そうだ、京都行こう。〜京都御所春の一般公開(2002年版)

 去る2002年4月、京都御所春の一般公開に行ってきました。
 日本史古代・平安好きには、欠かせない聖地の一つです(そうか?)。仕事を辞める直前で、有給消化中だったので、丁度良いからと思った訳です。なので、御所拝観と一人旅、という、二大念願を叶えるべく、いそいそと出発したのでありました。

 極力出費を押える為、往路は高速夜行バスを利用。学生時代に、高速夜行の辛さは熟知してましたが、背に腹は変えられない。直前まで、一週間以上風邪と扁桃腺炎と鼻炎に苦しめられ、それ以前にしばらくまともな御飯を食べられない胃腸になっていたという、あんまりな体調だったけど(-_-;)。

 で、最寄の営業所からバスに乗り込んだ訳ですが。 
 ……ちょっと!、バス、寒過ぎだよ!!( ̄△ ̄#)
 北陸方面を経由したせいか、やたらと寒くて、もう、眠るどころではなく。空腹と眠気と寒さと、見事に凍死の三大条件が揃ってしまい、京都に着いた時はマジでホッとしましたよ。
 いえ、京都も寒かったんですけどね、

 という訳で、今回の旅行はそんな過酷なところから始まりました。




《4/12(金)》〜京都編

 さぁ、京都だ!遊ぶぞー!とか意気込んでる場合ではありません。寒い。時間は朝の6時。それにしたって寒いヨ。時間的にお店もやってないので、朝飯にもありつけないし、暖かい場所もない。
 今回は大阪在住の友人と合流して遊ぶ予定だったもんで、待ち合わせまでは駅を離れられない。仕方ないんで、駅構内のお手洗いで身繕いをし、明日の帰りの切符を購入したり、朝御飯を食べて時間を潰しました。
 それにしても、長かった……。

 午前8時半。友と合流。実に2年ぶりの再会です。ノリはかつてのままだが、言葉のイントネーションは関西系になってるし(彼女は同県人)、何より綺麗になっている(後で彼氏持ちであると判明)。綺麗な女の子は大好きなので、内心ラッキーとか思っていたりする私。ちなみに今日はほぼ黒づくめな私。何だかなー。

 まず京都御所に行こうという事で、四条烏丸に荷物を置いてから、御所に向かう。スルッと関西カードを買ったが、実は400円分余る事となる。ちょっと勿体無かったかも。(5月に再度上洛した際に使ったけどね。)

 御所到着。清所門に向かいがてら、建礼門を含む土塀を撮影しようとカメラを取り出す二人。特に私は、学生時代に京都に来た際、カメラを持参しなかった事を激しく後悔していた為、今回は張り切っておりました。

 ところが。カメラの電源が落ちている。出発前に新品の電池に換えてきたのだ、切れる筈がない。しかしとにかく動かない。白砂の上で困る私たち。フィルムが巻かれてないのかと思い、最初の数枚は捨てる覚悟で開けて見ると、フィルムはOK。そして首をひねりながら蓋を閉めると、……ありゃ、動くんですケド。

 何にしろ動いたんで、2枚ほど土塀を撮って、受付に行くことに。写ってるかは不安だけど。このカメラ、この後途中で何度も止まる事になるのですが、それはまた後で。

 受付では、皇宮警察の人?が所持品チェック。危険物持ち込み禁止だし、まあ仕方あるまい、と思ってバッグを見せたが、外から触ってチェックして終わり。ポケットに入っていたカッターは気付かれなかった。カッターは良いのかしら。まあ、物は何でも危険ではあるけども。

 そして御所内に。まずは車寄せや控えの間がありました。微妙に逆光になって、前者は撮れなかった。後者は人形などが置いてあって、何かを再現。お約束でパチリ数枚。友はと見れば、天上や柱の組み方に眼が向いている。流石に考古学をやってた人は視点が違うなぁ。

 次は新車寄せ。人が増えてきて上手く写真が撮れなくなって来ました。タイミングを見計らって撮影。月華門周りの朱塗りの廊下などを撮影し、建礼門方面へ。

 ここから北面すると、丁度承明門を挟んで紫辰殿が見える、絶好のポイントです。その為記念写真を撮る人間が大量続出。人間を徹底排除したい私は大変困る。タイミングが……とかいって時間を浪費。ぶつかってきて謝りもせず目の前に陣取るオバハンあり、何枚も撮りまくる家族連れあり、いきなり一眼レフを我が友に渡して撮らせる奴あり、やれやれですよ。仕方なく、私も妥協せざるを得ず、適当に撮って、その場を退散。

 あ、この辺りでまたもカメラがストップ。あまりに腹が立ったので、叩いてみたら、―――直った。どうやら接触不良のようである。これもやれやれだ。この後撮影の度に叩いてた事は言うまでもない。

 次の場所に行く前に、少し手前の所の販売所を見ようと思い、やや逆行したら、宮内庁の人?に注意されてしまった。物販見るだけです、と言ったら許してくれました。良かった…。そこで御所のパンフをゲット。写真が古いのが残念。

