−第12話− |
「え、おい、ちょっと!だいじょぶ!?」 倒れかけた杉菜を、男の一人が支えようとする。 「――触るな!!」 しかし、それを許さないかのように葉月の声が飛んだ。持っていたペットボトルを放り投げ、浴衣の裾をからげるように、形振り構わず走り寄り男から奪うようにして杉菜を抱きかかえる。 「東雲!おい、大丈夫か!?」 眠っただけならかまわない。しかし、少し様子が変だった。 「……珪、くん……?」 「東雲!?おまえ、起きて――?」 「……ごめんなさい、私……もたなくて……」 わずかに目を開いて、苦しそうに呟く声。力が入らないのだろう、指を動かす事すら出来ないようだ。 葉月は痛々しい気分になったが、すぐに表情を変える。 とても優しい瞳で、ほんの少し微笑んで。 「……もう、いい。安心して眠ってろ。大丈夫だから――」 そう葉月が囁くと、杉菜はそのままスゥッと眠りに落ちる。顔色もほとんど瞬時に元に戻った。いつも通りの、穏やかで深い寝顔。それを見て、葉月はホッと安堵の息を吐いた。 「……おまえ、葉月珪か?モデルの!?」 杉菜に声をかけていた男達の一人が、葉月の正体に気づいたらしい、驚いたように声を上げた。 「え、マジ!?じゃ、その子、葉月珪の彼女!?」 「うそ、女連れ!?うっわ、それオイシイネタじゃないか!?」 「雑誌社とかに持ってったら売れるかもな〜。今をときめくトップモデルの恋人ってか?」 「いや、地方誌のモデル程度じゃ大したネタにもならんと思うぞ」 何が楽しいのか、男達は口々に言う。 一人にするんじゃなかった。 葉月は内心自分の迂闊さに舌打ちをした。 あまりにも綺麗過ぎる彼女を見ている内に、自分の中に嬉しさ以外の熱が宿って来て、その熱が喉をひどく渇かせた。何かで潤さなくてはとてももたない気がして場を離れたが、彼女も連れていくべきだったと、目の前の男達を見て激しく後悔する。 少なくとも自分がいれば、杉菜にさっきのような苦しそうな表情をさせる事はなかったかも知れないのに。 ――苦しそう? そう思った時には、葉月は男達を睨みつけて訊いていた。 「……おまえら、こいつに何をした?」 「え?――――ッ!?」 視線だけで人をも殺せる、と影で噂される葉月の強い視線を受けて、げらげら笑っていた男達は一気に押し黙った。 「何をしたって訊いてる」 「な、何って……一人でいるから声かけただけだよ」 「彼氏にフラレたんなら、おれたちと遊ぼうって、言っただけだぜ?そしたら、急に具合悪くなったみたいで……」 他の意図は多分にあったにせよ一応本当の事なので、男達は素直に答えた。怯えたように話す口調に偽りは感じられず、葉月は少しだけ視線を弱めた。 「…………よかったな」 「へ?」 「手を出してたら、おまえたち、今無事に立ってられなかっただろうから」 彼女がこんなふうに静かに眠っていなかったら、きっと自分は切れて、男達に殴りかかっていたかも知れない。一見痩躯に見えて実は筋力もあれば腕っぷしも強かったりする葉月なら、2・3人の相手など軽いものだ。いやそれ以前に、脅威の娘ラヴパワーで杉菜の危険を察知した寂尊がマッハ5のスピードで駆けつけて連中をのす方が先かも知れないが。ちなみに現在気温でのマッハ1は約1,255q/hである。 しかしさすがにそんな台詞を聞いて、男達はムッと来たようだ。 「なんだと?大した自信じゃん。モデルだからって、お高くとまってんじゃないっての」 「彼女の前だからってカッコつけてんじゃねぇよ!」 「いや、彼女寝てるだろ」 どうやら最後の発言者はグループ内のツッコミ役のようだが、そんな事はどうでもよろしい。