mieki256's diary



2021/12/20(月) [n年前の日記]

#2 [anime] ジョブズを敵扱いする日本製アニメ

思考メモ。

昨晩、BS日テレで放送されていた「MUTEKING THE Dancing HERO」という、「とんでも戦士ムテキング」のリメイクアニメを眺めていたのですが。そのアニメの中では、どう見てもスティーブ・ジョブズらしき人物が、最初からずっとラスボスとして描かれておりまして。

恥ずかしながら、もう最終回に近い今頃になって、ふとなんとなく考え込んでしまったのです。ジョブズをアニメの中で敵として登場させるのって…ソレってどうなんだろうなと。

と言うのも。皆もう忘れてるかもしれないけど。ていうか自分もついさっきまでうっかり忘れてましたけど。ジョブズって、あの超有名なCGアニメスタジオのPIXARに金を出して「トイ・ストーリー」を作らせた人物なんですよねえ…。

今はもう欧米では、「アニメと言えばCGアニメでしょ」てな風潮になってますけど、昔は全然そうじゃなかった。これはちと記憶が怪しい話ですが、たしか後にPIXARの社長になる人が、大学でCGを研究してた当時、「いつかそのうちCGだけで映画を一本作ってみたいな」と口にしたら同僚から笑われてしまった、てなエピソードがあったそうで。そのぐらい、「CGなんてまだまだ使い物にならねえよ。なるわけねえよ」と研究者達ですら思ってた、そんな時代があるわけです。

でも、そこでドーンと金を出して、CGアニメと言うジャンルそのものを、金銭的な面でサポートして育ててくれたのがジョブズなんですよねえ…。いやまあ、本人としてはあくまで投資先の一つに過ぎなかったのだろうし、「こんなに金がかかると知ってたら(スタジオを)買うんじゃなかった」とボヤいてたらしいけど。それでも結果的には、アニメと言うジャンルにおいて、それなりに偉人扱いというか、比較的真っ当なパトロンとして評価されてもおかしくない人物なわけで。PIXARにしろ、今のディズニーにしろ、ジョブズが金を出してくれてなかったら、こうなっていただろうか…。

そんなジョブズという偉人を、「MUTEKING」は敵としてアニメの中に登場させているわけです。いやあ、コレはスゴイね! スタッフは実に大胆ですな!

であれば、そこには何かもうちょっと、こちら側の ―― 未だに飽きもせず、旧来の手描きアニメを、せっせとしつこく作り続けている日本のアニメ業界側の、思想と言うか主張みたいなものが多少は込められていないとマズいんじゃねえのかなあと。そういう何かを含めつつ描かないと、本来なら御目通りすることも許されないレベルの敵ではなかろうか。でも、それっぽい部分がさっぱり見当たらなかったというか…。

例えばですけど、あの人物を出すからには、CG vs 手描き、みたいな暗喩まで入れてみてもおかしくないよなと。でも、「MUTEKING」のダンスシーンになると、モーションキャプチャでくねくね動くCGムテキングがのうのうと画面に登場するわけで。その映像、ジョブズが金出してくれたおかげでこうして作れるようになった面もちょっとはあると思うんだけど、そんな貢献者を敵として扱うのって、ある意味恩知らずにもほどがある所業だったりしないか…。たぶんこのあたり、スタッフは何も考えてない気配がする…。

まさかとは思うけど、プロデューサーも監督も、ジョブズ=iPhoneを作った人、程度の知識しか持ってないんじゃないか? だとしたら、ちょっと浅過ぎないか? あの人、実はアニメと関わりがある人物なんですけど、そんな扱いでいいのかよ? みたいな。いやまあ、ついさっきまで自分もそのことうっかり忘れてたんでどうこう言えないんですけどね…。でも、よく考えてみると、結構ヤバイ図式というか、やらかしちゃってる感が…。

