《5月18日(土)》
そして、帰るべき場所へ

 コース:京都御所→京都駅→東京駅→郡山駅


 今日の予定は御所参観と帰宅でした。終わり。

 ……というのは冗談で。

 先月の一般公開とは違って、今回の御所は、事前に参観申し込みをして行きました。本当は17日に申し込んだんだけど、12〜17日は葵祭の為に参観出来ないって事だったのでした。なので、本日に繰り越し。一度見てきちゃったんで、あまり新鮮さは無いんだけどさ。時代衣裳着た美麗な公達女房が立ち回ってるならともかく。今何にも置いてないんだもん、人形すらさ。

 ホテルで早目にチェックアウトして、荷物だけフロントで預かってもらってから、御苑まで散策を兼ねて徒歩。朝の御苑も良いもんだねぇ。そして参観人受付の清所門へ。

 さて、この清所門、行ってみれば『通用門』である。下々の者は、他の御門を使う事など許されないのだ。些かやさぐれた気分になる庶民=私。こんな生まれつき選べない事で上だの下だの分けられてもねぇ……。あ、でも一般公開の時は宜秋門から入れます。お公家様が使ってた門ね。因みに、『畏きあたり』も、夫婦一緒でなければ建礼門は使えないんだそうだ。

 さて、しばらく参観人休憩所で待つ事に。物販の所にあった扇子(十二単着た姫君のプリント)が非常に気になったが、集るオバチャマ方の迫力に圧されて撤収。御所に来る人って、オジサマオバサマ系が多い気が。成人以下は監督者付でないとは入れないから、そういう意味では黄色い声が少ないので良いけれど。(でも、娘っ子連れの母親で、娘そっちのけで写真撮って興奮してた人がいた。……神子?)念の為、朝一の9時の回で入ったんだけど、割と人が多かったです。祭の影響と、土曜日のせいかな?

 時間になったんで、ひとかたまりになって参観開始。土曜日につき、宮内庁(お役所)はお休みという事で、ボランティアの爺ちゃんが解説マンになってるとの事。でも参観者グループの最後尾に付いて来る、いかにもお役所人なスーツの男性、宮内庁の腕章してますけど?休日出勤かな?この男性、いわば群れから逸れた羊を戻す、ボーダーコリーのような存在である。にしても、頼むからそんな威圧感振りまくなよ。ったくこれだからお役所系は……。

 という訳で、車寄・大夫の間・新車寄・建礼門・承明門……と、説明されながら進んでいくが、私は基本的に撮影に励む。解説聞くか撮影か、どちらかに絞った方がいい、というレポを前もって読んでいたからである。でもあれなのね、申し込み参観の時って、紫宸殿の表側には近づけないんだねぇ。裏側は、清涼殿側から見られたけど。この辺が、一般公開時のお得な所なのかも……自分のペースで進めるし。ま、どちらにしても、承明門から紫宸殿を望む図、の撮影は人が入っちゃって駄目駄目って事ね……。それこそ一般公開時に朝一にダッシュで行くしか。哀しいので、今回は蹴鞠の庭から見る御学問所、を撮ってきました。あと、破風。なんか好きなんだ、これ。

 こんな感じでパーっと見て、参観終わり。その後かつての九条殿庭園の一部だという拾翠亭で(ここもお勧め。庭園、良いですよ。池の中の島にあるのは厳島神社ですって)、気分をまったりさせてから、ホテルに戻って荷物を持って京都駅に向かいました。さらば我が宿、多分もう来ないだろう。


「サービスとかが悪かったとでも?」
「激昂するほどのは、無かったんだけどね。従業員が若かったってのは言ったよね。そのせいか、サービスの端々に、至らない所が見えたのは事実。こういうチェックは細かいのだ。値段的に言えば、マシなのか、とも思うんだけど、奈良の感じが良かっただけにね」
「例を一つ。最終日の朝食の前、チェックアウト後に荷物を預かっていて貰えるかをフロントに尋ねようとしたんだ。すると、時間的に忙しかったのか、フロントのカウンターに誰もいない。声をかけたら奥から男性一人が出てきたんだけど、制服のジャケットを着ていなくてね。話を聞く際も、片腕をカウンターについて、もう片腕は腰に当てて、というポーズ。客に応対する姿勢としてはかなりの減点物だったな」
「うーん。それはホテル商売ではまずいわね。値段に関わり無く、その辺が疎かなのはホテルとして問題ありだわ」
「そういえば、朝食の時も一騒動あったね。3日目くらいかな、レストランの開店と同時に入った客が、バイキングだと知らないでそのまま席でしばらく待ってて、何でオーダー取りに来ないのか、と従業員に詰め寄って文句を言っていた。バイキングだと知っても、逆ギレして、ずっと待ってたのに、としばらく怒っていたな」
「……何よ、その客」
「一応入口に『朝食はバイキング』のプレートは懸かっていたんだけどね」
「でも、これホテル側にも問題あり。そんなプレート、見逃す客だって多いしさ。奈良の方はね、従業員が客席を指定して案内してくれたんだけど、ちゃんとその際『バイキング形式になっておりますので』って一言を付け加えていたんだよね。食べ物も、すぐに判る様にフロアの真ん中においてあったしさ。でも京都の方は、カウンターのお姉ちゃんがチケット回収したりしてるだけ。料理は衝立の奥にあったし、色々判りにくかった。勿論面積とかの問題はあるけど、この辺がサービスの差、というものなのかな、と思いました。尤も件のゴネた客は、ありゃ馬鹿か、と思ったけどね」
「頭が痛いのは、そこまで差がありながら、奈良の方が室料が安かった事だね」
「それはもはや救いようがないわねぇ」


