七・赤染櫻−一
 
「翔クン、最近様子がおかしいわよ?何かあったの?」
 教室移動の途中、廊下で会った雅先生は、少しの間俺の顔をジーっと見ると、おもむろに訊いてきた。
「そう、ですか?春だからボーッとしてるだけかと……」
「ううん。明らかに、春眠暁を覚えずっていう他のコたちとは違うのよ。嵯峨先生もそう思いませんか?」
 雅先生が同意を求めると、隣にいた嵯峨先生も軽く頷いた。
「ええ。授業中もまどろむというよりは、考え込んでいる事の方が多い様に見えますね。天原さん、何か悩み事でもあるんですか?私で良ければいつでも相談に乗りますよ」
「あ、いえ、その……個人的な事なんで、気軽に相談って言うわけにも……っと、すいません、授業中までボーッとしてしまってましたか、俺」
「謝る事は無いですよ。ただ、一人で抱えていると、思考の泥沼に嵌る事も多いですからね。まあ、貴方の場合は良い友人も多い事だし、私が手を貸す必要もないかもしれませんが。でも、解決し切れない時には頼ってください。出来る限りは力になりますからね」
「そうそう。あんまりドツボに嵌らないようにしなくちゃね。とりあえず、せっかくの桜のシーズンなんだから、パーっとみんなで遊ぶなりなんなりして、ストレス発散させちゃいなさい。少しはスッキリするわよ?」
「はい……そう、ですね」
「うん。……あ、では私は用事がありますんで、これで。羽束先生、お先に失礼します」
「あ、はい」
 嵯峨先生は微笑みを浮かべて、その場から立ち去った。その後ろ姿を見送る雅先生に、ふと俺は言った。
「すいません雅先生。せっかく嵯峨先生と楽しそうに話してたのに、邪魔しちゃいましたね」
「え!?」
 驚いた勢いで先生は俺の顔を振り返る。その顔は見事なまでに真っ赤だ。あまりの素直な反応に、俺は思わず笑いがもれる。
「な、何言ってるの!私たち、単に世間話してただけで……!」
「もうバレバレですって。先生、腹芸下手なんだから。別に悪いカップリングとか思ってないですよ?むしろお似合いだなと思ってるくらいで」
「も……もう、翔クンたら。教師をからかうのはやめてちょうだい。私たち、べ、別にそんな関係じゃないし……」
 雅先生はその華やかな外見からか、派手に遊んでいると見られる事が多いのだが、実際はかなりロマンチストでナイーブな一面がある。一つの恋を大切にするタイプらしく、俺の知るところではこの学校に赴任してからずっと嵯峨先生に片想い中、だそうだ。
 今目の前で口篭もっている先生は実に微笑ましくて、教師というより同級生の女子、もしくは妹分を見ている気分である。
「頑張ってくださいね。嵯峨先生フリーだし、真剣だって事アピールすればきっと応えてくれますよ」
「ちょ……っ、翔クン!いい加減にしないと単位あげないわよ!!」
 教師最大の切り札を持ち出して、先生は俺に食ってかかるが、そんな事は絶対しないと解っている俺は、アハハと笑う。
 雅先生はふくれっ面を浮かべて俺を睨んだが、すぐに面持ちを戻し、真剣な顔で言った。
「まったくもう……。翔クン、私の恋愛沙汰には構わなくって結構です。それより本当に心配よ?あなたって、他人の面倒見は良いけど、自分の事となると一人で抱え込む癖があるみたいだから。歩サンも心配してるみたいだし、そこのところ、もう少しオープンになっても罰は当たらないと思うわよ?」
