《5月10日(金)》
 色とりどりの傘に埋もれ 我 世の絶望を見る(オーバーだなぁ)

  コース:京都駅→奈良駅→春日大社(神苑→宝物殿→本殿)→手向山八幡宮→東大寺(二月堂→正倉院→戒壇院→大仏殿→南大門)→奈良国立博物館→興福寺→ホテル(三井ガーデンホテル奈良) 

  京都に着いてバスを降りると、雨が降っておりました……。豪雨とか土砂降りではないものの、どっちにしても先行き不安になってしまう、陰鬱な雨。くそう、これから奈良まで巨大な荷を持って行かねばならんと言うに。巨大な荷、それはこの場合、自らのトランク及び、傍らに立つ母の事である。

 何はともあれ、母を連れてお手洗いへ身繕いしに向かう。先だって来た際に使ったポイント。流石に6時を廻るか否かの時間では、清掃のおじさん以外人の姿は殆ど無い。…ん?おじさん、女子トイレの清掃員ですか?

 それはともかく、身繕いの済んだ母娘は、各自重い荷物を引っ提げて、JR奈良線のホームに向かう。と、母、とにかくサッサカ行きたがる。ここで注意しておきたいのは、我が母は、方向音痴で、且つ地図が読めない女である、という事だ。目的地も解らないのに、ひたすら前に出たがる。で、迷う。今回の旅行は私は一人で来る筈だったのだが、母も行きたいというので、それなりのガイド料を貰って連れ立ってくる事になったのだ。(というより、ガイド料も無しでこの人のガイドをするのは非常に労苦である、と言わせて頂きたい。)この初っ端からずんずん歩こうとする彼女の姿を見て、私は更に不安になった。……陽の気ではなく、陰の気を補充して帰宅する羽目になるんじゃあ…。

 尤もそれは旅行中、全く杞憂では無かったりしたのだが。
 
 
「こーの親不孝もん」
「あの人のガイドやれば解るよ……。私絶対ツアコンにはなれない、てゆーか、なりたくないって思うもの…」
「実際道が判らなくても突き進むからな、あの人は。小宮も2・3日でキレてたな。どちらも相当のマイペース、やはり親子か、と思ったよ」
「好きに言って。何と言われても私もう母上と二人旅なんてしないから!!」
「「あ、キレた」」
 
 
 階段を上り下りし、やっとの思いで奈良線の列車に乗り込み、座って人心地。しかし、私のトランク、今回の旅の為に購入してもらったものだが、4つ足キャスターで便利かと思いきや、固定できないので転がる。その為両足で固定する事に。うぬぅ、このポ−ズで奈良まで1時間強は辛いな。雨足は時を追う毎に確かなものに変わっていき、開いたドアから流れ込む空気は肌寒い。いや、朝だし寒くて当然なんだけど、盆地だし。道中駅名にちなんだ薀蓄を母に語るが、聞いちゃいない。……そういう人ですね、アナタは。

 途中古墳の濠なんかを見ながら、奈良に到着。……なんだか結構小さいなぁ、奈良駅。世界遺産に登録されてるんだから、もう少しスケールでかくても、と思ったな。この時点で、まだ時間は8時前後。母の提案で、ホテルに先に荷物を預ける事に。ホテルは駅を出てすぐ。かなり巨大な建物で、ちょっとびっくり。だって、周りがあまりにしょぼい建物ばっかでさ……。3階にあるフロントで荷物を預かってもらって身が軽くなった処で、さあ、朝食を摂らねば。駅前の24時間営業のうどん屋で月見うどんを注文。やっぱり関西だから薄味?満腹になった処で、行動開始だ。

 今日の目的地は、奈良公園。修学旅行のシーン用の背景・資料写真を撮るのだ。マイカメラを抱え、サックサックと歩く。(因みにこのカメラ、前回の旅でしょっちゅう叩いて使ってた、例のカメラだ。今回も、ああ、叩きまくったさ!)
まずは春日大社にGO。猿沢の池の脇を通り、菊水楼なる高級旅館を見ながら、一の鳥居へと赴く。それにしても……人いないなぁ……。時間が早いのと雨が降っているのとで、ほぼ貸し切り状態の参道。多い筈の鹿すら見えんぞ、オイ。少し歩くと鹿苑があったんで、其処にいたが。神苑経由で本殿まで行きますか、という事で、入園料を払って、神苑へ。  

 ここは以前某HPで、なんかたいした事無いってあったんで期待しては無かったのですけどね。実際前半は、うん、ま、言ってみればウチの近くでも見られる雑草や園芸植物が植わってます、という感じ。菖蒲だか杜若は見頃位だったが。でもこの神苑、藤と椿がすごい。どっちも時期ずれてて、花は拝めなかったんだけどさ、ぜひコレは花の季節に見たい!!というぐらい、多かったです。藤と椿。白藤は申し訳程度に残ってたけどね。流石は藤原氏の氏神社。砂摺りの藤も、花梗と葉っぱは見られました(^_^;)。

