mieki256's diary



2017/03/14(火) [n年前の日記]

#1 [movie] 「イン・ザ・ヒーロー」を視聴

NHK-BSで、邦画の実写映画「イン・ザ・ヒーロー」が放送されてたので見てみたり。初見。

主人公はスーツアクターさんという設定で、しかも演じるのは、かつてライダーマンの中の人だった唐沢寿明氏、しかも共演がライダーフォーゼの変身前の人だった福士蒼汰氏という、既に企画レベルで「おいおいおい! それは見ておかなきゃいかんだろう!」と思えてくる映画というか。戦隊シリーズや平成ライダーを見てる人ならこりゃ要チェックや、みたいな。

しかし。見てみたら、なんだかかなりもやもや。

いやまあ、自分はティッシュペーパー並みに薄い特撮ファン、いや、特撮ファンを名乗るもおこがましいほどのにわかレベルだから、枝葉の部分が気になってしまうだけかもしれんし。あるいは無知故に脳内で勝手に作り上げてしまった何ら根拠のない理想のファンタジー撮影現場と比較しちゃって「コレジャナイ」と言ってるだけかもしれんのだけど。

感想をメモ。 :

「CG」「ワイヤーアクション」等の単語が出てくるあたり、映画の時代設定はどう見ても現代、それも比較的近年の設定だろうけど。それにしては、登場人物の各職種に対する差別意識が昭和ノリで。

例えば、ベテランのスーツアクターさん、スタントマンさん、スタッフさんを一段下に見て馬鹿にしてる、売り出し中の若手イケメンアイドル俳優なんて今時居るかよと。お前は昭和かと。おじさんキャラならともかく、今の若者を馬鹿にし過ぎてないかと。しかも本人は ハリウッドで通用するアクション俳優になりたがってて、だけどベテランのスーツアクターさんを馬鹿にして話も聞こうとしないとか…。どう考えても夢と行動が矛盾してる。

いやまあ、嫌な感じのキャラを置いとかないとドラマが盛り上がらないのだ、こういうキャラを途中で浄化させると観客は喜ぶのだ、と判断してそうしたことは分かるのだけど。にしても、もうちょっとどうにか…。いくらファンタジー部分と言っても、コレはちと杜撰では。

スタントマンやスーツアクターという職種が、顔出し俳優への単なる通過地点、という捉え方を最初から終わりまで描いてたのもなんだか引っ掛かったり。ソレ、違くねえか…。と言っても、主人公を演じてる方にとってはまさしくそういう感じでやってたんだろうから、ある意味ではリアルと言えるのかもしれんけど、しかしやっぱりソレって昭和感覚じゃねえのかなあ、と…。

例えば、昔は「声優」という職種を恥ずべきものとして捉えて、「私は声優じゃない。役者だ」と主張してた方が居たけれど、今はそうじゃないわけで。特撮ヒーローモノも同様に…。いや、アニメと違って実写の世界は未だに昭和のままで止まってるのだろうか。どうなんだろう。

クライマックスのあたりも、ツッコミどころが多過ぎて。劇中のアクション監督が、 「CG無し、マット無し、ワイヤー無し、ワンカットで!」と無茶苦茶なことを言い出したから主人公が、という展開なのだけど。肝心の映画の映像が、 「CG合成をすることが前提のグリーンバックのセット」+ 「ワイヤーアクションで吹き飛ぶ斬られ役」+ 「殺陣のシーンはカット切替しまくり」なので、「コレ、主人公が演じる必然性が無かったのでは…」「 危険だからと演じることを拒否した本来の役者が演じても全然OKな状況では…」「この映像では、状況設定が全部台無しじゃん…」と、もやもや。

