《5月16日(木)》
フラッシュたかなきゃ良かったわ……
コース:清水寺→三年坂→八坂公園(八坂神社)→下鴨神社→河合神社→加茂みたらし本舗→上賀茂神社→風俗博物館→東本願寺
本日は本来ならば、三尾に赴く予定でした。しかし、昨日の天気予報によると、16日は雨、17日には上がる、という予報。ならばという事で、17日の予定と交換して、洛中を回ってみる事にしました(厳密には洛中ではないけど…)。
朝早く行けばOKかな、と思い、急遽清水寺に行く事に。バスで最寄の停留所まで行き、そぼ降る雨の中、寺の方へ向かって行くと……そこには見渡すばかり制服の群れ。そう、旅行生(勿論中坊)の群れだ。しかも団体行動。それが何校もまさに芋洗いの如く屯っている。…まだ8時半なんですけど…。
迂闊でした。清水寺は6時半開門、旅行生は8時には行動が始まっている。もはや静寂な環境など何処にも無い。ただひたすら連中の間を縫って、資料写真を撮る羽目に。というか、あの〜、舞台、行けないんですけど……。前方に傾斜している有名な清水の舞台は中坊たちに占拠され、写真を撮るどころか、立錐の余地も無い。続々と次の学校が押し寄せてくる。……学校側、一般参拝客の事も考えて、回る所決めろよ……(-_-メ)。果たして中坊に寺の良し悪しが解るんだろうか、単にどっか山奥で合宿するだけでいいやん、と思ってしまいました。大体、ガイドさんに聞いた話なんて、私ゃ覚えてないよ?学校で調べ物してた方が余程覚えるって。実際舞台の上の連中、堂内のご本尊さま完全無視。おいおい。……当時は私もそうだったのかな……。
とにかくも、間をすり抜けながら、錦雲渓を見にぐるっと廻遊。途中、ガイドさんの話の途中で地主神社へ駆けて行こうとする小娘どもに道を遮られる。だーかーらー、ここは寺なんだってば!!……ったく。前回来た際に見た、人気の無い所にある三重塔(子安塔)が良いんである。近くに墓地があるんでちょっと不気味かも、だが。この辺から錦雲渓を見ると、ああ、楓が綺麗……。思わず撮影。少し行くとあら、お稲荷様。う〜ん、やっぱりバリバリ緊張する……。軽く会釈をしながら音羽の滝方向へ。頭の中には『遥か1』の某坊さんキャラを浮かべつつ、行ってみると。はい、もうお判りですね。中坊が反対側の階段からズラーッと並んでおりますがね。音羽の滝の水に触れる余地などありゃしません。駄目だこりゃ……。些か軽くない失望と共にその場を去りました。
「これで私悟ったよ。清水に来る時は、朝一、6時半で来なくては駄目だとね!!」
「低血圧のあんたが出来る訳無いじゃないの」
「でもさ、この集団に押されて心残りが幾つか出来たものだからね。次回こそは連中を出し抜いてやるわ!」
「心残りって?」
「一つは濡れ手観音を拝めなかった事。一つは本坊側まで見られなかった事。最後は『久遠』の構図が見つけられなかった事。最後のはやっぱり一人なら探せたんだけどって事で。アテルイ(←漢字が出ない)の碑は見たけど。ちょっと粛然としてしまいました」
「たまには殊勝な気分になる事があるのね。それにしても最後の心残り、情けないわ」
「ところで、この清水の南西、何があると思う?」
「鳥辺野だな。化野・蓮台野と並ぶ三大風葬地。今は寺院が存在している墓地だな」
「お墓!?もしかしてそこも見てきた訳?」
「端の方をチラッとね。清水寺の墓地かも知れないけど。『久遠』で出てきたから少し検証してみたかったのはある。でも、中坊がワラワラやってる脇で、こういう言わば影・陰の部分を見て置くのも大事なんじゃないかって思って。不謹慎かも知れないけど、こういう物を見て、思いを巡らすという事、その方が現代の人間に余程必要な事なんじゃないか、って思った。広島の様に、目に見えるものだけが悲劇の現場じゃないんだよって」
「なかなか深く思索してきた訳だ」
「へへ、たまにはね」
「自分で突っ込んでどーする」
次の目的地へ三年坂経由で歩く。産寧坂とも言うこの道、何でこんな由来がついたのかしら。死ぬときゃ死ぬのよ、転んだだけでもね(←ちょっと厭世的)。時間的にお店が開いて無かったりで、ちょっと撮りそびれ。中坊は邪魔だし(旅行中はこれに尽きる)。青龍苑で寄り道。この青龍苑、名前もそそるが、奥まった庭園がいい感じ。お嬢ちゃんたち、物欲ばっか満たさないで、こっちも御覧なさいって。
