mieki256's diary



2015/03/11(水) [n年前の日記]

#1 [pc][zatta] ペンタブレットや液晶タブレットについてもやもや

ネットを見てたら、おそらくは液晶タブレットを最近使い始めたらしい絵描きさんが、「紙ならそこそこ描けるのに液タブだとこの程度しか描けない」「他の絵描きさんは凄い絵を描いてるのに俺はまだまだだ」みたいなことを呟いていて。

それを見ていて、もしかすると絵描きさんの、「道具は悪くないのだ」「道具に慣れることができていない自分がいかんのだ」という自己完結的というかマッチョな思考はよくないのかもしれないなー、と思えてきたりして。 *1 せめて、「ここが使いづらい」と思ったら一応愚痴っておいたほうがいいのかもなと。

マッチョはよくないと思った理由。 :

以下、長文。

これがまだ、ペンタブ液タブに触り始めた10人中9人がいきなりスラスラ描けるけど残り一人が上手く描けない、てな状況ならともかく。現実には、触り始めた10人中10人が「上手く描けない…」と一時期必ず悩むわけで。

どう考えても、コレは使う側の問題じゃないだろと。十中八九、WACOMが悪いよなと。「自分が悪い」と思う場面じゃないかもしれんなと。

いやまあ、ペンタブ液タブは長い歴史を得て完成しきった道具じゃなくて、まだまだ改良や発展の余地を残してる道具、これから成長していくはずの道具、だから、今はまだこんな状態なのだ、ってことだと思いますけど。

「鉛筆も、Gペンも、丸ペンも、筆も、全て書き味が違うのだから、ペンタブ液タブも書き味が違って当然」「慣れるしかない」という意見も以前どこかで見かけたけれど。たしかにそうかもしれんと思いつつ、しかしわざわざ、既存の道具と感覚的に違うままにしておく意味ってあるのか? とも思うわけで。

例えばアニメ業界では、紙の上なら上手く描けるけど、ペンタブ液タブにすると画力が下がるから紙のまま原動画を描き続けてる、てな人達が山ほど居るはずで。紙を使って作画をしてるから、デジタル作画の恩恵・コンピュータによる作画支援をその場で即座に受けられない。 *2 つまり業界全体で見れば、とんでもない大損をこきっぱなしというか、3DCGアニメ制作などと比べると不利な戦いを強いられてると邪推するわけで。

しかし、ここでもし、紙に描く感覚と近いペンタブ液タブが開発できれば、スンナリとデジタル作画に移行できるよなと。当然デジタル作画の恩恵も受けられて、今後は大損せずに済むはずで。そのためには、ペンタブ液タブが紙に描くソレと感覚的に何が違うのか、具体的な違い・問題点の洗い出し・原因特定をして、それぞれを技術的に改良できそうか検討していく必要があって。

ところが、「道具に慣れてない自分がいかんのだ」で完結されちゃうと、問題点の洗い出しすらできない。問題点すら分からないのだから、いつまで経っても改良のしようがない。改良されないから、「やっぱり紙に描かないとどうにもならん」って話になる。業界全体はずっと大損しっぱなしなわけで。

たぶんコレ、その人だけが抱えてる問題ではないよなと。喩えとしては悪いけど、一匹見たら100匹居ると思え、みたいな感じで。「ペンタブ液タブだと上手く描けねえ」と悩んでる人を一人見かけたら100人ぐらい同じように悩んでるんですよ。そこで、「俺が悪いのだ」で完結していいのか。よくないですよ。たぶん。

かといって、「ここが違う」「ここをどうにかしてほしい」と言ってみてもWACOMがすぐに改良してくれるわけでもないので…。結局個人レベルでは、当面は慣れる努力をするしかないのですけど…。

