mieki256's diary



2017/10/20(金) [n年前の日記]

#1 [anime] 「名探偵ホームズ」第3話を視聴

BS11で「名探偵ホームズ」が放送されているので視聴していたり。第3話は宮崎駿脚本・コンテ・演出回。

第3話は妙に映像が奇麗で。あの宮崎駿担当回ということで、DVDやブルーレイにする際の修復(?)作業で特別扱いを受けていたのだろうか。それとも初期の数話はフィルム自体が違うとか?

全般的に「スゲエ」「スゲエ」と思いながら視聴したけど。手紙の秘密が分かってホームズ側が汽車に乗るまでの流れ、および、汽車の中で警部が応援を要請するあたりの流れに、個人的にはかなり痺れたり。

汽車に乗るまで。 :

汽車に乗るまでは、こんな感じのカット割り。
  1. 猛スピードで車を走らせるホームズ。ワトソンの問いに答える形で、目的地を音声で解説。
  2. 奥から手前に走る車。道の真ん中に立ってる警官の制止も無視して、華麗なコーナリングで走り抜ける。
  3. 偽金関係のデスクワークに忙殺されている警部の姿。ホームズの「警部!」という声だけが入ってきて、警部や警官がそちらを向く。
  4. 奥のドアから手前に向かって険しい顔でノシノシ歩いてくるホームズ。カメラはホームズを真正面から捉える。
  5. 警察署の入り口。警部の腕を掴んでグイグイ引っ張っていくホームズ。警部は背広を小脇に抱えて困惑している。
  6. 猛スピードで車を走らせるホームズ。警部、ワトソンも同乗。ホームズ「汽車に乗ってから説明します」。
  7. 駅から出ていく汽車。走って追う3人。「最終便だ!」
  8. 汽車の最後尾に飛び乗る3人。警部だけ遅れてしまい、ホームズとワトソンが警部の腕を掴んで引っ張り上げる。例の宮崎駿の空中泳ぎが出現。
  9. 画面奥へと静かに走っていく汽車。手前でアップになってる木製の信号機がカキンと音を立てながら降りる。
ストップウォッチで測ってみたら22秒だった。

各カットは、映像が「今何をしてるか」を伝えつつ、音声は「何のためにソレをしているか」を伝達している。並列に情報を流してるので、かなりの密度を感じるというか。また、それぞれは断片的なカットだけれど、それらが繋がることで一つの展開として理解できるあたり、これぞモンタージュ手法。みたいな。

どのカットも何かしら語りたくなるところがあるというか…。例えば、ホームズがノシノシ歩いてくるカット。今は合成が楽になったから歩きをループにしてキャラをズームすれば作画が多少楽になりそうだけど、当時は合成が大変だったから最初から終わりまで作画でやるしかなくて。真横から捉えるカットにすれば節約できそうだけど、そこであえて真正面から捉えたのは何故か。警部の視点でホームズを捉えることで、ホームズがなんだかスゴイ迫力でこの場に登場したんですよ、と視聴者に伝えることができるからで、故にここは作画は大変だけど真正面から捉えないとダメだよ、というカットになってるよなと。

警部が背広を小脇に抱えたまま警察署の入り口に引っ張り出されるあたりも上手い。背広を着て出現しちゃったら、それだけの時間的余裕があったことになってしまう。まだ服をちゃんと着ていない状態で現れることで、一体どれだけホームズが急に連れ出したか、ホームズがどれほど急いでいるかが瞬時に伝わってくるわけで。背広を着てるか着てないか。ただそれだけのことなのに、そこを意識して描くだけでも、その場の状況が違ってくるという。

汽車が走り去っていく際に信号がカタンと落ちるのもなんだかスゴイ。こんなコンテを描ける人、今の作り手では居ないんじゃないか…。話の流れからするとそんな描写は要らないような気もしてくるのだけど、あの信号の動きが描かれてないカットを想像すると、あるとないとでは雲泥の差だよなと。これがまた、電球だかLEDだかが赤や緑に光る現代風の信号では印象が違うわけで。板がカタンと落ちる信号だから、作品世界の時代が瞬時に伝わる。所謂、風情が出てくるというか。

