのではないだろうか。そのような推測をしつつhnsの各種仕様を見ていくと各種問題点がその推測に基く事で説明できてしまう場面が多いように感じる。

つまるところhnsコミュニティの抱えていた問題点は、ジョークセンスでも無いし、巫女さんの画像でもない。それはたまたま表面化した氷山の一角でしかなく真の問題点はその底にあった。ユーザがどのような状況に陥るか、それら状況でどのような行動を取るのか、通常利用時にユーザが何を望むのか…そういった事項について少しは想像してみようと試みることができない人材しか居なかった事…それが真の問題点ではなかったか。

それでもツールの利便性は否定されるものではない :

仮にそれが事実であったとしても、だからといって「hnsはダメだ」という評価には結びつかないことを意識しておく必要がある。hnsが「著者側のTCO削減」を目的とするツールとして良くできている事は紛れも無い事実であろう。なぜなら、hns開発者はそもそも著者として当事者であったし、また開発コミュニティに集まってきた「著者側」が、自分が欲する具体的機能を次々に要求していったからだ。「閲覧側が何を望むか」を「想像できない」開発者であっても、自分が欲する機能についてなら認識できるし、著者側の具体的要求が目の前に上がってくれば、自身も著者である以上、何が必要な機能なのか判断し、実装することも可能だ。しかし、開発コミュニティに集まるのはあくまで「著者側」「管理者側」であって「閲覧側」は集まらない。そもそも「閲覧側」は日記自動生成システムの開発に興味など無い。閲覧側にしてみれば最終的にブラウザで日記ページが見れればシステムは何でもいい。つまりは閲覧側の要求はほとんどなかっただろうし、また要求があっても閲覧側の視点に立てない開発者にはその要求が妥当なものであるかが判断できなかっただろう。そのような状況があったからこそ、hnsは著者側にとっては魅力的なツールに発展したし、閲覧側にとってはどうも今一つなツールになったのだろう。「著者側のTCO削減」を目的にしていたからだけではなく、それしか意識できなかった状況が同時に存在していたのだろうと推測する。

将来、あるいは現在の状況推測 :

なんにせよ、hnsが著者側にとって魅力的なツールになったという事は、同時に開発が終焉に近づいた事を意味する。既に著者側が欲する機能のほとんどは実装され、残った問題点は閲覧側のユーザビリティ実現だけとなった。しかしそれらユーザビリティ実現は、かつてのhns開発コミュニティではおそらく永遠に着手されないであろう。かつての開発者達は、ユーザ(この場合閲覧側)の視点に立って仕様の必要性云々を検討することができない。想像力を有していない彼等には何をどう改良すればいいのかがわからない。それら想像力を有していないからこそのあのFAQで有り続ける。あのFAQは、コミュニティの人間がユーザ側の視点に立てない種類の開発者であることを示すステータスランプであると言える。
しかしそれはたいした問題ではない。既にhnsという原型は出来たのだし、実際にhnsというツールを作り上げてみせた開発コミュニティの実績も率直に評価されてしかるべきだ。それとはまた別に、今ならhnsでなくても他に魅力的なツールは多数存在する。条件さえ満たせばhnsに拘り続ける必要もない。
日記自動生成システムを導入し日々運用していけば、管理者は多数の閲覧者と共に、自らも閲覧者としての視点に何度も立つし、そうした日々を繰り返すうちに現行システムに欠けている様々な仕様を肌で感じとり認識する事が出来るだろう。欠けているものが認識さえできれば後はそれを実装すればいい。ただし、それはhns開発コミュニティに望む事ではなく、自分で実現していくべき事だろう。 *6

言い訳 :

と、これは当時の状況を知らなかった人間の憶測でしかないわけで、笑って流すが吉かと。ていうか自分も経験あるけど、ユーザの視点に立てないプログラマーって何をどう言っても理解・想像できないし、ユーザの視点に立ってるつもりのプログラマーも実は頓珍漢な方向を向いてたりしてなんとも難しいもので。なんにせよ、少々問題はありつつも大筋においてhnsは便利なツールなので、やはり諸先輩方が開発・公開してくれた事に深い感謝の意を示したいと思うのでありました。ありがとう。ソース見て勉強させていただきます。

それにしても、どうしてhns使うとこんな感じに偉そうな文章ばっかり書きたくなるのかな。なんかその手の人種が集まる要因でもあるんだろうか。

ジョーク :