少なくともお祭り騒ぎに同調したテンションが、荒々しい方向に一気に転化されつつあるのは確かである。葉月も普段は言葉のピースが足りないくせに、こういう時は妙にあり余ってくるから困りものだ。周囲の人間もその不穏な空気を察したのか、ザワザワと先程までとは違った声をあげ始めていた。 ――と、その中からやけにお祭りに似合った口調と全く似合わない口調が聞こえてきた。 「なんやケンカかいな?アカンなぁ、こないな楽しい日にケンカするなんてヤボやで」 「ヤボ通り越してアホじゃん。てかすっごい迷惑!」 「などと言いながら何故そのように楽しそうな顔で現場に近寄ろうとするのだ、姫条、藤井」 「そらセンセ、火事とケンカは江戸の華、言いますやろ。見物せな損ですわ。まぁここははばたき市ですけど」 「江戸であろうとはばたき市であろうと火事も喧嘩もあってはならん。見物以前に未然に阻止する方が重要だ」 「とかいってヒムロッチも楽しそーじゃん。やっぱ『無軌道な生徒に秩序と規範を与え……』ってヤツ?」 人波から現れたのは、姫条と藤井、そしてなぜか氷室であった。小柄な分隙間をかいくぐりやすかったのだろう、真っ先に最前列に来た藤井が、その現場の中心にいた人物を認めて思わず声を挙げる。 「え、葉月?…………と、え!?うそ、杉菜、なんで倒れてんのーーーッ!?」 「なんやて!?」 「なんだと!?」 チア部で鍛えられた藤井の大声に、姫条と氷室が即座に反応し、一気に人を押しのけて前に出てくる。 「な、なんで杉菜ちゃんがここにおるんや!?しかも葉月と!来れん言うてたやないか!」 「んなのどーだっていいって!ちょっと杉菜、どうしたのよ!?大丈夫なの!?」 「落ち着け、姫条、藤井!葉月、この状況は一体どうした事だ。いや、それより東雲はどうしたのだ!?」 叫びながらバタバタと駆けて来る3人を、葉月はギロッと睨む。一瞬怯んだ3人が口を閉ざすと、葉月は杉菜に視線を戻した。棘の欠片もない、穏やかな瞳で。 「静かに。……寝てるだけだから」 「「「…………寝てる……?」」」 「そう」 そう言うと、葉月は片腕で杉菜を支えながら、帯に挟んでいた携帯電話を取り出す。番号を登録して通話ボタンを押すと、ほどなく相手に繋がった。 「尽か?俺――そう、葉月。……ああ、もう限界みたいだ。さっきの場所で合流できるか?――ああ、じゃあな」 終話すると再び携帯を帯に差し込んで、杉菜を抱き上げながら立ち上がる。一連の動きは誰一人口を差し込む隙がないほど滑らかだった。 「なぁ、姫条……だよな?」 無視された形の男たちが、姫条の姿を確認して声をかけてきた。 「ん?――なんや、お前らか」 「なに、姫条アンタの知り合い?」 「ん、まあな……って、ひょっとして、おまえら杉菜ちゃんに何かしよったんか!?」 場の雰囲気を読む事にかけては天下一品の鋭さを誇る姫条が状況を理解したらしい、一瞬の内に表情が険しくなった。そのセリフを聞いて藤井も緊張した顔つきになる。 対する男達は慌てたように首を振った。 「な、何もしてないって!マジ!!」 「ホントだって!んな怖い顔すんなってーッ!」 「……少し一人にしてたら、声、かけられたらしい。それから、突然具合悪くなったって」 葉月が静かに言った。何の感情もこもらない淡々とした声。 「ホンマにそれだけか?それ以上のことせぇへんかったやろうな!?」 「し、してないって!!」 「おおお落ち着けよ姫条!」 姫条が男達にと問い詰めるのを見遣って、葉月はつと踵を返した。 「それじゃ……俺、行くから」 「待ちなさい、葉月。