mieki256's diary



2010/04/26(月) [n年前の日記]

#1 [zatta][web][neta] 匿名掲示板における豚のケツ問題について考えてみる

誰かが真面目に書いた内容に「>>765 バーカ」とだけレスをして、レスをつけられた側が「なんでバカだと思ったのか理由ぐらい書けよ」的なレスをつけてみても無反応、というよく見かける光景に対してなんだか少し考えてみたくなった。

個人的にはコレを豚のケツ問題・豚のケツ状態と呼称したい。「あっ!あれは!」「え?なに?」「バカがみーるブタのケーツ」というやり取りがあるが、「>>765 バーカ」のレスをつけた側が望んでるのはそういう反応ではないかと想像する。

「あっ!あれは!」という言葉は何も指し示していない。「自分が何かを見て今驚いています」という状況を伝達する意味しか持っていない。その言葉を耳にした人間が「え?なに?」と反応するその様子自体を見たくて、「あっ!あれは!」という言葉を吐いているに過ぎない。

「>>765 バーカ」とレスをつけた人間は、そこに集っている人達と会話をしたいと思って書きこんでいるわけではない。会話がしたいなら、最初から、何故バカだと思ったのかをチラリと示したうえで「バーカ」と書くはずだ。そのほうが会話が続くし、話も盛り上がる。しかし彼等は理由を書かない。何故か。当人は最初から他者と会話をするつもりがないからだ。会話をするつもりがないのに何故そこに来て何かしらを書き込むのか。それは単に、自分の書いた内容に誰かが反応してくれる状態を欲しているからだろう。つまり、これは豚のケツ問題なのである。

しかし「>>765 バーカ」という書き込みは、本来の「豚のケツ」のやりとりに比べて、性質が悪い。

まず、本来の「豚のケツ」は、以下のような効果が期待できる。
しかし、「>>765 バーカ」は、そのような展開にはならない。 どちらも、「自分のアクションに誰か注目してよ!」という欲求から出てきた言葉・台詞であるが、前者は笑いに昇華され、後者は険悪な雰囲気になる。前者は、他者の気持ちを良い方向に誘導することが可能だが、後者は、自己中心的なアクションにしかならない。…故に後者に対して社会性の多大な欠落・病理を見ることも可能ではあるがそれについては本筋ではないのでひとまず置いておく。

要するに、オチがないのが問題なのだ。

かつての「あめぞう」や「2ちゃんねる」では、「オレモナー」「オマエモナー」「逝ってよし」等、「やりとりにひとまずオチをつける」「話の区切りをつける」ための各種ジャーゴンが盛んに発明されていた。それは、当時の利用者の大半が、おそらくは知的レベルの高い高校生や大学生だったが故、軽妙なやり取り、機知に富んだ会話こそがイケている、という共通認識・共通の価値観が存在していたからだろうと推測される。

だが、2chが一般人にも知られ、そこに集う人達の傾向が大きく変化してしまったことで、そういったジャーゴンがなかなか産み出されなくなってしまった…のかもしれない。

かつて発明されていた様々な「オチ」の言葉は、テキストのみで会話をしているが故についつい発生しがちな無駄なトラブル・生まれてしまう負の感情を上手に笑いに昇華させ、場の雰囲気を良くしていくための処世術であった。それらの言葉を生み出し、使いこなしていた者は、インターネット上のコミュニケーションに存在する各種制限を無意識下で自覚しながらも、高度な社会性と機転によってなんとか便利なツールにしてみせようと工夫を加えていた者たちである。言わば、コミュニケーション術のクリエイター達なのだ。

だが、今のインターネットは違う。大半の利用者は、クリエイターとしての能力を持っていない。だから、「>>765 バーカ」のような無様なやり取りを頻繁に目にすることになってしまうのだろう。

「ひろゆき」が「匿名掲示板はつまらなくなった」と思うのも当たり前だ。コミュニケーションクリエイター達の工夫が、非クリエイター達の吐き出すノイズに埋もれて見えなくなってしまったからだ。「便所の落書き」と一部に称される匿名掲示板にも、かつてはたしかにS/N比の高さがあった。そのS/N比は、一般的に思われるS/N比ではなく、軽妙なやり取りを行うための各種話法を日々発明していくという視点でのsignalとnoiseの比率である。かつての匿名掲示板には、そういった種類のsignalの強さが存在し、そこに惹かれていた人達も居たのだろうと思われる。だが、今はもうnoiseだらけになった。何の工夫も、何の進歩も見られない場は、見ていてつまらないのは当たり前だ。匿名掲示板がかつて有していたsignalは、今ではnoiseに埋もれてしまったのだ。

だがしかし、少なくとも豚のケツ問題ぐらいなら、今からでも「オチ」の言葉を発明することは十分可能なはずだ。

自分も一応考えてみた。「>>767 おちけつ!それは豚のケツだ!」というオチの言葉はどうか。これはあまり上手いオチではないかもしれない。読む側が「豚のケツ問題」という概念を知識として持っている必要がある。

と、ここまで書いて気がついた。そもそもよく見かける「おちけつ」なる一文は、ひょっとすると、「オチ」+「豚のケツ」で「おちけつ」という意味だったのではなかろうか…。つまりインターネット上の先人達は太古の昔にこうなることを予想していて、既にオチの言葉を用意していたのだ。現代に生きる我々が、その言葉の持つ真の意味に気づかなかっただけなのだ! な、なんだってー!!

どっとはらい。

昔話においては「どっとはらい」という一文が最後を締めくくったりするが、それはつまり、話に綺麗な区切りをつけてみせるだけの知恵を昔の人は持っていたということでもある。昔の人が出来たんだから、今の人達にもできないわけはないだろう。と思いたい。

以上です。

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