《5月15日(水)》
案外あっけないもんでした
 コース:京都御苑(葵祭)→慈照寺(銀閣寺)→大豊神社→平安神宮→京都市勧業館(みやこめっせ)→京都文化博物館

 本日のメインイベント、それは葵祭の行列見物!これはもう数年前からずっと見たい〜、と思っていたもの。この時期に旅行を設定したのも、これの為!天候は曇り空でやや気になるものの、午前中は保つだろう、って言う訳で、開始時間よりも大分早くホテルを出ましたです。無料観覧場所の一番前を場所取りするのが目的。結構な人が御苑に向かってました。

 御苑について、場所取りをする前に、念の為有料観覧席の当日券売場に行ってみる。有料観覧席は建礼門に近い方から占められていて、ブロック毎に紅白の垂れ幕の中にパイプ椅子を隙間無く敷き詰めて、指定席という形で設営してある。聞くと、5列ある中3列目までは既に完売、4・5列目の席しか残ってない。ブロック自体、建礼門から遠い方向しか空いてない。だったら無料観覧席の一番前の方がいいかな、とか思っていたのだが……ここで母、よく座席設定などを理解しないままに指定席券を二枚購入。……ちょっと待て、こら。ブロック云々も解ってないのに勝手に買うなってば。案の定、母、これが指定席券だという事を理解していなかった……。もう遅いです……。仕方なく場所が判ってない母を引っ張って、席へ移動。ああ、やっぱり見難い。人が詰まると立たない限り行列見えませんよ、もう。母は「立って待ってるよりはいいでしょ」とおっしゃって着座。そういう問題じゃないんだってば、と母を詰る私。何だって朝っぱらからこんなにささくれた気分にならなきゃいけないの…。


「尤も、後ろに誰も座ってなくて、椅子の上に立って写真取れたから結果オーライなんだけどね」
「なんて娘だ」
「でも座席の値段設定は難ありだな。一律2千円だったんだが、1列目と5列目が同じ金額、というのは不公平だと思ったよ」
「同感。5列目を少なくして、1列目を高くする。たとえば前から3千・2千5百・2千・1千5百・1千、とかね。あ、因みに下鴨神社で行う社頭の儀だけど、観覧料4千円だってさ」
「……宗教行事はお金がかかるわね。それを妥当と見るか否かは人それぞれだけど……。伝統を守るには仕方ないって事なのかしら」


 ともあれ行列開始。大分間隔が空いたスローペースで進むものだから、何となく間抜けた感じがしてしまって、こんなもんですかのぅ、なぞ思ってしまったのが正直な所。衣裳もね、着古してるような感じで、今一つ決まらなかった気が。勿論写真は撮ってましたが、茶髪と有識衣裳は合わないなー、とか、垂れ幕くぐって写真撮影の為に路端にはみ出してるオッサンオバサンが醜いなー、とか、おおっと馬が興奮して泡吹いてんぞー、とか、なんだか雅とは関係ない事ばかり考えてました。

 これ、周りが皆時代衣裳来て観覧してればもっと雰囲気あったんだろうね。うん、こんなもんか、でした。美人さんいなかったし(←そこかい)。パンフレットを見るに、どうやら下鴨神社の社頭の儀の方が、私好みかも知れませんねぇ。次はそっちを見るぞ!良かったのは、平日の為学生や社会人が少なかったって事でした。次回までに望遠レンズの使い方をマスターしよう、と軽く決意。

 皆が祭に注目しているだろうと踏んで、そこから慈照寺に向かう事にする。途中、行列に引っかかり、道が渡れなかったりもしたが(あれだよなー、今日日祭って、都市社会では難しい行事だよ、ホント)、無事到着。しかしここで降雨開始。あーあ、とうとう降って来ちゃった。『久遠』のシーン検証をしつつ、境内を歩く。こら、どっかの教師、人が銀閣撮る為に順番待ってるのに、割り込みしてフレーム内に入ってくるんじゃない!全く、こんな他者に気を配れない奴が教師かと思うと……ブチブチ。折角綺麗な庭なんですから、と気を取り直して境内の写真撮影。ここはさすがに旅行生(やっぱ中坊)が多い。それっぽい箇所をチェックして退散。