眠っている……というのは呼吸その他から判断して間違いはないだろうから、東雲については大丈夫だと私も確信できる。だが、先程までの状況については些か事情を聞きたい。私も同行しよう」 「……俺より、あいつらに事情、聞いた方がいいと思います。それに」 「それに?」 「あいつら……アルコールの匂い、してた」 「何!?」 氷室の眼鏡がキラーン!と光って、速攻で連中に注意が逸れた。そのままの勢いで男達の所へ直進する。他校生だろうが赤の他人だろうが暴走ドライバーだろうが、間違っていると思えば地の果てまでも追跡し注意・説教する事を躊躇わない。それが氷室零一という人物だ。もっとも手段の為に目的を忘れる部分もなきにしもあらずだが。 「うっわ、アイツらかわいそ……」 藤井がしみじみと言う。もっとも自分達にとっては都合がよい。皆で花火見物に来たはいいが、あまりにも食が太い人間が若干名存在していた為にあっという間に食糧不足、買い出し班になった姫条(とちゃっかりくっついて来た藤井)が調子に乗ってビールでも買ってったれ……というところにバッタリ氷室に遭遇してしまい、ついさっきまで長々とお説教を喰らっていたところなのである。が、アルコール摂取を既遂している連中がいるとなれば、未遂の自分達はせいぜい反省文の提出だけで済むだろう。……それもそれで頭が痛いが。 というか、連中に氷室の注意が向いている時点でとっととずらかってしまえば良いのだが、肝心の相方がやはり連中に半端でない気迫でもって、 「ええか、二度とあの子に声かけるようなマネするんやないで!?あの子に怪我の一つでもついてたら、おまえら明日の太陽拝めると思うな!!」 というような脅しをかけているので、藤井としては複雑な心境のまま買物袋を下げて待っているしかなかった。 が、すぐに葉月に向き直った。正確には杉菜に、だが。 「ちょっと葉月。杉菜、本当に大丈夫なんでしょうね?」 「ああ。……少し無理させたみたいだけど、よく寝てる」 「そっか……ならいいけど……」 相槌を打ちながら、藤井はこっそり葉月の顔を見上げた。淡白な声とは裏腹に、今まで見たことのないほどの、優しそうな目。 (……へぇ……葉月でもこんな顔するんだ。ま、杉菜が相手じゃ、仕方ないか。恐るべし、東雲杉菜。……もしかしたらヒムロッチの慌てた顔だって引き出せるかも) 寂尊を知らない藤井はただ素直に感心しほくそ笑んだ。杉菜の寝顔に自分もつい見惚れそうになったが、そのまま去っていこうとした葉月に気づいて、慌てて引き止める。 「あ!ちょっと待って葉月。え〜と……あれ?」 「?」 「あ、あった。コレ!」 ゴソゴソと買物袋から取り出されたのは、一個の小さなりんご飴。 「これ、あげる。杉菜が起きたら渡しなよ」 「……どうして」 「そりゃ、花火大会で浴衣の女の子っていったら、りんご飴は必需品でしょー?てゆーか、諦めてた杉菜の浴衣姿見られたし、なんかそれ、アンタのおかげっぽいから。ま、お礼よお礼」 言って葉月の浴衣の袖に入れる。 「おい……」 「ヘーキヘーキ、ビニールかかってるし。じゃ、あとの事は任せて、行った行った」 ひらひらと手を振って笑う藤井に、葉月はキョトンとしたものの、やがてポツリと 「…………サンキュ」 と言った。そして杉菜を抱きかかえたまま去ってゆく。あまりにドラマティックなビジュアルのせいか、わざわざ周りの人間が道を作ってくれるほどだ。 「……うわ、あの葉月に礼言われちゃったよ……。こりゃ明日は雪でも降るかな?」 わざとらしく空を見上げながら、藤井は一人ごちる。同時に、視界一面に白い光の雨が降った。 「ま、これもこれで雪と言えなくもないか。