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尻尾の話

先日TVの金曜ロードショーで、今更ですが、平成ぽんぽこ…

…あれって何てタイトルでしたっけ。
スタジオジブリのアニメで狸ばっかり出てくるヤツ。
宮崎アニメじゃなくて高畑アニメですよ。

そういや世間では、ジブリ作はなんでもかんでも宮崎アニメと称してるようですが、
アニメオタクの私としては、それは間違っている!と声を大にして…

…まあいいや。
とにかくそれを見たんですよ。

最初から終りまで通して見たのは初めてなんです。
なるほど。ああいう話だったんですか。
面白い上に、色々考えさせられるアニメですね。

え?
今頃見てるなんて、アニメオタク失格?
痛いところを突かれました。
まあ、歳を取るとあまりアニメを見なくなるものでして…
それに最近はちょっと事情もあって…

それはさておき。

あんなアニメが、既に世間に流れていて、それなりに皆さんが楽しんでいるなら…
私自身の少々奇異な体質について語っても、
それなりに皆様に受け止めてもらえそうな気がしたのです。

そんなわけで、恥ずかしながら告白させてください。



実は私、尻尾が見えるんです。

「尻尾なんて誰にでも見えるじゃないか。
 猫にだって犬にだって尻尾はついてる」

そう言われそうですね。
でも、私の言ってる尻尾はちょっと違うんです。

平成ぽんぽこの話、あれ、前フリです。
私が見えてる尻尾は、人間に化けた狸や狐よろしく、
人間のお尻についてる尻尾なんです。

「人間に尻尾なんてあるわけない。
 頭おかしいんじゃないか?」

はい。そのとおりです。
私の頭がおかしいのだと思います。

しかし、実際に見えてるんだから仕方ない。
まあ、話を聞いてくれませんか…



昔から見えていたわけではありません。
子供の頃から学生時代まで、そんなものが見えた経験はありませんでした。

東北の片田舎で、田んぼに囲まれて育った私ですが、
いくら田舎に住んでたからと言って、
狸や狐に化かされた経験もありませんのであしからず。

…狸と言えば、大学時代のサークル棟で見たのが一度きりですね。
田舎出身の私にとっては、大学のあった仙台は『都会』ですが、
その都会で、よもや狸を見るなどとは夢にも思いませんでした。

大学は山の上にあったのですが、
自然が多少残っていたから、まだ生息していたのかもしれませんね。
それとも、近所の動物園から脱走した狸だったのだろうか…

閑話休題。
まあそんな感じで、
その手のモノにやたらと近い環境に居た、というわけではないのです。



見え始めるようになったのは、
就職して東京に住むようになり、数年経ってからのことです。

それなりの年数、連続して業務に従事していた私は、根拠無く自分の能力を過信していました。
その事が、職場に大変な被害を与える事態を呼び込んでしまったのです。
そしてそれをキッカケに私は心の病になり…
薬物を服用して自殺未遂を図ったのでした。

しかし、周囲の方々の様々な暖かい御助力、御協力により、
幸いにして一命を失わずに済み、
こうして今でも呑気に日々を暮しているわけですが…

どうやらその際、頭のどこかが壊れてしまったようなのです。

その頃から、私には件のモノ…
あるはずのない人間の尻尾が見えるようになってしまいました。



当然ながら、最初は大変驚きました。
私は、霊魂とかUFOとか、その手の話は一切信じないタイプのガチガチ人間ですから、
ショックもとにかく大きかったのです。

『療養』という名の『監視』の為に入院していた頃は、
一日中ベットの上で、頭からシーツを被って過ごしていました。
何せ他者の姿を見るのが気味悪くて仕方ないのです。
自分はとうとう狂ってしまったのかと随分悩みました。
いや、その場所に居るそのこと自体が、既に狂った証かもしれませんが。
とにかく悩み、泣きました。

担当の医者に相談したこともありますが、
告白した時の医者の顔…その後に投与された薬の効果、量…
他者に相談しても解決に繋がるどころか、
自分の置かれている状況をますます悪化させる事を知っただけでした。