 つらつらと紫辰殿などを見つつ、撮りまくる。紫辰殿内部はかなり暗い。高御座が天皇用と皇后用が置いてありましたが、皇后用のは向かって右側にあるので、何だか配置のバランスが悪い。左右大臣が控えると決まるよなぁ、とか思いつつ清涼殿へ向かう。

 清涼殿は思ったより小ぢんまりしていました。手長足長の障子を撮りたかったけど、ガラスケースに入っていたので断念。室内はやはり暗いです。ここにも人形があったけど、寝殿造は写真撮影に不向き(柱多いの)なので、上手く撮れない。フィルムが終わったので交換し、次へ。

 小御所では着袴の儀の再現。格子戸やらに浮かれまくる女二人。その隣は蹴鞠の庭・御学問所と続く。見事に隣り合わせたその配置に、「勉強にも飽きたしサッカーでもするかのう。」「いっすね!」(©カレカノ)を思い出しほくそえむ二人。蹴鞠の庭をバックに記念撮影をしているお嬢さん達がポ−ズつけてるのを見て、ここにも人形とか蹴鞠が置いてあれば良いのにね、と友と意見が合致しました。実際空間的には狭かったなぁ。最後は御常御殿を見て、参観人休憩所でくつろぐ。お天気も良くなったし、よしよし。

 で、御苑を通って街中に出たんですけど、土塀って、近づき過ぎると警告音鳴るのね。初めて知った。それと白砂。前もあんなに巨大ミミズ多かったっけ……?次々回辺りは仙洞御所も入ってみようっと。
 
控えの間。 御学問所。 紫宸殿西側。
紫宸殿東の渡殿? 右掖門から承明門方向を。 紫宸殿西側廂。


 その後下御霊神社を経由して新京極方面へ。神社はたまたま紙司柿本(とその隣の一保堂茶舗)への通り道なので寄ってみました。誰も居らずなかなか古びてて良かったのだけれど、ここで私ポカをする。参拝時の拍手を一回しか打たなんだ。基本は二拝二拍手一拝。手水の作法は間違えなかったのに……。どっちを間違えるほうが恥ずかしいか、決まってるよね。友にも不審がられてしまった。中途半端に知識があるといけませんね……。

 柿本や鳩居堂をまわり、民族楽器の店を覗く。バウロンがあったんで狂喜して指紋をつけて来たけど(つけるな)、あれって結構でかいのね。直径40〜50cm位で11,000円なり。すっげー欲しい…。流石に諦めたけども……その大きさ故に。鳩居堂のお香コーナーには『遥か』誌における六種の薫物の紹介ページが置いてあって、一人でにやつく。で、やっと昼食。

 三条通のお蕎麦屋さんで蕎麦を食したら、次は風俗博物館へ。友はここを知らなかったらしく、前日電話連絡時に体験コーナーがあるよー、と話した処、非常に興味を覚えた様子。私自身5年前に来た際は体験コーナーがあると知らずに帰ってしまい、後になって哀しい思いをしていたので、今度こそ!という気概でもって赴きました。

 西本願寺の鬼門に位置する、煩悩の具現する場所(笑)に到着。相変わらず注意してないと判らない場所です。井筒屋ビルの5階へ通じるエレベーターに乗り、ドアが開くと、そこは綺羅の空間になっておりました。

 前回(5年前)来た時は、特別展示ではなく、等身大人形が各時代の衣装を着ているという、漫画家山内直実氏による情報そのままのフロアだったのですが、現在は源氏物語・六条院の1/4模型&各帖のシーンの人形による再現を、フロア全部を使って展示していました。どうやら『六条院行幸』『若菜』及び女房達の日常の様子です。(因みに、『行幸』は英語で『Royal Outing』。『夕霧』なんかは『Evenimg Mist』。……日本語ってやっぱり情緒あるなぁ……。)

 とにかく細かいんですよ。人形も調度も、演出も。フロアの壁に弓射の的があって、何だコリャ、と思ったら模型の簀子にいる公達が丁度弓を射ようとしている。と思えば、それを御簾の奥から垣間見している女房発見。その隣では、伏籠に衣が掛けて香を焚き染めており、伏籠の上部が茶色くなっていて芸が細かいなぁ、と思ってたらどうやら本当に香を焚いていた様子。

 廂の女房部屋は各人のスペースはどうやら4畳半以下と推測。プライバシーが確保出来ない、開けっぴろげな空間。隣の局に男が忍んで来ると丸判りだし、物音やらもバッチリ聞こえるぞコリャ、などとちと品の無い事を考えてみたり。更に隣では、明石女御の皇子誕生後のシーン。まさに白一色の空間。加持祈祷する僧侶に混じって依童なんかも居る。これまた細かい。と言うかもう、とにかく綺麗、雅なんである。わたしゃーこの模型全部欲しくなっちゃったよ、もう。