てれてれ進んで、高台寺の脇を通り、八坂公園方向へ。この辺りで人力車の兄ちゃんにナンパされる。兄ちゃん、人を見て声をおかけよ。あたしゃこれでもサービス業をやってたからね、笑顔を売る商売の苦痛ってのを感じながらゆったり牽き車に乗ってられる程神経図太くないんだよ、……って、単に余計な出費は御免なだけ。確かに若い美丈夫が汗流しながら労働してるのって、なかなかセクシーですけれど(^_^;)。でもやっぱりお断り。しつこいぞ、にーちゃん。
八坂公園を抜けて八坂神社、通称祇園さんへ。特に用も無いので素通りして来たけど、結構人はおりました。こういう地元民に馴染んでる神社ってのは良いもんだね。コミュニティーだもんね。今は少なくなっちゃったけどさ。そんで、祇園のバス停に着く。ここから下鴨神社にレッツラゴーさ。
下鴨神社に到着すると、あぁ〜、やっぱり糺の森、好き〜。この静寂さ、静謐さ。そして深い神妙さ。ここに来ると本当に心が洗われる気がする〜。……母さっさか進み過ぎ。背景用写真を数枚撮って、本殿の方へ。葵祭は昨日だったのに、すっかり静かなもんだ。参拝客・観光客はいたけどね。御手洗神事を行う辺りは母のカメラに任せ、舞殿と楼門だけを撮影。本当は、有料ゾーンの大炊殿付近を撮りたかったんだけど、同時に入った年配のご夫婦の奥様の方がやったらトロトロしてるもんだから、撮るに撮れなかったのだ。旦那様の方は前に進んじゃって、フレーム内に入ってるし、思い切り挟まれちゃって、タイミングを逃してしまったさ。プンプン。
「因みにこのご夫婦、何気に上流な雰囲気を漂わせてて、昨日の祭でも社頭の儀をご観覧になったんだそうだ。4千円の観覧席だよ。あーもう、お金があって、羨ましいこってすね!」
「僻むなってーの。全く、何もしないくせにプライドだけは人一倍なんだから」
「でもこの奥さん、ちょっと待て、という箇所があった。60歳台くらいの人なんだけどね」
「旦那さんを『パパ』って呼んでたんだよな」
「……パパ……」
「『パパ』はないでしょ『パパ』は。せめて名前で呼ぶとかさ〜、勘弁してよ、とか思っちゃった」
「……何となくニセ上流階級、という感じがしないでもないわね……『パパ』は」
その後摂社の河合神社に行き、鴨長明が使ってたと言われる方丈を見る。要は組み立て式の庵だな。大きさ自体は小ぢんまりした物だけど、これを荷車に積んで移動したのかと思うと、ちょっと驚き。だって組み立て式に見えないんだもん。それともこれは複製か?(その方が可能性大)
用は済んだとばかりに、境内を出て、加茂みたらし茶屋に入って休息。5年前は間違って製造所の方に行っちゃったんだよなぁ、と回想しつつ、団子を頬張る私。焼き加減がよろしいわ。客層は若いお嬢ちゃん・お姉ちゃんが大半。たまにオクサマ系。熱々の団子はやはりみたらしですなぁ。いや、こし餡も好きだけども。
中途半端な時間分を歩き、上賀茂神社へ向かう。バスはかの深泥ヶ池近くを通る路線なので、ちょっと見えないもんかと期待したが、ええ、全然見えませんでしたとも(~_~;)。でも周りの状況はチェック。小高い丘(山?)に囲まれてた感じでした。
府立植物園や賀茂川を遠目に見つつ、上賀茂神社に到着。……なんでだろう、雰囲気が荒んでたかも知れない。と言うより私の気分が荒れていたんだろう、色々精神的にすっきりしなかったな。天気も曇ってたし。何はともあれ、数枚写真を撮って、止めに厄除けのお守りを購入。ここの祭神は賀茂別雷神、厄除けで有名な神様だ。雷は破邪の力があるからな…というのは前にも書いたか。布都御魂剣と賀茂別雷神、これ以上強力な厄除けコンビも無かろうて。……火迦具土神が足りませんわね。こちらの神様にもいずれお越し願いましょう。上賀茂神社といえば、神籬の白砂。売ってましたが、流石に買いませんでした。
「この旅行記を書いている時期、深夜に目が覚めて、金縛りを自覚した事があったのですが」
「疲れのせいじゃない?何でも霊障にするのはどうかと思うんだけど」
