mieki256's diary



2024/06/04(火) [n年前の日記]

#1 [cg_tools] 画像処理の膨張、収縮、dilate、erodeについて調べてた

_昨日、 画像の透明部分に、不透明部分のRGB値を引き延ばす処理をGIMPでできそうかどうかを調べてたけど、ガウスぼかしを使って処理するのは何か違うのではないかと思えてきて、引き延ばす(?)感じのフィルタ処理は他にないのか、そういった画像処理は何と呼ばれているのか、そのあたりを調べてた。

おそらくだけど、膨張、収縮(または侵食)と呼ばれる処理がソレなのかなと…。

膨張、収縮 :

一般的に画像処理の世界では、背景は黒(=0)、前景は白(=1)として扱う場合が多いらしい。

そして…。
  • 白い部分を大きくする/面積を増やす処理を「膨張」「dilate」「Dilation」と呼ぶ。
  • 白い部分を小さくする/面積を減らす処理を「収縮」「侵食」「erode」「Erosion」と呼ぶ。

処理内容日本語英語
白い部分を大きくする/面積を増やす膨張dilate、Dilation
白い部分を小さくする/面積を減らす収縮、侵食erode、Erosion

_モルフォロジー変換 - OpenCV-Python Tutorials 1 documentation
_【画像処理】膨張・収縮処理の原理・特徴・計算式 | 西住工房
_2値画像の膨張・収縮 1 | 画像認識の技術ブログ | マクセルフロンティア株式会社
_【画像処理ノウハウ】膨張とは - Pixelup
_2値画像処理

GIMPの場合 :

フリーで使える画像編集ソフト GIMP にも、同様の処理を行うフィルタがあると知った。
  • フィルター (Filters) → 汎用 (Generic) → 明るさの最小値 (Dilate)
  • フィルター (Filters) → 汎用 (Generic) → 明るさの最大値 (Erode)

GIMP 2.10.34 Portable Windows版で試してみた。たしかに、白い部分が膨張したり、収縮したりしている。

gimp210_dilateerode_ss01.png

その昔、争いがあった。らしい :

ただ、この Dilate と Erode については、今から20年前、GIMP 2.4 より前のバージョンでは処理が逆だったらしくて…。

_Bug 156545 - dilate/erode mis-named (refer to opposite operations)
_Bug 768741 - Filter -> Generic -> erode / dilate are reversed

「eordeは黒を増やして、dilateは白を増やすのに、GIMPでは逆になってる。これはバグやろ」
「そうかもしれんけど、関数名を変更すると今まで書かれたスクリプトの動作がおかしくなる。修正したくない」
「ErosionとDilationの言葉の定義を考えたら、この動作はやはり逆だ」
「背景を黒、前景を白と捉えるとそう見えるが、背景を白、前景を黒と捉えればこの動作は正しい。お前の捉え方がおかしいんじゃね?」
「あのなあ…。自分は画像処理の博士号を取得してるんだよ。あらゆる画像処理の文献と照らし合わせてもGIMPの動作は逆だ。これはさすがにおかしい」
「俺は後方互換性を重視して変えないほうがいいと思うけど、一応パッチは書いてみたよ」
「GIMP 2.4でそのパッチを取り込んでみようか…」

(この議論をしている間も「dilate/erodeは逆じゃね?」「またソレかよ! 既出なんだよ。このスレ見ろよ」というやり取りが何度も何度も…)
(そしてGIMP 2.4でDilateとErodeの動作が逆になった)
(そこから数年後)

「おい! この Dilate と Erode は動作が逆だろ。これはバグだ!」
「俺もバグだと思うんだけど『これが正しい』と言い張る連中が居るんよ…。この過去スレを眺めてくれ…」

みたいな。

これは想像だけど…。画像処理の世界では、背景=黒=0、前景=白=1が前提条件になっているけれど、一般人の間では Dilate と Erode から連想される処理内容が真逆なのかもしれないなと…。

この混乱は、結構長い間続いていた(続いている?)っぽい。例えば、GIMPのヘルプドキュメントを眺めると…。

_https://docs.gimp.org/2.8/en/plug-in-dilate.html (GIMP 2.8)
_https://docs.gimp.org/2.10/en/gimp-filter-dilate.html (GIMP 2.10)

_https://docs.gimp.org/2.8/en/plug-in-erode.html (GIMP 2.8)
_https://docs.gimp.org/2.10/en/gimp-filter-erode.html (GIMP 2.10)

_https://docs.gimp.org/2.10/ja/gimp-filter-dilate.html (GIMP 2.10 日本語版)
_https://docs.gimp.org/2.10/ja/gimp-filter-erode.html (GIMP 2.10 日本語版)

お分かりいただけるだろうか? GIMP 2.8 と GIMP 2.10 で、Dilate/Erode の動作が真逆になって説明されてる。更に日本語版に至っては、ページの見出しが「明るさの最小値」なのに、ページ内で「明るさの最大値フィルタは〜」と記述されちゃってる。君は一体どっちのフィルタについて説明してるのだ…?

まあ、そのぐらい、この2つのフィルタについては、扱いが混乱してるのだろうなと…。自分もこうしてメモしてまとめてみるまでは、どっちがどっちなのかちょっと分からなくなってたし…。

「明るさの最小値」「明るさの最大値」ってなんやねん :

それはともかく、GIMPのフィルタ名の「明るさの最小値」「明るさの最大値」って意味不明だよなと…。どんな処理をしてくれそうなのか全く分からない。どうして、画像処理の世界で普及しているワードに ―― 「膨張」「収縮」、あるいは「膨張」「侵食」にしなかったのだろう。何か理由があるんだろうか。

そのあたりググってみているうちに、なんとなく理由が分かってきた。そもそも、Photoshopが「明るさの最小値」「明るさの最大値」という訳をしていたのだな…。おそらくGIMPは、Photoshopのソレに倣って、そういうフィルタ名を選んだのではなかろうか。たぶん。

しかし、この珍妙(?)な訳のおかげで、功を奏した面もありそうだなと…。「一体なんだろう、このフィルタ…。何ができるフィルタなのか名前から想像できないから、とりあえず触らないでおこう…」という状態になって、結果的には、「このフィルタは動作が逆だろ?」「いや、これで正しいんだ」「いやいや、やっぱりおかしいって。逆だって。バグだよコレ」というバトル(?)が日本国内では起きずに、我々は平穏な日々を過ごせてこれたのかもしれない…。なんちてぽっくん。

余談。不透明部分のRGB値を引き延ばせるかどうか :

さておき。GIMPの「明るさの最小値」を使って、「膨張」「Dilate」を ―― 透明部分に、不透明部分のRGB値を引き延ばせるかどうか試してみたけれど…。

元々のRGB値をそっくりそのまま膨張してくれる点はいいけれど、数回実行してみると、妙なところまで色が回り込んだ見た目になってしまう時があるなと…。例えば以下の事例では、右下のあたりに不自然な緑色が回り込んでしまっている。

gimp_dilate_ss01.gif

まだ、ガウスぼかしを使って引き延ばしたほうが、自然な見た目になりそうな気もしてきた…。

以上です。

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