ただ、ペンタブ液タブに慣れてしまって感覚的になんだか分からなくなっちゃうその前に、まだ違和感を覚えることができている時期に、「ここが紙とは違うように思う」「ここをどうにかしてくれたらスルスル描けそうな気がする」と気づいた範囲で全然OKだから一応文句は言っておいた方がいいんじゃないかなあ…。

と、自分は思ってしまったのでした。

おそらく、紙の感覚で使えるペンタブ液タブが作れたら、ソレを作った企業は大儲けするはずで。その、未来の大ヒット商品を作れるヒントを、触り始めた人達が持ってそうな気がするのです。そのヒントを、「俺がいかんのだ」で葬ってしまうのはもったいない。

とはいうものの。どこが違うのか、何が違うのか、言葉で説明するのも難しくて…。自分もペンタブをたまに使ってるけど、紙と何かが違うことは分かるけど、何が違うのか、どこがしっくりこないのか、未だにハッキリしないという…。ダメじゃん>自分。

文字にしろ、絵にしろ、書く時に手の動きを意識しながら描いてるわけじゃないので、よく分からんのですよね…。

二つの罠。 :

さておき、こういうアレコレを議論する時って、罠があるよなと思っていたり。ペンタブ液タブに限らず、道具全般に言える罠だけど。

一つは、道具について議論してると、優越感ゲームを始める人が出てくること。

道具が使えるか使えないかを話してると、「お前は使えないの? 俺は使えるぜ。フフン」とか言い出す人が現れて。例えば、おじさんおばさんがPC操作でまごついてると、「なんでこんなこともできないんだ」とか言っちゃう人が出てくるでしょう。アレです。

実際にその道具を使えない人が目の前に居るのだから、その道具にはまだ問題点があるし、改良の余地が絶対にあるわけですよ。なのに、「この道具に問題など無い」「何故なら、俺が使えてるから」「使えてないヤツが馬鹿なんだ・怠け者だ」と口走る人が出てくると、問題点の洗い出しすらできなくなる。

そういう場面を見かけるたびに、「あのさあ、お前のチンケな自尊心を満足させるためだけに、改善ポイント発見のチャンスを潰して回ってんじゃねえよ…」と思うんだけど、しかしコレ、自分も時々やってそうなのでちょっと不安で。ていうか、本当にその道具に精通してる人なら、「あー、ハイハイ。このあたりが初心者にとってはハマリポイントだよね」とサラッと言えちゃうはずなんですけどね…。

もう一つは、道具に責任転嫁しちゃうこと。

道具の悪い点を実際に口に出して意識してしまうと、「結局はこの道具が悪いのだ」「だから俺が使えなくて当然なのだ」という思考になりがちで。こうなってしまうと、そもそもその道具に触ろうともしない、という状態になる可能性が。

しかし、いくら文句を言ってみても問題解決するわけでもなく。もしかすると、「なんだか感覚的に違うんだよなあ。なんだろうなあ」と首を捻りながら触ってるうちに、そこそこ使えるようになったかもしれないのに、「道具が悪いのだ」で止まってしまうと、そこそこ使えるようになるかどうかも怪しくなってきて。

このあたり、「慣れるように俺も努力する。だが、道具も俺に、そのうちでいいからちょっとは近づけ」ぐらいの気持ちで一応使ってみるぐらいがいいのかもしれず。

などとそんな感じのどうでもいいことを時々思ったりするのでした。と、なんとなくメモ。思考メモです。

*1: まあ、絵描きさんに限らず、職人気質の人って、自分の腕を磨くことで自信を持つ人達だから、「使いづらい道具をどうにか使えるようになった俺カッコイイ」=「まだその道具を使えてない俺カッコ悪い」と思ってしまうのは仕方ない気も。
*2: 脳内にQAR相当の神経回路を作れと言われたり、制作進行さんがわざわざ車や電車で紙に描かれた成果物を受け取りに行ったり、そのへんなんだかなと。PCでプレビューすりゃええやん。ネットで成果物を送信すりゃええやん。

以上です。

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