「歩が?」
「ええ。翔クンが悩んでるからって、彼女も悩んじゃってるみたい。表情暗い時があるもの。本人は『翔ちゃんが一人で答え出そうとしてるから、迂闊に踏み込めないけど』って言ってるわ。東クンや朋花サンも、あなたの様子がおかしいの気にかけてるし。大切な友達や妹にそういう心配はさせるもんじゃないわ、違う?」
「そう、でしたか……。あ、心配かけるつもりは、ないんですけど。……ただ、自分でもよく解らない事が続いてて、相談しようにもその内容が全然まとまってないから、余計に心配事を増やしたくないってのが、今のところ正直な気持ちなんです」
「……そういうの、解らなくもないけどね」
 雅先生はハァッと大きく息を吐いて、その見事な黒髪を掻き上げる。
「私にも、そういう経験がないって訳でもないし……。……そういえば、良く解らない事で思い出したわ。翔クン、ちょっと訊いていい?」
「はい?何ですか?」
「ウ〜ン、あなたの悩みに関係するか判らないんだけど。先輩……じゃない、紗楽先生の事なんだけど」
「……紗楽先生?……が、どうかしましたか?」
「どうかしたっていうか……ねぇ、あなた、もしかして紗楽先生の事、苦手?」
「――――え?」
「いえね、何だか翔クン、紗楽先生の前だといつもの調子出てないみたいだし。舞い上がってるってのとは違うから、何でかなーと思っただけなんだけど。その……苦手なタイプ?ひょっとして」
 声を顰める様に訪ねてくる雅先生の目は真剣そのものだ。
 俺としては、何と答えたものか一瞬悩む。苦手……といえば苦手かも知れないが、かといってそれは紗楽先生自身に対する感情ではなく、彼女に相対する事によって生じる、自分の中の訳の解らない感覚に対してだったからだ。
「いえ、そんな事はない……と思うんですけど……」
「けど?」
「……紗楽先生の事は嫌いじゃないです。ただ、俺、何て言うか……先生を前にすると、どこか混乱するみたいで……これも、よく解らない事なんですが……。あ、でも、恋愛感情とかとは違いますから!」
 慌てたように付け足して、俺は雅先生に主張する。実際そういう感情とは違うからだ。少なくとも『俺』自身は。
「そっかァ……。あ、でも嫌いとか、苦手とか、そういう感情ではないのね?」
「ハイ、それは間違いないです」
 すると雅先生は安堵したように笑った。
「なら、良かった。個人的感情だけど、お気に入りの生徒が私の大好きな人物嫌ってたら哀しいなーなんて思っちゃったもんだから。まぁ、人それぞれ人物に対する好き嫌いって違うんだから、気にしても何にもならないんだけどね。ゴメンね、変な事訊いちゃって」
 バツが悪そうな先生の顔を見て、俺もつられて笑む。お気に入りの生徒、と言ってくれたのが嬉しいというのもあった。裏表ない明朗な人物に好かれるというのは、何となく嬉しいものだ。
「いえ、別に気にしませんから」
「ありがと。……でも、話は戻るけど、何か自分で解決出来なかったら、ちゃんと周りの人に相談しなさいね?内容がまとまっていなくても、誰かに話す事でまとまってくる事だってあるじゃない?」
「……はい」
「そうそう。まして、あなたには素晴らしい相談相手がたくさんいるんだし。そういう事ができる相手がいるっていうのは、とても幸せな事なのよ……本当にね」
 
 
