mieki256's diary



2026/02/09(月) [n年前の日記]

#1 [dtm] ゲーム音楽と電子音楽云々

思考メモ。オチは無いです。

たまたま何かの拍子に以下のような言説やエピソードをネット上で目にして、なんだか色々考えてしまったのでメモ。思考メモ。

自分は音楽関係の歴史も知識も全くないのでたぶん頓珍漢なことを書いてると思う…。

日本初の電子音楽を作った方 :

見かけたのは以下のような話で…。

「1990年代当時、ゲーム音楽は電子音楽として評価されてなかった」
「1990年頃、『題名のない音楽会』で、司会の黛敏郎(まゆずみとしろう)氏がドラクエ4の音楽をdisってた」

後者については以下のページでその発言内容が読める模様。けちょんけちょんですな…。音楽のみならずストーリーまでボッコボコ…。

_メモ:題名のない音楽会でのドラクエ批判|ムゲンホンダナ:漫画を100年読んでみた

恥ずかしながら自分は知らなかったのだけど、黛敏郎氏は日本で初めて電子音楽を作った方だそうで。1955年にNHK電子音楽スタジオで3つの曲を作っていて、それが日本初の電子音楽とされているのだとか。

_黛敏郎 - Wikipedia

個人的に興味深いと思ったのが、その際に作った3つの曲のタイトル。

  • 素数の比系列による正弦波の音楽
  • 素数の比系列による変調波の音楽
  • 矩形波と鋸歯状波のインヴェンション

ファミコンの音源チップの仕様を知ってる方なら「おっ?」と思うはず。正弦波、矩形波、ノコギリ波 ―― それってファミコンの音源チップが出せる音色そのものじゃないですか…! *1

_ファミコン音源のスペック - MCK Wiki*
_矩形波?パルス波?三角波とは?ファミコン風の音色をめちゃくちゃ簡単に説明してみた(動画) | さまようけんばん

ドラクエ4が発売されたのが1990年。そして黛敏郎氏が日本初の電子音楽を作ったのが1955年。

つまり、ドラクエ4から35年も前に、ファミコンとほぼ同じ音色を使って、日本で初めて電子音楽を作った方が居て、その方がドラクエ4の音楽をけちょんけちょんに批判していたと、そういう状況なのですな…。

それは新しい音楽なのか :

じゃあ、黛氏が作った曲って一体どういう曲なのよ?

気になってググって少しだけ聴いてみたのだけど、正直「お、おう…」って感想に…。いやー、現代音楽ってなんというか…難しそうな世界なんですね…。

ただ、聴いているうちになんとなく想像したのだけど、これはもしかして、黛氏は新しい音楽を作ろうとしていたのではないのかなと。

電子音という、自然界にはおそらく存在しない新しい音を出せる楽器が目の前にあったとして、その新しい楽器で奏でるべき音楽とは一体どんな音楽なのか? それはもちろん今まで世の中に存在しなかった新しい音楽だろう。そうじゃないと許されないのではないか。作曲家を名乗る以上ここで新しい音楽を提示できなかったら、これはもう恥ずかしいことだぞ…。

そんなことを思いながら、件の3曲を作っていたのではないのかなあ、と…。

さて、そういう思いを持ちながら電子音楽に挑んだ方が、35年後に登場したファミコンの音楽を聴いた時、一体どういう感想を持つのだろうと想像してしまうわけでして。

まず…。「35年も経ってるのに俺が出してた音とコレほとんど同じじゃねえか!? お前達今頃何をやっとるんじゃ?」と呆れそうではあるかなと…。

加えて、「出てくるフレーズはクラシックのxxxxやxxxxの借り物ばかり…。俺は新しい音楽を作ろうとあんなに苦労してたのに…。お前らそれでいいのか? そんな志の低いことやっとってええんか?」という気持ちもあったのではないのかなあと。

もちろん、NHKのスタジオでしか使えなかった、おそらく高額な機材と同等レベルの楽器が、楽器とは一切名乗ることなく日本中の各御家庭に入り込んじゃって、しかも子供達がそれらの音に触れて楽しんでるというその状況自体、今まで世の中になかった全く新しい状況なわけで…。全体を眺めると間違いなく新しさはそこにある。いやはや凄い時代になったな…と思えてきそうなものだけど。

ただ、実際にそこで鳴ってる音楽だけを、あるいは再生されてるストーリーだけを取り出すと…。そりゃまあ低評価になるのもやむなしかなと…。だって、新しさがないもの。どこかで聴いたフレーズ、どこかで見たストーリー、そんなのばかりだもの。

実際のところはどうだったのか分からないのだけど、もし、「新しい道具が手に入ったんだからお前らもっと新しいもの作れや!」という志向性を持ちながら創作活動に勤しんでいた人物なのであれば、ファミコンのアレコレって低評価にもなるよなと…。同時に、こんな借り物だらけのものを食べずに元ネタを食べなさい、オリジナル版に触れなさい、という気持ちも出てくるかもしれないなと…。