 その次は、私の希望で大豊神社に向かう。哲学の道を歩くも、母、既にやる気なし。疲れてるんだったらホテル帰って休んでていいのに……そうすりゃ少しは鼻息も静かになるだろうに……。

 途中法然院や安楽寺(ここは通常は拝観不可。7/25と春秋の一時期のみ一般公開)を横目に見ながら、大豊神社到着。早速『はるときスタンプラリー会場はこちらです』なんて看板や張り紙がある。……恥ずかしいんですケド……。とりあえず境内へ。隣が女子高の為騒がしいが、境内自体は静寂。人っ子一人いやしねぇ。かなり古さを感じさせるオーラがありました。さて、こまねずみ、こまねずみ、と。あったあった。摂社の方です。祭神は何だろう…?縁結び、と書いてあるようだが…て事は大國主神かな?でも七福神ともある…なんだろう?まぁいいや、こまねずみ可愛いから(^.^)。


「本当はここで土鈴欲しかったんだけどね、いちいち社務所に声かけるのが面倒でやめました。スタンプラリーの方は詩紋だったから、論外。欲しかねーよ、こんなの、とか思って帰ってきた(ヒデェ)」
「でも一人だったら土鈴買った……とか言うんでしょ」
「う、図星。そうだね、同士と一緒だったら買ったかも知れないねぇ。ご想像にお任せするよ、フフ」
「フフ、じゃないでしょ」


 さて、またも歩いて今度は平安神宮。平安遷都1100年記念に造営されたでっかい神社……と言っていいのか判らなくなってきたな、ここはもう。拝殿は大極殿の8分の5スケール。それでも大きいですねぇ。ここも観光客・旅行生多数(もはや中坊以外見かけない。ちっ)。丁度右近の橘が咲いていて、薫りに酔わされてしまいました。柑橘類の薫りは落ち着くなぁ。桓武天皇と孝明天皇が祭神だが、私は祖先神・祖霊神に対する崇拝信仰心は乏しいので、国家安泰だけをお祈りしました。(それもなんだかな。)本殿の写真を撮りたかったな。殿舎内は撮影禁止だからね。案外廻廊が短くて、望んだパースが撮れず、残念。

 神苑に入ると、見事なまでの枝垂桜の群れ。但し葉桜。平安神宮は桜の名所だから、見頃はさぞ素晴らしかろうて。人も一杯来るけどさ…。何気に前にいる三人組(父・母・娘?見ようによっては姑・オッサン・その愛人)が邪魔。中途半端に付かず離れずでフレームに乱入。遠方で入るのは許せるんだけど、女の服が派手すぎて、状況と合わないんだな。同じペースで進もうとする母を押しとどめ、何とか上手くやり過ごす……がやはりまたも遭遇。腹が立ったので、別ルートから連中を抜かす。やっぱり朝一で来ないと人気のない写真って取れないんですね……。中坊達も何気に邪魔だったりして、やれやれな心境だ。雨が降りしきる中、植栽の剪定をしていらした造園業者の方、お疲れ様でございます。つーか母、仕事の邪魔になるから声かけるの止めなよ。この神苑は面積も広く、造りも風情があるので、お勧め。霧雨の日に行くと尚良いかも。緑が深くて。

 しばし池に懸かる橋の上で休んだ後、移動。京都市勧業館、通称みやこめっせに寄って、地下一階にある京都伝統産業ふれあい館を見て回る。外人さんばかりだったな、ここ。でも、京都の伝統を手っ取り早くかつ一括して見るには、ここはお勧め。タダだしね。それから階上のレストランで遅い昼食を食べて、次なる場所へ向かうのでした。


「何かさ、今回の旅行では麺類をよく食べたような気がするですよ」
「そういえばそうだね。外食した内、4・5回は麺類だったと思う。このみやこめっせでも、うどんだったな」
「食事といえば、朝食・夕食はどうしてたの?」
「えーと、朝はホテルのバイキング、夜はデパ地下やコンビニで買い込んで、部屋で食べてた。一回くらいは外食で、とか考えてたんだけど、ほら、京料理のお店って価格が高いじゃないさ。それで、母が外食じゃなくていいって言い出して。今回の旅行、ガイド代として、食費は母持ちだったからね。気持ちは解る。でも自腹切ってでも、一回位は夕飯を外食で取りたかったな。京料理でなければ、普通の値段で食べられる所多いのに」
「それを言ったら、無駄だったのはホテルの朝食だね。それこそコンビニで買っておけば、一人1,200〜1,300円もかかる事はなかったのに、朝食のバイキングでは元も取れない。この辺は勉強になったな」
「まったくだ。安く上げたきゃ素泊まり!これに尽きますね」