……さぁって、アタシはアタシであの連中の面倒みてやりましょーかね」 視線を巡らせた先には、怒り心頭の大男二人に哀れなまでに威圧された数人の男が泣きそうな顔で震えていた。 その後、問題なく尽と合流し、電車とタクシーを乗り継いで葉月は東雲家の門前に辿り着いた。尽が鍵を開けて葉月を通す。 「葉月、わるいけど今日は部屋まではこんでくれる?もう動ける時間じゃないからさ、ねえちゃん」 「ああ、かまわない」 杉菜の下駄を脱がせ、ついでに倒れた時に付いた砂を払いながら頼む尽に、葉月は軽く頷いた。両手が塞がっている為自分の下駄は脱ぎ捨てるようにして、家へと上がる。尽が点けた照明を辿るように二階へ上がり、杉菜の部屋のベッドに彼女をそっと下ろす。深い寝息を規則正しく立てているのを確認して、二人は部屋を出た。 「……悪かった、連れ回して」 「いや、言っとかなかったこっちもわるかったし。ねえちゃん、つくづく睡眠に勝てないからな。それに、またそんなになると思わなかったんだ、正直なとこ」 一階に降りて、お茶くらい飲んでけよ、という尽に付き合わされていた葉月が謝ると、尽は溜息混じりに言った。待ち合わせ場所で「具合が悪くなったらしい」という葉月の言葉を聞いてから、初めて吐いた溜息だ。 「数年前、一回キリだからさ。不安だったけど、それよりもねえちゃんに楽しんでほしいってのが強くて。葉月が自分を責めるんなら、オレたちだって同罪」 別れる前にしていた姉弟の内緒話は、この事だった。気分が悪くなってきたらすぐに葉月に言え、一人の時だったらオレに連絡入れろ、そういうことを言った上で、それでも「楽しんできなよ」と言ったのだ。言って、葉月に背負わせた。知っていてなお託したのだ、余計にタチが悪い。 「けど、一人にしたし」 「それはまぁ葉月の落ち度だけど、お手洗いに行きたい、とか言われたらどうしたって一人にすることあるだろ?そんなに暗い顔すんなって。失敗はだれにだってあるんだから。次から気をつけりゃいーんだし」 どっちが年上なのやらと思うが、葉月は神妙に聞いていたし、その態度を見て尽はウンウンと頷いていた。 「ところで葉月、ねえちゃん、楽しそうだった?」 少し話題を変えて尽が訊ねる。 「どうかな……。パッと見、いつも通りだったけど」 「そっかァ……。葉月ならなんとかしてくれるかもって思ったんだけどな」 「……何とかって……」 「うすうす気がつかない?ねえちゃんの、感情面のこと」 葉月は目を見開いて尽を見るが、尽の表情は変わらない。それを見て、葉月は再び表情を落ち着ける。 「……今日、気がついた」 「そっか。オレが覚えてるかぎり、オレ、ねえちゃんの笑った顔って見たことないんだよな。父ちゃんも、母ちゃんもそう言ってた」 手に持ったコップをゆっくり揺らしながら尽が言う。 「そりゃあの体質は困りもんだけど、フォローしてくれる奴がいれば、あの天才的能力だもん、充分カバーできるよ。それよりもおれたちが心配なのはそっち。ねえちゃんから直接言われたことはなくても、こんだけ仲いい家族だもん、分かるよ。父ちゃんたちの教育の賜物で、あくどいことに手を出したりはしないけど、そういう問題じゃないだろ?一度も楽しいとか、面白いとか、そういうの分からないで生きてくのって、なんか、哀しいと思うんだ、オレ」 病気なのかと思って医者にも行った。だが特に異常としては認められなかった。社会生活をする上での一般常識は完全に踏まえていたし、問題行動を起こすような事もない。物事に対する対処法も何ら病的なものではない。 ただ、自分自身の感情を、持ち得ないだけ。 困惑や懊悩とて、感情に結びついてのものとは限らない。