 一通り見て、脇にある体験コーナーに行く。この部屋は寝殿造の一部を実物大で再現してあり、見て触れて写真撮って、尚且つ単衣や表着(?)、狩衣や指貫なんかを試着出来てしまう、この博物館の目玉コーナーなのです。400円の入館料で色々楽しめるお得な博物館。素晴らしいぞ!ってな訳で行ったのですが、先客の女子高生―おそらく修学旅行生―のグループが試着中。大変楽しげ。

 仕方ないので、調度類を先に見る事に。二階厨子や角盥や鏡台の後姿なんぞをカメラに収め、御帳台に入ってみる友。すると、「ここすっごく落ち着く〜!」という感想が。はて、と思って私も入ってみると……うわ、ほんと、すっっごく落ち着くよ、ここ!!大体2畳分の畳の上に大きな掘り炬燵の枠みたいのを置いて、四方に上から布を被せてある感じ。入口は側面の一部で、そこだけ布が上げられている。その隣も開いてたけど、そこには中に几帳が置いてあって、外から見えないようになってました。

 内部はというと、茵が引いてあり、脇には脇息が。結構でかい。檜扇もあったけど、これは糸が切れてて壊れてました(もう直したのかな?)。几帳の反対方向には鏡が二個懸かっていて、正面側に角みたいなのがぶら下がっている。鏡は魔除け、角は犀角で、水気除けの呪いだとか。……水気除け……?

 天蓋付のベッドの畳版とでも言うのでしょうか。幼い頃大きいダンボールに入って遊んだ、あの妙に落ち着く感覚、あれなのです。思わずまどろんでしまいそうになる私達。友が「これ欲しいねえ、造っちゃおーかなぁ。」と発言する。実際欲しい、マジで。

 外では女子高生達が写真撮影に興じていて、こっちは迂闊に身動きも取れません。隙を見て外に出て、等身大人形辺りで遊ぶ。御帳台の手前にあった狛犬みたいな像が、友はかなり気に入った様子。私といえば、女子高生の艶姿?を写真に撮りたい衝動と闘っておりました。狩衣着た子が背が高くて格好良かったんですもの…。

 女子高生が遊び終わったので、私達は早速衣裳で遊ぶ事に。まずは女装。友は萌黄の単衣に薄紅の袿。私は濃桜の単衣に浅葱の袿。(……袿、でいいのかな?怪しい(-_-;)。)結構楽しい。この辺で二人とも、壊れる(笑)。浮かれるのなんの。御帳台に入ってポ−ズつけて写真撮影。何かこう、コスプレイヤーの楽しみっつーのを体感してしまいました。一応、トップバストの位置まで肩部分縫い合わせてあるとか、いざり方はどうとか、資料的な部分も見てたんですが、公達人形とツーショット取ったりしてると説得力もなく、ただのミーハー娘が二匹いるだけ(苦笑)。乙女回路爆走、って感じっスか。

 ひたすら興奮しまくって火照ってきた所で、女装を解いて男装へ。しかして、その前の畳み方で二人共疲れる(^_^;)。そして、狩衣を着ようとしましたが……。二人共、指貫の腰帯が結べない。最近和服好きという友も、流石に袴の着用経験は無く、頭を悩ませる。とりあえず適当に着る事にして、狩衣を纏う。が…これがまた、一人では着るのが難しい。分量が多い上、分かれている部分が多いのです。何処がどうなっているのやら、悪戦苦闘する二人。何とか誤魔化す事にする。この辺で二人共大分ボルテージが下がってました。妥協した所で烏帽子を被り御簾の奥へ…と思ったら、見事、烏帽子が御簾に引っかかってずれる。御簾の高さって案外低いのですよ。160cmの私が、少し頭を低くしないと通れないくらい。烏帽子なんて被ってたらもう大変。案の定通る度にぶつかるったら。何枚か写真を撮って果てる二人。どうやら他の客も待ってるようだし、ここらで遊び終わる事にして、お片付け。時計を見ると、来てから優に2時間近く経っています。そりゃ疲れるって……。

 そして展示室に戻ると、受付の方が呆れた様子で見ていらっしゃいました。ははは、すんまへんなぁ。友が御不浄に行っている間に、私は書籍を物色。『六条院の生活』という、展示模型の以前の再現シーンが収まっている本です。値段も3,450円で手頃なので迷わずゲット。友は絵葉書を数枚購入。長々遊んだ分は本購入で埋め合わせという事で。長々とお世話掛けました、と言ってからビルを出る。ああ、太陽が眩しいぜ。朝の寒さは何処へ行った……。ジリジリ焼ける日差しを浴びつつ、楽しかったねー、と話す。ほんと、楽しかった〜。
 
風俗博物館御帳台脇の狛犬 同御帳台内部 語らう源氏の君と小宮麿(^_^;)。

 時間は4時。そろそろホテルのチェックインの時間。友は諸事情の為、この辺で別れる事に。再会を約束して、友は大阪へ帰り、私はコインロッカーから荷物を引きずりホテルへ向かい、今日の予定は終了。

 さあ、明日は6時起きだ。モーニングコールとアラ−ムをセットして、では、お休みなさい。


(帰り道編につづく)

 
【Report】入口へ    (2)蛇足の帰り道編