 神苑を出て、宝物殿に入ってみる。この時は若宮神社の遷宮絡みで、古神宝の展示をやってました。主に刀剣やら弓やらに見入っていた気がするですね……。銀で作ったチビ鶴とかも良かったな。

 本殿に向かうと、……げげげ、修学旅行のお子ちゃまの群れが。もうそんな時間かよ、と思いつつ、お参りをしましたよ。今回の旅行、基本的にあまりお願いってしなかったかも。それは欲が無いんじゃなくて、単に2拝2拍1拝に拘って気が廻らなかっただけだと思うが……それもどーよ、私。騒がしくなってきた本殿を後に、先程とは別方向に神社を下る私たち。ふと見ると、手水舎と祓戸神社(多分)がある。げ、肝心の禊やってないじゃないの。すると母、「さっきあったよ。」……先に言ってよ……。それにしても、修学旅行の定番とはいえ、小学生や中学生に神社の価値が解るんかね?そう思うほどのお子ちゃま達の群れ。
 
 
「ところで、春日大社の神様って、どなたでしたっけ?」
「建御雷之神だな。武甕槌神、とも書くが。茨城の鹿島神宮から、藤原氏が勧請した。他に経津主神、天児屋根神、比売神が祀られてる」
「日本神話はよく知らないんだけど。勧請って何よ?」
「辞書的には、神様とかの御魂の分霊を他の場所に移して祭祀をするって事。例えて言えば、孫悟空の髪の毛から出来たコピーを一体連れてきて、それを崇めて社を造るって事と同じ……なのかなぁ?(チラリ)」
「まぁ、似たようなものかな。その分霊の大きさに従って、社格も上がる。そういう感じで捉えればいいさ」
  
 
 いかにもな造りの新公会堂脇を通って、奈良公園北側へ。普通とは逆方向に進んできたので、今度は二月堂方向だ。そちらの方向に行くと、まずは手向山八幡宮。宇佐八幡を勧請したもの。この辺りで二人とも疲れてきたので、御茶屋さんで甘味を頂くことに。私は迷わずわらび餅を頼みました。好きなのよ、コレ。悪いね、ルヴァ様、アナタ好みの女じゃなくて(笑)。はぐはぐと餅を頬張る私だが、外、二月堂方向を見ると……修学旅行生の群れ。何となく高校生っぽかったんだけど、みんな私服。今の高校生は制服じゃないのね。制服姿なら、価値が出るのに(何の)とか、資料としてカメラのフレームに入ってきても許せるのにとか、結構悔しかった。おまけに雨でしょ?華やかな傘の群れが、寺社の雰囲気をぶち壊してるのよねぇ。それに、制服姿の女子高校生はみんなルーズソックスだった。元々被写体として人間を入れたがらない私、この後大変腹立てながら撮影に挑む事となる。

 糖分補給も済んで、再び雨の中を強行。お次は二月堂。修二会(お水取り)で有名なあそこ。ここで『久遠』の構図発見。よっしゃ撮るぞ!と構えたが、次から次へと旅行生が登ってって撮れな〜い(泣)。あ、母!さっさと行くな!てゆーかフレームに入るなー!! 泣く泣く色んな点で妥協する羽目になるワタシ…。やっぱ一人で来りゃ良かった…と、1日目にして痛感し始める。

 二月堂からてくてく降りて、次は正倉院の方へ。この途中の道、結構よさ気だったんで、背景として撮影。だが、背後から来た男やら旅行生が邪魔で、上手く構図が決まらなんだ。こんなんばっかし、奈良公園。正倉院外観は、運良く見れました。やはり数人旅行生っぽいのがいたが、課題で仕方なく来てるってのが見え見え。しかも邪魔。(←つくづく身勝手)正倉院、横長でカメラのフレームに納まりゃしない。かといって引くと、注意書きの看板が入っちゃうしね。背景資料としてはいいんだけど、観賞価値が激減するので、あまり入れたくないんだ、こういうの。撮った直後に旅行生の団体が来ちゃったので、その場を退散。やれやれ。

 それから大仏池の方から、戒壇院前経由で大仏殿へ。大仏池は『久遠』でお馴染みのポイントを見たかったのだが、ああ、もう、母!道解らんくせに先行くなっつーのっ!!ここもチェックできずに通過。万事がこの調子だ……。

 大仏殿前に来ると、流石に人が多いのう…というか、この旅行生どもはなんじゃらほい(死語)。丁度お昼時で、本来なら公園で昼食、という処だろうが、今日は雨。みな中門脇の廻廊に座って食事をしている。……確かにね、雨ですよ?大変なのは解りますよ?こんな天気でクサるのは解りましてよ?けれど……その醜さは一体なんですの……。見てると判るが、今の若人たちは大体にして姿勢が甚だしく悪い。そんなのが集団になって、いくら観光地化してるとはいえ寺院のど真ん中で、行儀悪い格好やポーズで集団で屯って、挙句汚く明瞭でない言葉遣いで騒いでごらんなさい。始末に負えない……。なんかもう、嫌になっちゃった。色々とさ。