本編中で主人公が、「脚本は、自分が出るシーンだけを読むんじゃなくて、全部目を通して自分の役どころを掴まないとダメだぞ!」みたいなことをイケメンアイドル俳優に指導するシーンがあったけど。もしかして、この映画のクライマックスシーンを担当したアクション監督さんは、脚本全部に目を通していないのではという疑念すら。脚本上の台詞や姿勢を、この映画のスタッフは一丸となって全否定してるという、なんだかメタな状況が…。いや、もしかすると、わざとかな。一応脚本は全部読んだけど、「こんな馬鹿なこと言いだすアクション監督なんて居ねえよ! なんだこの脚本! アクションの現場を舐めてんのか! ふざけんな!」と激しい怒りを感じて、わざとこういう映像にしたのかも…などと邪推してしまうほどにチグハグな作りで。

主人公の思想にも共感はできなくて。「子供に夢を見せるために」と言いながら自分の行動・選択を正当化してたけど、撮影現場で事故起こしてたら子供に夢を見せるどころじゃないわけで…。だから、事故を防ぐことは大前提で撮影に挑むのがプロ意識だろう、それでも時々事故は起きてしまうのだろうと想像するのだけど、生死が怪しくなるほどの無茶な要求に最初から無策で挑むのはどう考えてもNGで、お前は「子供に夢を」とか語る資格なんてねえ、プロじゃねえ、プロになってるつもりなだけのなんちゃって野郎だ、などと自分は思ってしまって萎えちゃったわけで。

とは言え、日本人は特攻大好き民族だから…。このほうがドラマとして盛り上がると判断して脚本を書いたのだろうな、てなあたりも分かってしまうし、しかも昭和の頃はとんでもないエピソードが実際に散らばってたりするので、ある意味リアルといえばリアルだったりして、「これはこれでいいのかなあ…。でも、こういう愚かしさを美化して見せてちゃダメだよなあ…バカ映画ならアリかなあ…にしてはバカ映画と分かるように作ってないんだよなあ…」などと悩んじゃうのですけど。うーん。

ちなみに、視聴後、脚本家さんのインタビュー記事をググって読んでみたら、ちゃんと取材して脚本を書いてたらしくて。つまり、本当は現状を知ってるけどドラマとして盛り上げるためにあえてこうしたとか、あるいは脚本として連名で名前が出てるプロデューサーが見るも無残な改変をしていったとか、そういうところかなと邪推したりもして。もしも前者であれば、まあ良し、という気もしてきたり。この手のソレは、リアル+ファンタジーのバランスが肝要だったりするし、分かっててやってるなら…「このほうがウケるんだ」「こっちが正解だ」と自信を持ってやったなら、それはそれでOKだろうと。

てな感じで、もやもやもやもやしてしまったのだけど。しかし、スーツアクターさんが主人公と言う設定がレアだし、しかも演じてる人が昔実際に、てな点もメタだし、なんだか扱いに困るなと。企画の時点で「勝ったなガハハ」状態の映画というか。特撮ヒーローモノが好きな人間としては、この映画の存在を肯定せざるを得ない…。

ということで、「ツッコミどころは多いけど、その分しっかりお話を盛り上げる方向に舵を切ったのであろう映画だから、見ても損は無い、かもしれない」「ツッコミ入れまくって楽しむも良し。フツーに盛り上がって見るも良し。誰でも何かしら楽しめる部分が見つかるんじゃないかなあ」てな感じの映画、だったような気がしました。

時代設定って大事なのかも。 :

もし、この映画が昭和の頃の時代設定なら、さほどもやもやしなかったような、そんな気もしてきたり。時代設定って大事なんだな…。

とは言え、本気で昭和を描こうとしたら、映像面では「三丁目の夕日」シリーズと張り合う覚悟が必要になりそうだけど、当然そんな予算も、技術のあるスタッフも確保できないし…。であれば、やはり現代を舞台にしつつ、しかし昭和感覚と平成感覚を分離することを意識した脚本を、とかなるのかな…。となると、おそらく世代衝突とか世代交代とかそういうアレも描けたりするのかしらん。どちらかを悪にするのではなくて、昔の良かったところ、悪かったところ、今の良いところ、悪いところの両面を描いていけば、などと妄想。

以上です。

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