当初はそんな状況でしたが、慣れとは恐ろしいものです。
時間が経つにつれ、それらが見えることの気味悪さも次第に無くなっていきました。

考えてみれば…
今まで見えていたモノが見えなくなったなら大変困るでしょうけど、
今まで見えなかったモノが見えるようになったのですから、
ある意味では得をした、と言えるのかもしれません。

退院してしばらく経った頃、
それらを目にする事がなんだか楽しみになっている自分に気づいた時は…
とても嬉しかった事を覚えています。



さて、その尻尾ですが。
全ての人に尻尾がついてるわけではありません。
むしろ、ついているのは少数派のように見受けられます。

その形も様々。
人間は猿から進化したのだから、
さては猿の尻尾ばかりと思うかもしれませんが、さにあらず。

犬猫はもとより、馬やら、兎やら、ライオンやら…
とにかく色んな種類が見えるのです。

と言っても、私自身はあまり動物には詳しくないので、
時々、こりゃなんだ?と不思議に思う形状に遭遇することも多いのですが。
たぶんムツゴロウさんあたりなら、全部当ててしまうのでしょうね。


尻尾が見える事で、得することが多いことにも気付きました。

よく、犬が飼い主に尻尾を振ったり、猫が威嚇で尻尾をピンと立てたりしますが。
人間も同じでした。
尻尾には、その人の感情が表れるのですね。
パタパタ振ったり、ピンと立ったり…尻尾は正直です。
言葉とは裏腹な相手の気持ちが手に取るようにわかる。

そういったところを見てる間に、
尻尾のある人には、共通点があることに気付きました。

皆さん、いい人なんです。
態度が偉そうだったり、乱暴な言葉を吐いたり、表面的には悪く見えても、
けして心根の悪い人、優しくない人は居ないんですね。

尻尾が無い人は逆ですね。
表面的には良さそうに見えても、後でヒドイ目に合わされたりする。
油断できません。

「尻尾を掴む」なんて言葉がありますが…
もしかしてその言葉を作ったのは、
私と同じように尻尾が見える人だったんじゃないでしょうか。
…なんだか自分、バカな事言ってますね。

そういえば…
久しぶりに友人達、元の職場の人達に会った時は、
彼らに尻尾がついてて、なんだか嬉しかったです。
自分はとても恵まれていたのだなと気付かされました。



ところで。

私、実は半年ほど前に結婚してるんですが。
奥さんにも、尻尾があるんです。
彼女の尻尾は犬ですね。
ふさふさしていてなんだか暖かそうなんですよ。

つき合ってる頃、待ち合わせなんかで私の姿を目にすると、
彼女の尻尾は、これ以上ないくらいにパタパタと左右に動くんです。
アレを見たときは何とも言えない気持ちになりました。

ですが最近、なんだか彼女の尻尾の様子が…
犬が萎縮してる時って、後ろ足の間に尻尾を丸めて挟み込んだりしますよね。
あの状態をチラホラ見かける事が多くて、それがちょっと心配だったりするのです。
最近忙しくて、少しカリカリしてるからだろうなぁ…
たまには仕事の手を休めて、もっとサービスしてやらないと…

できれば、二人がお爺さんお婆さんになっても、
相変らず彼女がパタパタと尻尾を振ってくれるような…
そんな人生を送れれば最高ですね。



…え?
私自身に尻尾は無いのかって?

あります。あるんです。
幸い、私にもあるんですが…

実は何の尻尾かよくわからないんです。
先のほうが、なんだかフォークみたいな形をしてるんですが…
これ、一体何の尻尾なんでしょう?

まさか…ね。

















これも夢で見た話です。
尻尾云々は、たぶんそのまま「平成ぽんぽこ」からだろうなぁ。
(ちなみに、マジにタイトル覚えてないんです)
感情云々は、たしか花とゆめの新人さんの漫画にそういう感じのが…
あちらのほうがもっとファンタジーでしたけど。
とりあえず、その2つがミックスされて夢で見たのかなと思うんですが、
なんだかもっと直接的に、そのものズバリをどこかで見てた可能性も高いです。
ていうか一番最後のオチはこれ絶対元ネタあるだろ>俺
でも思い出せない…
もしも「元ネタこれじゃない?」ってのがあったら情報よろしくであります。
(2002/10/20)

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