 嫌になってても仕方ないので、大仏様を拝みに参る。雨が降ってたので、大仏殿前広場の緑が素敵に色づいてて、ちょっと精神力回復。屋内に入って、写真も撮りまくった(…っけ?)。相変わらず、大仏様はでかいのう。でかいのはすごいけど、これの造営の為に酷使され死んでいった存在の事を思うと、うん、やっぱり切ないね…。

 外に出て、それから奈良国立博物館に行く。このとき『東大寺のすべて』という特別展をやっていた。が、私ここで自分があまり仏教好みでない事を悟る。というより、ここまで仏像が揃ってると、食傷気味っていうか……。『信貴山縁起絵巻』とかは結構真面目に見ていたが。つらつらと見て、地下に移動、ここで遅い昼食を摂る。しかもふかひれラーメン。胃腸が弱ってて、しばらく精進モノ系ばかりだったので、ラーメンはきついかな、とも思ったけど、美味しく食べられたです。よしよし。

 ついでにミュージアムショップに立ち寄り、物色。書籍で欲しいのはあったけど、重くなるのは嫌だと思って、諦める。その他のグッズも特に欲しいもの・ピンと来るものは無かったのでここでは購入せず。母はランチョンマットを買っていた。使わないくせに……。

 その後は興福寺の境内を通りつつ、再びホテル方面へ戻る。興福寺では、『般若の芝』という場所で舞台を作ってました。11日・12日は興福寺は薪能を行う日なのです。見られたら見よう、と言ってその場は去り、途中夕飯を確保してホテルにチェックインしに戻りました。


「この段階で16時過ぎかな。雨降ってたせいか、二人とも結構疲れちゃってたねぇ」
「それでなくとも君は体力が無く、しかも人込みに弱いからね」
「にしても、先に大仏殿に廻った方が良かったんじゃないの?」
「うん。それは母とも話したよ。大社の方も人はいたけど、大仏殿ほどじゃないからね。朝イチで大仏殿行くのが正解。朝ですら多いんだから、あそこは。奈良最終日の朝のもう一度行ったんだよ、実は。でも混んでた」
「そういえばそうだね。私は君の思考の方向性に気を取られてたけど」
「?なに考えてたの?」
「いや、中学生ばっかでさ、いくら制服着ててもこの年頃には食指が動かなくて。写真取る気も失せちゃった」
「……………」
「今回の旅行で思ったけど、今や修学旅行で京都・奈良に来る高校って殆ど無いんだねぇ。お話作る時の考慮点、また一つ増えちゃった」


 ホテルに着いて再びフロントへ。今回はネット予約なるものを初めてした物件(?)なので、予約確認メールの写しを出して確認。良かった、大丈夫でした。ホテル自体のネット会員として予約をしたので、少し割安。おまけに部屋も広めの部屋をご用意しましたとのこと。まあ、そんな特典もありますのね。ベルボーイらしきお兄さんに預けた荷を引いてもらい、部屋に案内してもらう。ベルボーイといっても、イメージするよりソフトな格好。しかしなんだか落ち着かんのう、こういうサービスというものは。自分で出来ることは自分でやってしまう(例外多数)私としては、いくらサービス料込みとはいえ、「あ〜、自分で持ちますよぅ、部屋も一人で行けますよぅ」、という感覚なもので。サービスされるのは当たり前、なんてふんぞり返ってられない性分なのです。自分もサービス業してて、その心理が判るからなのかな?

 部屋に着いて、荷物を渡してもらい、中に入る。おお、なかなかコリャいい感じの部屋ですね。広さがあってゆったりしてます。窓からは奈良公園〜若草山なども見えますね。部屋の中も色々探索。あら、この部屋バス・トイレが別々だわ。良かった〜、ユニットだと狭くて大変なんだよね。で、早速寛ぐ母娘。夕飯も食べてお茶飲んで一息入れる。

 なんだか疲れたけど、明日は雨が止むそうだし、予定に備えて早く休みましょう。お休みなさい。
 …………。
 …………。
 …………。
 母よ……。何故そんなに鼻息が五月蝿いんだ……。
 眠れないんだっちゅーの!!!!!


「いやマジで、母の鼻息・鼾はこたえたね。旅行中必ず一晩に2・3回はそれで起きたぞ、もう」
「鼻息って……」
「どうも小宮の母御は鼻詰まりを起こしていてね。しかも寝る前に鼻をかんでくれないものだから、それはもう、ひどかったな」
「10日間で最もストレスだったのは何かって言ったら、真っ先に母の鼻息を挙げるね、あたしゃ。レム睡眠時に鳴り響いてきてごらん。あまりの不快さに目が覚めるから」
「……あんまりそういうのは経験したくないわね。あ、でも、ホテルは割と良かったんでしょ?」
「結構新しめだったしね。綺麗で良かったよ。ただね、お風呂がね」
「お風呂というと、あれかい?」
「そ、あれ」
「あれって何よ」
「湯船の底がね、工事の際の問題だと思うんだけど、浸かろうと思って足を入れてついたら、音したの。
べきっ☆って」
「………………」


(つづく)  


 
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