「うん、多分に疲れが来てるんだと思うんだけど、『ああ、なるなる!』っていう自覚あり、だったの。でもね、お守りの事思い浮かべたら、すぐに解けてきたの。疲れにしろ、霊障にしろ、お守りがあるっていう精神的安心度のおかげかなって思った。だからありがとうございました、布都御魂さま、賀茂別雷神さま」
「前にも言ったろう?強い信心、結局は自分の強い精神力があれば、大抵の厄は祓えるって」
「その後、両手にお守りそれぞれかけながら寝ました。『我が右手に布都御魂、我が左手に賀茂別雷神。見えざる破邪の雷によって、我、数多の邪霊により害される事能わず!』とか唱えて、小さく拍手打ってね。あ、これ、話の中で使えそうじゃない?」
「……タダでは起きない子って言うべき?というより、かぶれ過ぎ」
「これぐらいの方が妙なものを寄せ付けないよ。私は良いと思うけど?ただ、くれぐれも中途半端にオカルトに足を突っ込まないようにね。それが一番怖いから。色々な意味でね」
「は、畏まりまして」
上賀茂の地を去り、バスでひたすら堀川通を南下、西本願寺前まで向かう。その途中かの一条戻り橋を発見(て事はその北西に晴明神社もあったんだよな。それっぽいのはあったけど、見逃しちゃった)。乗り合わせたお嬢ちゃんたちもなにやら騒いでいたような。特に思い入れも無いんだけどね、実は。それよりは右手に見えた二条城の方が気になって。この敷地がかつての神泉苑だったんだなあ、と思うと妙に感慨深い物があり、そのスケールを心の中で推し量る。……駄目だ、『遥か』のシーンが頭から離れてない。因みに母は隣でぐーすか居眠りしてました。……だから疲れてるならホテルで休んでていいのに……。
西本願寺前バス停に着いて、早速北東方向にある風俗博物館へ。(西本願寺はなにやら修復工事してました。)さっさと5階にズココと昇り、入館料を払って撮影開始(こら)。前回、模型展示フロアも撮影OKだと思わず、体験室だけで帰って来てしまったので、ここぞとばかりに撮りまくる。しかしここで私、またもポカ。フラッシュをオートでバシバシ光らせてしまいました。何がまずかったかって?あの橙色の照明だからこそ、あの雅さは際立つんですヨ。フラッシュで原色出しちゃうと……ただの人形だわ(-_-;)。次回に行くまでに、フラッシュの消し方をマスターしとかなくちゃ……って、マニュアル何処にやったんだ私は。
相変わらずの雅空間だったのは良いけど、二度目のせいか、はたまた同行者がテンション低かったせいか、どうにも盛り上がりに欠けたまま、場を去る。あ、でも物販見たかったんですけど、母上……。それはそうと、丁度入れ違いで、年配の団体客が大挙して入館待ちしていた。ヤバイヤバイ、間一髪。っていうか、何であんなに人が来るんだ?ここは少人数で来るべき場所だと思うんだが……面積的に。
その後時間があったので、東本願寺に立ち寄ってみる。雨はとうにほぼ止んでるので、結構楽。先月撮り損ねた『久遠』構図を撮影しようかな、と目論んでいたのだが、丁度撮影ポイントに予備校生が群がってて、断念(東本願寺のすぐ北側が代ゼミなのだ。丁度講義が終わった時間だったらしい)。
東本願寺は……デカイっすね、やっぱ。どうもあまり好みでない。という事で、フィルムも惜しいんでさっさと切り上げてきちゃった。
翌日は三尾方向に赴く為、今日は早めに休みましょう。
「で、早目?に帰って来たんだけれど、なんだか雲行きが怪しいのよね…」
「天気予報を見ると、見事な雲の帯がかかっていてね。不安になったよ。何しろ例の石段を登らなきゃいけないんだからね」
「例の石段というと、どれどれ……350段?これはまた、よく数えたものだわね。西寺〜東寺間を数える人間もどうかと思うけど」
「茶化しどころでは無いのよ。滑って転んでアタタな事になったら困るでしょうが。こんな事なら予定通り、16日に三尾行くべきだったかも、と思ったもの。マジで」
「って言う事は、雨に降られちゃった訳なのね?」
「その事については、次の日に」
(つづく)
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