それとは別に。ジョブズって、エピソードを調べていくとなかなか面白い人物なわけですよ。

あくまで伝聞ですけど、彼と話してるといつのまにかよく分からない謎空間に引きずり込まれるとか。同じ服を何着も持っていてそれしか着ないとか。日本の禅にハマってたとか。日本で手裏剣買って帰ろうとしたら税関で止められて「自家用ジェットで帰るのにハイジャックするわけねえだろ! 日本人は馬鹿なのか!」とブチギレたとか。 *1 AppleIIだかMacだかの基板の配線パターンを見て「美しくない」と言い出して面倒臭かったとか。

要するに、漫画のキャラみたいなエピソードがゴロゴロしてる。いや、自分はジョブズについてさほど詳しくないのでその手のエピソードは知らないほうですけど、これがジョブズ信者なら面白エピソードを次々に紹介してくれるはず。…ですよね? 光景がまざまざと目に浮かぶ(名|迷)エピソードがたくさんありますよね?

そんな人物を元ネタにしたのだから、そっち方面でも、もうちょっと…。見ていて笑ってしまうシーンをたくさん作れたはずではないかと。しかし、そういうシーンを目にした記憶も無くて…。 *2

そんなわけで、「MUTEKING」におけるジョブズの使い方、描き方は、ちともったいないよなと。あの人物は、素材/元ネタとして、もっと美味しいはずで…。そこを起点にして、あっちこっちに膨らませていけたはずで…。

「MUTEKING」は作り終えちゃっただろうから今更どうしようもないけれど、せめて今後、何か別の作品で、ジョブズという人物をもうちょっと深掘りして盛り込んでみてほしい気もするなと。

面倒臭いことになるからそういうアレコレを出すな、とは絶対に言いたくないのですよ。むしろどんどん出すべき。萎縮しちゃいけない。だけど、出した上で、「ああ、なるほど。そうきたか。なかなか考えたなあ」と唸らせて(笑わせて?)ほしいのだよなあ…。

そんなことをなんとなくぼんやりと思ってしまったのでメモ。思考メモです。尚、感想には個人差があります。

と、ここまで書いてふと気づいたけれど。タツノコプロって昔から、タイムボカンシリーズ等で、歴史上の偉人をしょーもないゲストキャラにアレンジして登場させるのが当たり前だったなと…。そう考えると、ジョブズに対する扱いも、実にタツノコプロらしい気も…。つまり、ジョブズは、世間一般的には既に歴史上の偉人の一人として仲間入りしちゃっている。それを如実に示したのが「MUTEKING」内での扱われ方、てな見方もアリなのかもしれないなと。クレオパトラやベートーベンの隣に、当たり前のようにジョブズが立っている…。もう、そんなイメージで認知されているのかも…。

余談。 :

「MUTEKING」について少しググってたら、本編映像の一部を無料で使える素材として提供する企画が始まったそうで。

_TVアニメ史上初の試み!? 「MUTEKING THE Dancing HERO」公式が本編映像の一部を“フリー素材”として提供 | アニメ!アニメ!

本編とは裏腹に(?)、周辺では面白いことをしているなと感心。使う側の頭の柔らかさが試される企画でもあるなと…。

アニメ業界初かも、てな一文を各ニュース記事で見かけたけれど…。たしか少し前に、スタジオジブリがそういうことをしていた気がするんだよなあ…。いや、アレは静止画像だったか。今回は動画だから、そういう面では初なんだろうか。あるいは、「TVアニメ」業界では初、ということだろうか。考えてみたら、そういう試みをしたアニメって、たしかに聞いた記憶が無いのだよな…。

そういえば、つい先日、「ムテキングってリメイクされてたの? 知らなかった」という書き込みをどこかで目にした記憶が…。たぶん、世間一般的には、リメイクされたこと自体、ほとんど知られてない気配も…。なので、こういう試みを打ち出して宣伝するのは良いことだなと素直に思いました。あちこちで使われたからと言って、別に何か損するわけでもないだろうし…。

*1: ググってみたら手裏剣エピソードはフィクションだそうで。なんだか残念。実話だったら面白かったのに。
*2: 一応、エキセントリックなキャラとして描かれてたし、美しさがどうとか口走ってたような気もするけど、どうも弱い…。笑いに繋がるレベルに達してないというか…。

以上です。

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