mieki256's diary



2012/07/21() [n年前の日記]

#2 [zatta] 「長い」「作品」「商品」「ハードル」

思考メモ。

まとめ。 :

先に結論を。

「長さ」は、「作品」を否定する要因にはならないし、「商品」として間違いなく売れないと決定するほどの要因でもない。ただし、「長い」と、「商品」としてのハードルは上がる。なぜかというと、お金はあるけど時間に余裕がない人が多いから。世の中、社会人のほうが多いので。

以下は蛇足というか、思考過程のメモ。

「作品」と「商品」という見方があると思う。 :

ちょっと前に、「その手のゲームは長いと良くない」てな思考メモを書いたのだけど。自分が、何を問題にしているか、今一つ分かってなかった気がしてきたり。

長いから面白い、長いけど面白い、という作品もフツーにあるのだから、「長い」と「作品」としてダメになる、という話じゃ全然ないんだよな…。

おそらく、「長いのはダメ」と言われると、自分が作った/楽しんだ「作品」を否定された気分になってカチンとくる人が居そうだなと思うのだけど。「長いと作品としてダメ」と言われてるわけではなくて、「長い」と「商品」としての売り込む際の「ハードル」が上がっちゃうよね、という話でしかないのだと思う。

社会人のほうがお金を持ってる。だから、売りたい、儲けたいと思うなら、社会人“も”狙ったほうがいい。となると、長いコンテンツより短いコンテンツのほうが手に取ってもらえる可能性が高まる。だから、長いのは良くないよ、短いほうがいいよ、と、そういう話でしかない。

作品の良し悪し、創作云々の話じゃない。商品として売り込みやすいか、お金を持ってる人達を狙いやすくなるか。つまりは、商売の話。「作品」じゃなくて、「商品」としてどうか、という話。

…自分がメモしたソレは、そこが明確ではなかった気がする。読み返してないけど、たぶん「作品」「作品」って書いてたんじゃないかしら。作品じゃなくて商品の話をしてることに、その時点では自分も気付いてなかった可能性が高いなあ、と今頃思えてきたり。

長いと商品にならない、わけでもない。 :

長いと絶対に商品にならない、というわけでもない。学生さんだけ狙うなら、たぶん長くてもいいし。あるいは、長くすることで作品価値が上がり、商品としてのハードルなんて作品の価値で軽々と飛び越えられると勝算が見出せるなら、長くてもいいのだと思う。

それに、長いモノを短くして売る方法だってある。
  • TVアニメは、長いシリーズを、話数で分割して売っている。
  • 児童向けの出版物のように、長い小説のダイジェスト版を作って売る、という手もある。
  • 1stガンダム劇場版のように、長いTVシリーズを編集して、映画版という短い形にして売ることもできる。
  • 小説を、漫画やアニメや舞台等、別の表現手法で作り直すことで、短くして売ることもできる。
売り方を工夫することでも状況は変わる。長いままの形で売らなきゃいけない、なんて法律で決まってるわけでもない。 *1

例えば、昔、MEGA-CDのゲームで、TVアニメに見立てたADVゲームがあったんだけど。そういう手も使えるんじゃないかしら。クリアまで数十時間かかると言われるより、1話20分で終わるよ、全部で何話だよ、と言われたほうが、20分単位か、だったらプレイできるかな? という気にならないかなと。実際、TVアニメがそういう形で商品になってるから、実績はあると言えるし。

ケータイゲームも、そういうやり方かもしれない。NHKの番組で、1日にピークが3回あると紹介されてたけど。朝、昼、夕に、数分〜数十分のプレイ。そこだけ見ると、プレイ時間は短く見える。でも、トータルのプレイ時間はとても長い。…そもそも、ケータイもスマホも、バッテリーの問題があるから、長いコンテンツも細切れにして提供しないと話にならないのかもしれないけれど。

つまり、構成の仕方を変える、パッケージングの仕方を変える、適切な区切りを入れて短さを強調する…ことでも状況が変わる。かもしれない。

でも、こういう話は、「作品」を作ってるつもりの人や、純粋なユーザ視点で「作品」を楽しんでる人には、ピンとこないかもしれないのか。「商売」「商品」の話でしかないから。

なんでこのへんもやもや考えたかというと。 :

_『2012年春 星海社FICTIONS新人賞 編集者座談会』2012年5月24日@星海社会議室 | 最前線 という記事を読んで、やたらと「長い」「長い」で没になってるなあ、と…。そこだけ見ると、「やっぱり『長い』とダメなんだ」と結論を出しちゃいそうだけど。

勝手な想像だけど。編集者は社会人だから、長い小説を読むのが基本的にツラいのではないか。読んでるうちに、「仕事とはいえ、時間がもったいない」と思い始めちゃうんじゃないか。だから、「長い」を理由にして、あっさり没にするのではないか、と邪推したりもして。

でも、 _SAO(ソードアート・オンライン) というラノベの話を見かけて、考え込んでしまったわけで。

なんでも、投稿規定をオーバーしたから自分で没にしてウェブで公開してた作品を、出版したらヒットしたとかなんとか…。いや、大賞応募用に編集し直したとか、出版する際に加筆修正したとか、そういう話も目にしたけど。そこは本筋じゃなくて。

つまり、SAOは、「『長い』という理由で没にされることが確定していた作品を実際出してみたら売れた」という例ではないのかしら、と思えてきたり。 *2

実際どうだったのかは分からんけど、とりあえずそうだと仮定すると。「長いから作品としてダメ」「長いから商品として売れない」が真ならば、SAOはそんなに売れなかったはず。だけどSAOは売れた(らしい)のだから、「長いから作品としてダメ」「長いから商品として売れない」という仮説があったとしても、それは間違っていると断言できる。…もちろん、そこから、「長いから作品として良い」「長いから商品として売れる」と変な結論出されても困るけど。

Fateシリーズもそういう事例なのか。長いけど、売れてる。めちゃくちゃヒットしてる。

そんな感じで、「長いからダメ、と自分は思ったけど、何がダメなんだろう」と、もやもやと。

少なくとも、「長さ」は、「作品」を否定する要因にはならないし、「商品」として間違いなく売れないと決定するほどの要因でもない、とは言えると思う。ただ、「商品」としてのハードルは上がる。なぜかというと、お金はあるけど時間に余裕がない人が多いから。

あくまで、自分の勝手な仮説ですよ。見落とし、間違い、事実誤認がありそうな気がします。

まあ、娯楽コンテンツを作って売ること自体、所詮は博打なので、こういうのって正解なんか無いですわな…。それに「作品」としてダメなら、どんなに工夫しても「商品」にはならんと思うし。

*1: いや、アニメ化・映画化云々は、「編集」を経由して、作品に手を入れちゃってる例なので、何か違う気もするけど。
*2: となると、「長い」という理由で没にしている編集者は、どこまで本当の商品価値を見出せているのかどうか、また、その投稿規定とやらが適切だったのかどうか、なんだか怪しい気もしてきたり。たぶん、作家さん当人や、編集者は、「規定があったから編集もした。推敲もできた。作品の質は上がった」「だから日の目を見たし、だから売れたのだ」と主張するだろうと想像するけれど。…本当にそうなのかな?

以上です。

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