mieki256's diary



2023/04/25(火) [n年前の日記]

#2 [zatta][neta] フレーム間が統一されていないことの魅力

思考メモ。

少し前に、踊っている人の実写映像を、1フレームずつAIで手描き風に変換した動画を目にした。ググってみたら見つかった。以下の動画。

_「AIアニメーション始まりすぎだろ..」実写モデルの動きをアニメに変換するAIの精度が高すぎることに対するクリエイターの反応 - Togetter

初見時は、「うわ、スゴイ」と思ったものの、よく見てみると、1フレームずつ変換してるから、フレーム単位で服の種類も影の付き方もパカパカ変わっていて、これではまだまだ使い物にはならないわな、と…。

ただ、3DCGでレンダリングして作ったセルルックなアニメ映像と比べると、AIが生成したソレに魅力を感じるというか、妙な手描きアニメ感が付加されているようにも思えて、そこからなんだか色々と考え始めてしまった。のでメモ。思考メモ。

機械が描いたような線を求められてた時代 :

大昔、セルとフィルムでアニメを作り始めた頃は、仕上げのお姉さん達が、つけペンを使って、セルに動画の線をトレスしてた(らしい)。その頃は、動画に忠実に、かつ、どれだけ奇麗な線を引くか、そういう能力が仕上げの方々に求められてた。

そのうち、トレスマシンが出現して、機械が、動画用紙上の線をセルにトレスしてくれるようになった。ところが今度は、動画用紙上の線自体にバラツキがあることが問題になってきた。動画を描いてる方々はそれぞれ別人なのでバラツキがあるのは当たり前なのだけど。そこで、動画を描く際にはこういう筆記具を使え、みたいなルールが一部のスタジオ内で強制されるようになったりもした。 *1

つまり、昔の日本の手描きアニメ業界には、「均一な線」「無個性な線」「誰が描いても同じ線」を理想として、そんな線を実現すべく、作業に従事する人間達が努力をしていた時代があった。

機械が描いた線を否定される時代 :

これが、3DCGソフトの出現と、セルルック3DCG映像の普及で、ちょっと状況が変わってくる。3DCGのソレは、機械が描く線なので、人間が引くより、間違いなく奇麗で、均一な線。

やったぜ。とうとう理想の線をアニメ業界は手に入れた。これで視聴者も大喜びすること間違い無し。

とはならなかった…。3DCGというだけで、なんだかんだ言って拒否反応を示す視聴者が結構出てきた。おかしいじゃないか。そこにあるのは、アニメ業界が何十年も追い求めてきた理想の線のはずなのに。まるで機械が描いたような均一な線を実現しようと、皆でずっと苦労してきたのに。なんで文句言われるの。お前等、コレが欲しかったんじゃないの?

顧客が本当に欲しかったもの :

つまるところ、手描きアニメにおける、本当の理想の線には、「ゆらぎ」「ズレ」「ブレ」が求められていたのかもしれないなと思えてくるのです。ブレ過ぎていてもダメだけど、機械のように正確過ぎてもダメなんだろう…。人が手を動かして作ったものには、必ず微妙なブレが入る。そのブレに、見る側は何かを感じていたりするのかもしれないなと。

そんなわけで、前述の、AIが生成したブレブレの動画に、自分は妙な魅力を感じてしまったのかもしれないなと。機械が生成した動画のはずなのに、雑な人間がガリガリと描いた動画のように見えなくもない。そこが見ていて面白い。

おそらく今後、フレーム間で形状に連続性を持たせるように、AIによる変換処理が発展していく可能性は高いのだろうけど。仮にそれが実現した時、「昔のほうが活き活きとした動きに見えたなあ」「これでは3DCGと変わらないじゃん。つまんない」という感想が出てきそうな気もする…。

でもまあ、一度はそういうレベルに達してみないと、その次の目標だって見えてこないのかもしれないな、とも思うのですが。

アナログな何かを付加すること :

そういえば、ここ最近の手描きアニメ業界は、セルとフィルムで作ってた時代のアレコレを再現しようと努力しているように見えなくもないなと。

仕上げは完全にデジタルになって、バケツツールで各面をクリックして塗り潰していくから、もはや塗りムラなんてどこにも無い。セルに絵具をペタペタと塗ってた時代は「塗りムラはダメ」という扱いだったけど、その頃からすると今のアニメ制作の仕上げは、間違いなく理想的な塗りのはず。完全にフラット。完全に均一。

なのに、撮影段階でフィルタをかけて、わざわざ塗りムラを再現してる作品が結構前から出てきている…。ガンダムシリーズのMSの塗りとかそんな感じだけど、アレって何時頃からやり始めたんだろう…。

線についても同様で。バケツツールで塗っていく関係で、動画の線は2値化された状態で仕上げに渡されるけど。これまた撮影段階で、鉛筆で描いたようなボサボサ感等をわざわざ付加してる作品があったりして。元々鉛筆で描いていた(かもしれない)動画を、わざわざ2値化して、鉛筆らしさを無くして均一な線にしているのに、また後から鉛筆らしさを追加するのだから、一体何をやってるのだろうと思わないでもないけど…。 *2

でも、その処理を入れるか入れないかで、映像から受ける印象が随分変わるのだよな…。

セルとフィルムで作ってた頃からすると、デジタルな道具の普及によって、これこそが理想と思える状態が実現したと言える。しかし、実際にその状態になってみると、これじゃ物足りない、アナログ感が欲しいと思い始めるという…。なんとも不思議。

てなあたりを考えると、セルルックの3DCGアニメ映像だって、手描き感を付加して印象を変えてしまうことは可能なはずで。実際そのあたりを試みてる作品も既にあるけれど。例えばEテレを眺めてると、時々そういう映像を見かけたりするし。

そういった、あえて不安定さを付加する処理にAIを使えないものかな。今の画像生成AIはフレーム間を統一させることが苦手だけど、いっそのこと、逆にフレーム間を統一させない方向で仕事をさせられないものか。たぶんソレ、手描きの一枚絵にも使えそうな気が…。などとバカ妄想をしてみたけど、何をどう学習させてどういう処理をかければいいのかさっぱりイメージが湧かないですが。

思考メモです。オチは無いです。

*1: たしか、テレコムやジブリではそういうルールがあったと、どこかで聞いたような…。要するに、宮崎駿監督が渡り歩いてきたスタジオでは、そこまで指定されたりしていた、てな話だったような…。
*2: いやまあ、海外の動画作業はデジタルになっていて鉛筆なんかもう使ってないのだろうし。グレースケールの画像を塗っていく仕上げツールは日本のスタジオ内でほとんど普及しなかったから、色んなスタジオの手を借りなきゃ作れない以上、どうしてもどこかで2値化する段階が必要になるんだろうけど。

以上です。

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