 降りしきる直前の桜の梢をくぐりつつ、俺はスケッチブックを持ってブラブラと校舎裏を歩いていた。
 午後の選択芸術の時間。美術を取っている俺は、今日の課題=写生の為に他の生徒と校舎外に出た。といっても、真面目にやる連中は殆どいない。
 美術担当の木嶋教諭は普段から「俺は自分の好きに絵を描いて給料貰う為にこの職に就いたんだ」と豪語しているように、絵師としては尊敬出来ても教師としては難ありな人物。常に生徒に適当に時間を潰させる授業内容を選ぶ(その間自分は自分の作品にかかりっきりである)。そんなだから、担当されている生徒の方も一部を除いてはあまり熱心にはなれず、どちらかと言うと暇つぶしに頭を悩ませるくらいだ。
 俺としては暇があれば考え事に熱中できるというのもあり、この時間は大いに歓迎するところだった。東が書道を選択している以上、俺が本当に一人きりで考えに耽る事が出来るのはこの選択芸術の一時だけと言える。いつもは大体奴や歩達と行動を共にしているからだ。皆を信用していない訳ではないが、こと最近の事については、自分の中で何かしらの糸口を見つけたいという気持ちが強かった。
 地面に落ちた小枝を踏みしだきながら頭上を見れば、緑の萌芽を間近に控えた名も知れぬ樹木の合間に桜の淡色。そして桜を見れば、数日前の出来事が思い出されるのが必然。
 あの俺的に不可解な出来事の後はいたって平穏に過ぎ、内心生徒指導室からお呼びがかかるかもと思っていた俺は拍子抜けした。
 紗楽先生の言は疑うべくもないが、向けられていた視線の主は二つあった。久賀と、もう一つ、誰かの視線。そのどちらかが他の教師に報告しないとも限らない、そう考えたからだが、その心配は杞憂だったようだ。久賀の敵意からすれば、俺の処分は望むところだろうに、紗楽先生が絡んでいた為かこちらも沈黙を守ったままだった。
 あんな事をした後でも、紗楽先生は確かに何も無かったかのように俺に接してくれる。いつも通りに、優しく暖かい微笑みのままだ。それで俺も、かなり気分が楽になってはいるのだが。
 それにしても、あの時の俺の状態を思い出すと、益々もって謎が深まる。
 何故、先生を別の誰かと見間違えたのだろうか。
 何故、彼女を無意識に抱きしめる愚行(としか言い様がない)に及んだのだろうか。
 あの時、『俺』を支配したのは何だったのだろうか。
 まったくもって判らない。
 紗楽先生に対した時に感じる感覚も未だ解けないままで、俺の思考は自分の中で回り続けているだけ。とても東に相談できる段階じゃない。ましてや歩にどう説明したものやら、サッパリ分からん。
 雅先生が言っていたように、歩達に心配をかけるのは本意じゃない。
 でも、このまま訳の判らない状況に甘んじていられるほど、生易しい事が起こっているとも思えなかった。
 何より、皆を、歩を、危険な目に会わせる訳にはいかないから。
 ――不意に、風がざわめいた。
 思考の迷宮を当てどなく彷徨いながら、ふぅ、と深く息を吐いたと同時に、風が踊った。
 ただの風か、そう、思ったが――。
 ――風……じゃ、ない?
 感触は、確かに風。けれど、『何か』が違う。
 俺はその風の吹いてくる方向を見た。……何だ、この風?