要するに、「お前らガンダムSEED見て喜んでるんじゃねえよ1stガンダムを見ろ1stを」おじさんの音楽版、みたいなところがあったのかなあと…。知らんけど。

それはともかく。「新しい道具が手に入ったのだからお前ら新しいもの作れ!」という思想が仮にあったのであれば…。そこだけは今の時代でも聞き入れたほうが良いのかもしれんよなと…。

「おうおう黛先生よ随分言ってくれたじゃねえか。俺達だってそのうちなんかしら新しいもの作ってやるわい。草葉の陰からしっかり見とけやいつかぎゃふんと言わせたるで」ぐらいの気持ちをこっち側が持っていても損はないよな…。

お手本の有無 :

ただ、新しい楽器が手に入ったのだから新しい音楽を作らねばと模索してたのはおそらく少数派で…。世間の大勢としては、この新しい楽器で既に存在するフツーの音楽にどうやって近づけていくか、という志向があったような気もするなと…。

自分は8bit PCの時代からPCを触っているので、PCやゲーム機の音源の変化も一応ざっくり知ってるけれど…。

  1. 鳴ってるか鳴ってないか、それしかないブザー音。(PC-8001)
  2. 周波数を指定できるようになった矩形波単音。(MZシリーズ)
  3. 矩形波を3音も鳴らせる上に音量指定までできるPSG。(PC-6001等)
  4. 波形を変化させられるFM音源。(PC-8801mkIISR等)
  5. 楽器の音を録音再生できるADPCM/DPCM/PCM音源。(X68K等)

このあたり、「どうやったらフツーの音楽をPC/ゲーム機でも鳴らせるようにできるかなあ」と模索してきた末の進歩だったなと…。既にどこかにお手本があって、そのお手本にどうやって近づけるか。そんな流れでコンピュータ関係の音源って発展してきたよなと。

そして、各音源で鳴らす音楽も、既存の音楽にどうやって近づけるか、という志向で作られていって…。すぎやまこういち氏がドラクエにクラシック音楽的な構成を盛り込んだのもそうだろうし、古代祐三氏がベアナックルシリーズにああいう曲調を盛り込んだのもそうだろうし。

そう考えると、電子音楽には派閥が2つあったのではないかと。
  • 新しい楽器なんだから新しい音楽を作らねばなるまいよと、お手本が無いまま試行錯誤していた派。
  • 新しい楽器で既存の音楽にどこまで近づけられるかなと、お手本をチラ見しながら試行錯誤していた派。

ゲーム音楽は圧倒的に後者。そりゃ前者から見たらこんなの評価に値しないと一刀両断されて当然の流れ、だったのかもしれんなと…。

しかし、世間にウケるのはどちらかというと、これは後者だろうなと。前者はちょっと理解するのが難しい…。

このあたり、ダウンダウンの松本氏が昔語ってたらしい話を ―― 「笑いの肝は飛躍」という説が思い浮かんだりもするのです。

落語家や漫才師が喋ってる内容に飛躍があった時に笑いは生じるけれど、あまりに飛躍し過ぎると客がついてこれなくて笑いが取れない。かといって飛躍が足りないとこれも笑いが取れない。前後とちゃんと繋がっていて、たしかに客側でも予測はできるんだけど、フツーはそんなところに繋げないよ、といういい塩梅で飛躍できた時に笑いが取れるんだ、という話らしいのですが。

音楽も同じかもしれない。黛氏の作った3曲は明らかに飛躍があってスゴイのだけど、あまりに飛躍し過ぎていて大衆はちょっとついていけない感じがする。だけどすぎやまこういち氏は既存の音楽の延長線上を感じさせていくれる実にいいバランスの飛躍に留めていたから大衆に受け入れられた。そんな状況だったりしないかと…。

斬新過ぎたらウケない。けれど新規性が何もなかったらそれもやっぱりウケない。新しいけど新しくない。新しくないけど新しい。そのバランスが大事なのかもしれんなあ、みたいな。

でもまあ、こういうのって「商品として作るなら」という話に過ぎないけれど…。これはあくまで作品なんや、商品としては全然考えてない、ウケるとかウケないとか関係ない、ということならいくらでも飛躍しちゃっていいよな…。

余談。CGも同じ部分がありそう。CG創成期は「フラクタル理論を用いてこんな映像を作ってみました」とカラフルなスライムもどきがウネウネと動く感じの斬新な映像が発表されたりしていたけれど、今現在は映画のVFXに代表されるように、現実世界にありそうな風景をここまで再現できるようになりましたよ、という流れが主流で…。どちらも現実世界には存在しない光景を描いているけれど、お手本がどこにもない映像と、お手本が既にある映像と、一体どっちを目指すのか、みたいな。

お手本が無いとどこを目指せばいいのかそもそも分からないし、お手本があったらあったで成果物との差異が気になって仕方ない。どっちもそれなりに苦労があるのは同じだし、どちらが正解というわけでもないですが。