数学の公式が出てこずに悩む事に感情の働きは関与するだろうか。CPUが何パターンもの演算をしているようなものだ、感情の入る余地はない。 完璧な形をした、虚ろな姫。 けれど、それでは、哀しい。尽はそう思う。 喜怒哀楽、あらゆる感情に溢れた人間だからこそ、強くそう思ってしまう。 少しでも、楽しいとか、嬉しいとか、そういう事を感じて欲しくて。 「それで……花火大会、行ってもいいかっていわれた時、これはチャンスかもって思ったんだ。ねえちゃん、葉月といると、少し違うような気がするからさ。もしかしたらって思って」 寂尊と似たような事を尽が呟く。 「……悪い、役に立てなくて」 「葉月は悪くないだろ?それに、15年以上ああだったってんなら、一朝一夕で変わるほうがこわいし。……ま、でもさ。弟としては、姉に笑ってもらいたいってのあるし、葉月さえ迷惑じゃないならまた誘ってやってよ、ねえちゃんのこと。少しづつ変わっていくかもしれないしさ。先のことは、だれにもわかんないじゃん?」 「……いいのか?」 「もちろん。だいたい葉月、父ちゃんに気に入られちゃったし。葉月が誘わなくても、父ちゃんがセッティングすることがあるかもよ〜?」 「………………」 それは微妙に困る……ような気がする。葉月は真剣に悩んだ。 「あははは!そんなに悩むなって。父ちゃんもそこまでおせっかいでもないからさ、多分」 多分なのか。 そう思ったが、葉月は何も言わず、お茶を飲み干して東雲家を辞去する事にした。熟睡中の姫君が気にはなったが、小4とはいえこれだけしっかりしている弟騎士がいるなら大丈夫だろう、お茶の礼を言って帰路に着いた。 東雲家から葉月家までは、そんなに遠くはない。葉月のはば学志望動機が「家から近いから」だったのと同様、杉菜も同じ理由ではば学に編入して来た。だから距離的にはさほど差はない。 その道程を歩きながら、葉月はまたも思い返していた。 ――どうやら君は杉菜にとって、少し特別な存在であるようだ。杉菜自身が気づいてるかは判らんが、俺達よりも君の方に、何か通じるものを感じているのかも知れんな。 ――ねえちゃん、葉月といると、少し違うような気がするからさ。もしかしたらって思って。 特別な存在。 確かに自分にとって杉菜は特別な存在だ。幼い子供の頃も、そしておそらく今も。 だが、彼女にとって自分が本当にそうなのか、それは判らない。 自分に益になるから『特別』なのか、それとも理屈じゃなく『特別』なのか。 前者だったとすれば、自分がはたして益になる存在かと考えると何とも理解し難くなる。 けれどもし、後者だったとしたら、それは――――――。 「……だったら……そうだな……」 それは、自分にとって嬉しい事だ。 そう、嬉しい。もし、そうだとしたら。 つまりそれは。 嬉しいと思う事は、つまり。 ――――俺が、あいつを、『特別』だと感じてるんだ―――― 理屈じゃなく。 心で。 翌日定刻通りに目が覚めた杉菜は、机の上に置かれた小瓶に差し立てられた一本のりんご飴に気が付いた。 「尽、これ……」 「あ、それ?きのう葉月が帰りがけに置いてったんだ。つきあわせたおわびとお礼、だってさ。よかったな、ねえちゃん」 眠そうな顔で、それでも笑って答える尽の言葉を聞いて、杉菜は手に持ったりんご飴を見つめた。 ――暖かさが、自分の中からゆったりと立ち昇ってくる。体中が、その温もりで満たされていく。……そんな感じ、かな。 「……それが、『うれしい』――――」 |
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