 ついさっきまで歩きながら頬に受けていた風は、清涼な軽さを持って吹いていた。
 だが、今の風は違った。何か纏わりつくような、そんな重みを持っている気がした。あくまで勘だが、気になった。
 俺はその原因が何なのかと思い、その風の生まれた方へと足を進めた。差し迫る危険な感覚は受けず、ただ、何かがそこにあって、その存在が風にのってかすかに紛れ込んだ感じがしただけだ。それでも進むにつれ、吹きつける風は重みを増して来る気がした。
 ほんの少し、引きずり込まれるような足取りで、前へと向かう。
 背丈ほどの潅木の枝を押しやった先に見えたのは、例の穴場のような少し開けた場所だった。
 だが、そこはかの場所とは違い、ただ一本の桜の大樹がしっかりと根ざしているだけだった。そしてその桜の周りを、草一本生えていない黒褐色の地肌が取り囲んでいた。まるでその一角だけたった一本の桜の樹に制されてしまったかのように。事実およそ桜の根が張っていると思われる一帯が、地面本来の色を呈していた。
「……これ、か?さっきの感じは……」
 円環の形に緑の色彩から切り抜かれた場所に、ただ一つ生きている桜。その姿は、長い時を経た大樹がそうであるかのように、どこか神さびた印象を受けるが、それ以外に変わった所は見当たらない。
 淡い桜の色は、染井吉野よりはやや薄いくらい。山桜の一種のようだ。七分咲きの花々が風を受けてのっそりと揺れている。
「……単なる気のせい、か……」
 そう一人ごちて、歩を進めようとした時、横合いから声がかかった。
「それ以上進まない方がいいぜ」
 ぶっきらぼうに、しかし注意を換気する真剣さを伴って耳に届いた声は、僅かに聞き覚えの女の声だった。
 声のした方を振り返ってみると、潅木と草の生えているギリギリの辺りに座っている一人の女生徒の姿があった。
「…………志貴?」
 女は志貴朱美だった。煙を漂わせた煙草を右手に持ち、その直下には携帯用灰皿を掲げているその表情には、いつもと同じ気だるげな色。
 ……朝から見ないと思ったら、こんな所でサボって煙草吹かしてたのか?オイ。
 そう思ったものの、先程彼女が言った台詞が気にかかったので、それを訊く事にした。
「どういう意味だ?これ以上行くなって」
「……まんまだろ。行くなって事」
「どうして」
「――――喰われるから」
 …………喰われる?……何にだ?
「アレに」
 疑問符の浮いた俺の表情に答える様に、志貴は右手の煙草で『それ』を指し示した。
 ――そう、黒褐色の円環の中心に据えられた、一本の桜。
 俺は一旦示された桜を見やってから、再び志貴に視線を戻す。
「……意味が解らないんだが。喰われるって、どういう事だよ?桜が人を喰う訳ないだろ。ホラーやファンタジーじゃあるまいし」
 そう言いながら俺はふと、始業式の日の事を思い出した。志貴に初めて会った後、食堂で朋花から聞いた話だ。
 志貴朱美という人物は、幼少の頃から『霊が視える』と言われ、いわば霊感少女としての扱いを受けてきたらしい。最初は珍しがられていたが、他人の考えやひいては死を言い当てたりする事があって、その内人々は不気味がって近寄らなくなった。持ち前の乏しい社交性も手伝って、すっかり個人行動が多くなったという。
「わたし、去年志貴さんと同じクラスだったからそういう話も知ってるんだけどね。あ、でも、悪い人じゃないっぽいよ。転びそうになった時とか、何度か助けてもらったし」
 そう朋花は話していた。あいつは『何もない所で転ぶ』属性があるから、さもありなんと聞いていたが。
 それはさておき、霊感少女云々の噂を思い出したと悟ったのかどうか、志貴は軽くフン、と息を吐いて続けた。
「別にどう思おうと勝手だけどな。言った事、無視しようとそれもアンタの勝手だし。けど、目の前で人間喰われんの見るのは御免なんだよ」
「無視って、そんなつもりじゃないけどさ。ただ、よく解らない事言われても…………!?」
 再度桜を見た、その時。俺はそこにある色彩に言葉を失った。
 ついさっき認識した色は、確かに春に満ちる桜の色。淡い、寧らかな色だ。
 だが、今目の前にある、その色は――――。
「…………花が……赤い……?」
 目の前に移っているのは尋常ではないほどの、赤。