ちなみに、「普及云々」とか「TCO削減」とかの言葉もジョークだとはわかっているが、 *7 それだけでまとめてしまってはつまらないので、実はジョークではなかったという前提で前述の感想・憶測を書いていたりする。それにしてもLinux文化圏のジョークセンスは一般人にはわかりづらい。このあたりもLinuxが一般に普及しない要因だったりはしないか(嘘)。

*1: 閲覧側にとっては動的生成であろうが静的生成であろうが関係ない。即座にページが表示されればそれに越した事はない。更に、閲覧側が頻繁に見るはずのページはある程度予測が可能。であれば動的・静的生成を柔軟に組み合わせて事態に対処すべきだがそうはならず、動的・静的の無意味な分離に開発者達は拘り続けた。それは開発側・著者側の都合でしかないし、そこには、「閲覧側のユーザビリティ」<「著者側のTCO削減」で基本的に仕様決定していこうとする流れ・思考があるからなのだが…実はそれ以外の大きな要因が、hns開発コミュニティに内在していた事が他の問題点からも推測される。
*2: 家電製品のマニュアルで言えば「故障かな?と思ったら」のページに該当するのがFAQページであろう。FAQページを覗くユーザは、十中八九トラブルに見まわれ、藁にもすがる思いで、問題解決の糸口を求めてFAQページを開く。そもそも導入時のマニュアル閲覧においてFAQページを覗くユーザなど居ない。家電製品の「故障かな?」のページを他の操作方法説明ページと同列に扱って読んでいるユーザが果たして居るだろうか。大抵の場合、導入時においてそれらページは読まないものだ。かといってそれらページはマニュアルに存在しなくても良いページでは無い。明らかに情報として不可欠なページでもある。なぜならそこにはトラブル時の対処法・判断方法が数多く掲載されているからだ。その事をユーザは無意識に理解している。故に、導入時には目を通さないし、トラブル時には目を通す。
*3: 後で読み返してみたら技術的FAQページへのポインタが存在してることに気づいた。何一つ掲載していないというのは間違い。訂正する。しかしその文章量、及び、何をまず見せるかという点において、技術的情報と非技術的情報の置かれるべき場所が逆転している事実は変わらない。
*4: Linux文化圏においてそれら悪ふざけが流行している背景も理解しているつもり。だが、例えばRedhatLinuxやVineLinuxの公式ドキュメント中のFAQページは同種の悪ふざけで占められてるであろうか。普及を目標として掲げる以上、公式ドキュメントに狭いコミュニティでのみ通用する言葉遊びを入れることはマイナスにしかならない。「周りのアマチュア連中は皆FAQにお遊びを入れてる。俺達だってやってもいいだろう」という論理があるのかもしれないが、それは「周りの連中が皆万引きをやってるから、俺達も」という論理と同一だ。その行為が果たして自分達の目標とする状態へと近づく行為であるのか、それを判断出来るのはその本人しか居ない。周りがやっているから、などという理由で、自分達に取って得になるか損になるのか判断すべき局面で思考を止めてしまう事に、果たして何の意味があろうか。
*5: ジョークが悪いと言ってるわけではないし、ジョークセンスが問題でもない。単にTPOの問題。そもそも自分も「るりるり萌え」だったりするが、しかし会社の新人研修の講師が壇上で新人に向かって「るりるり萌え」と叫んだら、新人は皆、会社の将来に不安を抱き次々と辞めてしまうだろう。そういう言葉は、新人歓迎の飲み会で同種の雰囲気を漂わせる新人相手に語るべき。通常はそのようにジョーク(?)を発するTPOをわきまえるものだが、それが理解できないというのは、やはり、ある一つの可能性を考えざるを得ない。
*6: 開発者に対し要求をぶつけても無意味。彼等が閲覧側の視点に立つ事が出来ない以上、彼等にはその要求が理解・想像できないし、必然性も感じることが出来ない。仕様の必要性を実感した者だけが、その仕様を実装することによる効果を想像できる。
*7: 真剣に「普及云々」を目的としている人間が、巫女さん画像やルリルリ云々をhns公式サイトに置くだろうか。置くわけがない。置いても普及するだろうと考えているなら、それは「ショーコーショーコー」の歌を歌えば選挙に当選すると真面目に思っていた某宗教団体と同じぐらいに現実世界から乖離した思考をしている。故に、元々それら謳い文句からして須らくジョークであると考えるのが自然であろう。

以上です。

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