 本日のラストは、京都文化博物館。かつて平安博物館と称していた。清涼殿のレプリカとかが置いてあったそうだが、「学術的価値が無い為、解体しました。」なんて事になってしまい、今は一体何があるやら……と思っていたりしつつ、入場。ここは夜7時半までやっているのだが、4時頃行って……既に人気が少ないなぁ。ま、平日だしね。別館が旧日銀京都支店の建物で、あの辰野金吾氏の設計。明治のモダンぶりを今に伝える、重厚で素晴らしい建物です。そういえば高倉通を挟んで建っている中京郵便局の建物もレトロ系だったな。別館の展示は、江戸の嗜好品民具・平安京期の出土瓦・石器時代の打製石器なんかでした。

 本館に戻り、二階に行くと、おや、これはまた現代的なつくり。京都の変遷を写真をおって解説したり(巨椋池の事が印象に残った)、ジオラマ展示をしたり、十二単を展示したり、人の興味を引きやすい、言ってみれば派手な展示をしてたと思います。シックな中にも派手な素材が多かったし、現代のアーティストの作品も各所にコラボレートしていたし。遷都1,200年記念で作った羅城門模型や法勝寺八角堂の模型が流石に見事。絵巻を元にした町人生活のジオラマなんか、よく出来てて欲しくなっちゃった。でも、お目当てのあれはなかったんだよね。平安京模型。


「内国勧業博覧会の敷地模型はあったんだけどねぇ」
「平安京の模型って、京都市歴史博物館に保管される、とか言ってたんじゃなかった?」
「だったっけ。でもあれまだ出来てないでしょ。だからそれまではここにあるんじゃないかなって思ってたんだよねぇ。洛北方面が、持ってる書籍じゃ掴みきれないから、実物で見てみたかったんだけどな」
「今回の検証旅行、そういう事が多かったね。次回までに現在保管されている場所を調べておくなり、場合によっては博物館に問い合わせてみるなりすればいいし、今回は見送ったらどうだい?何しろ奈良編の問題が先だろう?」
「……あぁ、そうなんだよねぇ……」
「そうそう一石何鳥にもなりゃしないわよ」

「で、後日この模型の事を調べたんだけど」
「どうなってた?」
「ネットではページが消えてて判らなかったんだけど、どうやら、ほとんど『お蔵入り』になってるようです……」
「……勿体無い」
「御所近くの歴史資料館に置いてあって、一応たま〜に展示してるそうなんだけどね。ちょっとそこまでは旅行前に調べつかなかったよ」


 やや傷心の体を引きずり、折角だからと上の階まで行ってみた。この時池田満寿夫展をやっていたが、どうやら本日は休み。現代の版画・現代の竹細工を展示していた。現代って言っても、私が生まれた頃のなんですが……。版画でここまで表現できる、というのに驚き。竹細工の細かさ、美しさに驚き。いや、芸術って、奥深いものですねぇ。えせ芸術好きの私はすごすごと作品の前を去って参りましたです。

 といったところで、今日の予定は終わり。なかなか充実していますでしょ?


「博物館からホテルまでは、10分かからない距離だしね。寄り道してご飯買って帰りました。雨が降って疲れちゃった」
「雨に降られると、行動が制約されるものね。その疲れは解るわ」
「この賀茂の祭の時期は、どうも雨に降られやすいそうだよ。祭自体、雨のせいで午後の行列が中止になったらしい。勅旨や斎王代は車で上賀茂神社に向かったという話だ。平安時代は旧暦で、丁度梅雨にあたる時期だから、もしかすると結構ずぶぬれになって行列が行き交っていたのかも知れないな」
「そう考えると雅どころじゃないんですケド。足元泥だらけな訳でしょ?」
「いくらなんでもその時は行列は無かったんじゃあ…」
「それはどうなんだろうね。ところでこの天候、後々スケジュールに支障を来す事になったんだ」
「そうそう。あれには参りましたのよ」
「?」


(つづく)


 
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