 京都駅の荷物預かり所にトランクを預け、切符&八ツ橋購入と昼食摂取の為に駅ビル・ポルタをうろつく。おやつと飲み物も買い込んで、新幹線ホームへ向かう。……最後の最後まで、小中学の旅行生に道を遮られる羽目に。こんな集団、よくまぁ教師たちは連れ歩けるものだわ……。まあ、こっちはこっちで無事座席をゲット(禁煙自由席)、後はゆったり行きましょかね。(移動の際、トランクが非常に邪魔だったけど。)
 という訳で、途中なんら大過なく東京駅を中継して、駅に迎えに来ていた父の車に乗り込み、10日ぶりの我が家へと辿り着いたのであった。やれやれでした。

 この旅で回った神社は11、仏閣は30、古墳は2。これで何も憑いてなかったとしたら、私は相当霊的防御力が強いな、わはは。


「何はともあれ、お疲れ様ね」
「ちょっと待った。も一つ、余談があるんだよ〜」
「何よ?話題は大体出尽くしたでしょう?」
「確かに、旅行とは直接関係は無いんだけどね。帰宅した後、母御が出発前に蒔いていた植物の様子を見ようと、庭の奥の方へ行ったんだ。すると……」
「物置からね、鳴き声が聞こえてきたの。中に入ってみたら、上の方のダンボールの中から声と、軽い足音が聞こえてくるの。案の定、ダンボールを下ろして空けてみたら、一匹の可愛らしい子猫ちゃんが〜(^。^)」
「……子猫」
「目は開いてるかな?って位なんだけど、フワフワの淡〜い亜麻色の毛で、可愛かったの〜♪どうやらノラが産んだ子みたい。物置前にまた置きなおしたら、翌日には居なくなってた。多分親が連れて行ったんじゃないかな。でも、ウチに犬さえ居なければ飼いたかったわ……」
「……確かに。子猫、良いわよぇ…。私は犬でも良いけど。京は猫好きだもんねぇ」
「うん〜♪こんな神仏参りの旅の後じゃない、これはまさか運命!?とか思っちゃったりして。猫〜♪」
「よほど可愛かったのね……この異常な壊れ具合を見ると」
「とか言って、まだ猫を飼った事は無いのよね、私。犬ばっか。いや、先代の犬は超お気に入りなんだけど」
「そちらは知らないな。小宮がそう言う位だから、よほど良い犬だったんだね」
「そうね、おっとりした温和なお姉さんって感じだったわね。抱くと日向の匂いがして、気持ち良かったなぁ。……って、これ旅行記でしょ、話ずれてる」
「……はっ、いけないいけない」

「今回の旅行は、まさに『旅』だったね。自分の足でひたすら歩く。歩くからこそ、自分の視点で見られるものも多かったって事で」
「その割にあまり役に立たない事を書き連ねている気もするけど」
「あうっ。いいでしょ別に。自己の感想と覚書、そのつもりで書いたんだから。詳しい由来とかが知りたければ調べりゃいいのよ。ここはそういう受け売りを書くところじゃないもん」
「確かに、ただの感想文だけど、良いんじゃないかい?誰かの参考の為に書いた訳じゃなし」
「それもそうか」
「次回の京都行きは未定だけど、次は仙洞御所や桂離宮を参観したいなぁ。西芳寺はもう一度行きたいけど、天気によって美しさが違うから、申し込みのタイミングを間違えると、またカサカサの苔見る羽目になっちゃう。あと、三尾!次こそはかわらけ投げてやる!!ついでに言うと、願わくば、趣味の合う人と行きたいものね」
「神子様とか?」
「まぁ、それも込みで」
「次を楽しみにするのもいいけど。でも、今やるべき事をやっていかないとね。それはそうと、どうするんだい、オリジナルの続き」
「…………はい、これから考えますぅ……」
「厄介事が増えちゃった旅、ってか」


(おわり)


 
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