どのカットも作画は面倒臭そうだけど、どうしてその動きをそこで描かないといけないのか、納得できるコンテになってる、ような気がするわけで。

応援を要請するあたり。 :

汽車の中で状況を説明して、警部が「あとはお任せあれ。すぐに手配しますぞ」といったあたりからは、こんな感じで。
  1. 駅へ入ってくる汽車。煙をモクモクと出し続けてることで、止まる気配がないことが伝わる。プラットフォーム(?)には駅員が立ってる。
  2. 警部が汽車の窓から「頼む!」と叫びながら、筒状に縛った紙を投げる様子を、全部動画の Follow PAN で映す。
  3. 駅員が慌てて駆け寄って紙を拾う。
  4. 去っていく汽車。駅員が紙を読んで、「大変だ!」と叫びつつ画面外に走って消えていく。
  5. モールス信号を打ってるカット。電鍵(?)に少しずつズーム。音声で、「ツツーツツツー」的なモールス信号のみが流れる。
  6. モールス信号の音声を前のカットから繋げたまま流しながら、遠くまで伸びてる電線と電信柱を結構速いPANで映す。
測ってみたら14秒だった。

例えば、駅員が紙を読むカットは、駅員の後ろ姿がゴソゴソ→ピタリと制止しているだけ、だったりするのだけど。これだけの動きでも、駅員が紙を開いて読んでいるのだろうと視聴者は想像できちゃうわけで。前後の流れと後ろ姿だけで伝わると判断してコンテを描いてるあたりがスゴイ。コレ、下手なコンテマンなら、駅員の上半身を前から捉えて駅員が紙を開いて読む面倒臭い動きをアニメーターに平気で描かせるコンテを出してきそう。

電線と電信柱を高速にPANで映していくカットもさすが。高速なPANは、情報の高速伝達を映像で解説してるわけで。説明台詞なんてそこには無いのに、映像を見れば瞬時に分かる。電信とはなんぞや、てな知識を持たない幼児ですら、映像を見ればテクノロジーの存在が理解できるだろうと。

この一連のカットがあることで、駅に着いたホームズ達が大勢の警察官を従えて敵陣に乗り込むのは何らおかしくない、てな状況が整うわけで。

今では作れない気配がする。 :

もっとも今時の作り手なら、これらの一連のカットは全部バッサリ削除しちゃうかもしれない。今のアニメオタクなら、こういったシーンが無くても話の流れは理解できるだろうから。でも、それを幼児に見せた時にどうなるか。普段アニメなんか見てない一般人に見せたらどうなるか。…こういった描写を丁寧に入れるあたりに、宮崎駿という作家の、当時のバランス感覚があったのかもしれないし、それが、最終的には大衆に受け入れられる結果へと繋がっていった、そんな可能性もありそうな。

しかしコレ、テレコムだから作れたよな、てな感じも…。このコンテを、当時の別スタジオで映像化したら、各カットのドタバタした動きすらちゃんと描いてもらえなかったのでは…。「TVアニメでこんなコンテ描くな!」と怒られてたかもしれない…。宮崎駿も凄いけど、やっぱりテレコムも凄い。そりゃ劇場公開するわな…。これほどの出来なのにお蔵入りとかもったいない…。

手紙の謎を解いてるシーンで、突然のワトソンのアップに幼女が笑ってホームズの顔にすり寄った瞬間、ホームズが軽く驚きつつ幼女のほうを横目でチラッと見て、また視線を戻してニッコリするあたりとか…。たまらん…。コンテに描いてあったのか、アニメーターがそういう動きを描いたのか分からんけど。今、こんなコンテを描ける人って居そうにないし、アニメーターだって勝手にこんな動きを描いたりできないよな…。

ところで、今後、片渕脚本+宮崎駿コンテ回の放送も控えてるはず…。ググってみたら、4話、5話、9話、10話がソレらしい。

以上、1 日分です。

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