 それも、脈打つ生血のような、どこかどす黒く、時に鮮明な、まざまざしい赤だ。
 あまりにも強い赤の花々に埋もれ、それを身に纏う樹本体もがどこか赤い色彩を押し殺している様に見える。
 一切が赤に支配された生命が、空に向かってその触手を差し伸べているかの様に。
 ……赤染の……血染の桜――――。
「へェ……アンタ、視えんだ」
 どこか感心した様子の志貴の声に、俺はハッとする。
 ハッとしたと同時に、赤く染まった桜は再び人が桜の色と定義している色彩に戻った。
 ――否、戻った様に見えたが、枝が大きく揺れるたびに淡色から朱へと移り変わり、また淡色へと姿を変える。
「……視えるって……何なんだ、これ……!」
 目前で起こっている妙な現象に喘ぐ様に、俺は志貴に問いかけた。
 一方の彼女は、そんな俺の動揺も素知らぬ風に淡々と言葉を紡ぐ。
「さぁな。解るのは、こいつが他者の――言ってみりゃ精気ってのを喰って、こんだけ咲いてるって事だ。周りに草も生えてないのが目に視える証拠だろ。でも、下手すりゃ喰われるけど、綺麗な事には変わらねぇし、観てんのは好きなんだよな、コレ」
「綺麗って……それは、まあ……。って、でも、それにしたって……お前、一体……」
「……他人よりちょっと『目が良い』だけだろ。昔からウチはそういう奴多かったって云うし。……なんか、アンタもそれっぽいけど」
「……俺が……!?俺が、何かしたっていうのか――?」
 心の中にある自らの謎を言い当てられ、一瞬怯んだ俺とは逆に、落ち着き払った志貴はなおも言う。
「知らね。ただ……アンタ、何かそこらの奴とは違う感じがすっから」
 そして、志貴は持っていた煙草を灰皿に押し込め、立ち上がった。
 ……あれ?そういえばこいつ、煙草、手に持ってただけで吸ってない……?
「それじゃ、おれは行く。まだここにいんなら気をつけな。喰われたいなら別だけどな」
 言い捨ててから志貴は校舎の方へと歩み去って行く。
 置き去りにされた俺は、途方に暮れ、志貴を見送った視線をまたも桜に向けた。
 相も変わらず、花びらは桜色と血赤の色を行きつ戻りつして、その印象を矢継ぎ早にすり替える。確かに志貴の言った通り、意識を凝らしていればその様は綺麗だと思った。
 
 ――――古びた大樹には、神が宿ると言う。
 神とは何も、慶事を運んでくれる存在では、ない。
 『気』と呼ばれる『何か』が凝り固まったモノ。
 その『何か』は時として、人を、生きるモノを喰らう。
 喰らい、自らの力にして、また他者に喰われ、円環を成す。それだけの事だ。
 俺だって、『私』とて、またその一部に過ぎない。
 
 ああ、そうだ。それだけの事に、過ぎない。
 ここに立っている桜だって、そういったものの一つなんだろう。
 俺は自分自身にそう言い聞かせて納得する事にした。俺の他にこの現象が見える人間がいるとなれば、少なくとも俺一人だけに作用した幻覚とは言えないだろうから――そう思って。
 見た最初は驚きはしたが、こうやって見つめているとその美しさが『視えて』来る。
 生きる為に、他者の精気を奪う生命。手段はどうあれ、生きようとするその懸命な姿はある種の強さを持って心を惹く。
 赤の色は、生きとし生けるモノが持つ、貪欲なまでの生への執着。醜くもあり、美しくもある、誰もが持っている色だ。
 そして俺の感じる限り、この桜には、その執着の他に見えるものはなかった。纏わりついたと感じた風も、重くはあったがその手の届かぬものにまで影響を及ぼすほどではなく。
 だが――反面、不安が掻き立てられた。
 今は、ただこの場に立っているだけのこの樹が、何かの影響を及ぼす事があったとしたら?
 それが俺、いや、歩達に何かの害悪を及ぼす事があったとしたら?
 その時、今はただ朧気にその姿を見ているだけの俺に、何が出来るんだろうか。
 桜の枝は時折り風に重くなった枝を委ねて、空を掻く。
 その枝を、梢を、幹を凝視めて、俺は見えない予感を胸中に憶えていた。
 この不可思議な現象をあっさり受け入れている自分自身に対する軽い驚きと共に。
 
 
 ――――花が、満ちようとしていた。
 

 
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