翻訳作業も大事 :

あっちの畑では既に山ほどあるけれどこっちの畑にはまだ全然無いな、ちょっとこっちにも持ってきてみよう、さてどうなるかな、という事例って結構あるように思っていて、自分はそれを「翻訳作業」と呼んでたりするのですが…。

  • 漫画に悲劇を持ち込んだ手塚治虫先生。
  • 漫画に詩的表現を持ち込んだ石ノ森章太郎先生。
  • 児童漫画にSFを持ち込んだ藤子不二雄F先生。
  • ロボットアニメにリアリティを持ち込んだ富野監督。

他にも色々あるけれど、別の畑にあった何かしらをこっちの畑でも使えるように翻訳することで、こっちの畑の幅が広がるというか、豊かになるというか。そのうちあっちもこっちから何か持っていったりして、そうやって色んな畑がどんどん豊かになっていく…。

口の悪い人なら「なんだソレ只のパクリじゃん」と言い出すだろうけど。ソレ、ちょっと違うんだよな…。まず、「あっちの畑にはあるけどこっちにはねえな?」と気づけないとそもそもパクることすらできない。そして気づくためには、あっちの畑のこともそこそこ知ってないといけない。こっちの畑のことだけ知っててもダメなのです。

手塚先生が「漫画家になりたいならジャンルを問わず色んな作品に触れなさい」と言ってたのもそうだろうし、富野監督が「アニメばかり見るな!」と言ってるのもそうだろうけど。あっちの畑のことも少しは知らないと、そもそも何を翻訳できそうなのか気づくことすらできない。こっちの畑で延々とコピーを繰り返していても、歪さだけがどんどん育ってしまう…。

そしてゲーム音楽って、いや、音楽に限らずゲーム自体がとにかく翻訳しまくりで…。

  • アニメみたいな映像をPCゲームでも再現できないものかとスクウェアは「クルーズチェイサー ブラスティー」を作ったりしていたし。
  • PCゲームとして流行ってたRPGをファミコンに持ち込めないものかと「ドラクエ」「FF」が作られたし。
  • 少年漫画内で発生する異性との各種イベントを疑似体験できないものかと「ときメモ」が作られたし。

ゲームに詳しい人ならいくらでもそういう事例をリストアップできるだろうけど、そうこうしてるうちにゲームで表現できる幅がどんどん広がっていったところはあるよなと…。

黛敏郎氏は、ゲームという畑のことを何も知らなかったのかもしれない、という気はする…。当時、小説や漫画や映画にはあるけれどゲームにはまだ無かったものがたくさんあって、ドラクエのストーリーも、ドラクエの音楽も、ゲームという畑に翻訳してきたわけだけど。ゲームの世界にはまだそれがないということを知らずに「こんなもの、あっちの畑にもうあるじゃねえか」と言ってただけ、かもしれんなと…。

いや、自分だって氏がどんな人物だったのかほとんど知らないので、これまた頓珍漢なことを邪推してる可能性も高いのだけど。あっちの畑(現代音楽畑/電子音楽畑)の視点からなら納得の発言なのかなあ。自分はあっちの畑のことを全然知らないから…。そのへん解説できるのは、電子音楽とゲーム音楽、両方の畑に詳しい人じゃないと難しいのだろうな。

ゲーム音楽って電子音楽なんだろうか :

さておき。ゲーム音楽って、電子音楽なんだろうか…?

電子技術の塊から音が鳴ってるから当然電子音楽だろと言われそうだけど、個人的にはあまり意識した記憶が無い…。PCにしろ、ゲーム機にしろ、楽器の一種と呼べなくもないかなあ、とは思うけど…。

そもそも今現在、クラシックをやってる方や生楽器を演奏してる方は別にして、大半の音楽はコンピュータや電子楽器で作ってるのだから、世の中にある大半の音楽は電子音楽になってしまっているのではないか…。こんな状態で、これは電子音楽、これは電子音楽ではないと分類する行為に意味はあるんだろうか。いや、1990年頃なら意味があったかもしれんけど…。

このあたり、SF作品に含まれていた要素が色んなジャンルに浸透していって、もはやSFというジャンルが空気のようになったソレと近いものを感じる。新海誠監督作品やガルパンを見て「ああ、SFアニメだなあ」と思う人なんてほとんど居ないんじゃないかと思うけど、電子音楽というジャンル分けも似たようなものだったりしないか。

それとも、特撮とVFXは違うよ、全然違うよ、みたいな感じで、電子音楽の定義は非常に狭いものになってたりするんだろうか…。よくわからん…。

思考メモです。オチは無いです。

*1: 正確には、ファミコンの音源は正弦波とノコギリ波を出せないのだけど、三角波が出せるから、まあ似たようなものと思ってしまってもいいんじゃないかと…。いや、微妙に音の感じは違うし、今現在の「微妙」って当時なら「劇的」な違いなのだけど、それはさておき。

以上、1 日分です。

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